プロローグ:こむぎちゃん、保証が使えない悲劇
朝の事務所。こむぎちゃんが憤慨していた。
5年保証って書いてあったのに!
でもメーカーが倒産したら、保証書があっても意味がないんや
これが"家"やったらどうなる?
新築の家に欠陥があったのに、建てた会社が倒産。
修理もしてもらえん、お金も返ってこん。
何千万もする買い物がパーになるんやで
最悪ですね…
今日はその話やで
そのとき、事務所のドアが開いた。
住宅瑕疵担保履行法について教えてください!
南向壱星がノートを抱えて入ってきた。
先輩から言われたんか?
うちの会社が新築マンション20戸の売主になる案件が進んでいて、先輩に『住宅瑕疵担保履行法について調べておけ』と言われました
少し遅れて、もう1人が事務所に入ってきた。
南向くん、よろしく
敷地倫太郎が穏やかに挨拶した。壱星が少し緊張した面持ちで頭を下げた。
よろしくお願いします
こむぎちゃんが無邪気に喜んだ。
今日はにぎやかですね!
こむぎちゃんが壱星にお茶を、敷地にコーヒーを出した。壱星がちらっと敷地のコーヒーカップに目をやったが、何も言わなかった。
登記田が切り出した。
宅建業法もいよいよ大詰めや
相談① 住宅瑕疵担保履行法とは?|品確法の10年責任を「お金で担保する」法律
品確法いう法律で、新築住宅の売主は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、引渡しから10年間の瑕疵担保責任を負うことになっとる
この10年は特約で短縮できないんでしたよね?
ただし問題がある。
業者が10年の間に倒産したらどうなる?
壱星が考え込んだ。
買主は泣き寝入りですか?
業者に資力確保措置を義務づけて、万が一倒産しても買主が確実に保護されるようにした法律やな
敷地が質問した。
中古は?
中古住宅は対象外や。
ちなみに"新築住宅"の定義は、建設工事完了から1年以内で、まだ人が住んでいないもの。
完成して1年超えたら新築やなくなるで
8種制限と同じ構図やな。
売主=業者、買主=非業者
売主として引き渡す場合だけや
該当する例:宅建業者Aが自ら売主として、一般消費者Bに新築マンションを引き渡す → 資力確保措置が必要
該当しない例:宅建業者Aが媒介として、一般消費者Bの新築住宅購入に関与 → 資力確保措置は不要
相談② 資力確保措置の2つの方法|保証金の供託と保険への加入
方法①:保証金の供託(住宅販売瑕疵担保保証金の供託)
供託額は基準日前10年間に引き渡した新築住宅の合計戸数に応じて決まる
たとえば1戸なら2,000万円、10戸なら3,800万円いうように、戸数が増えるほど金額も増える。
20戸やともっと増えるな。
まとまった金額を供託所に預けておくいうことや
敷地が反応した。
だからもう1つの方法がある
方法②:保険への加入(住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結)
こっちのほうが実務では多い
登記田が保険のポイントを整理した。
保険のルール:
- 保険期間は10年以上
- 保険金は2,000万円以上
- 保険契約は新築住宅の引渡し前に締結しなければならない
- 業者が倒産した場合、買主は保険法人に直接請求できる
それは買主にとってすごく安心ですね
保証金の供託だけやと、供託金を取り戻す手続きが面倒やけど、保険なら直接請求できる
保険に加入した住宅は、供託の戸数から除外できる。
たとえば20戸のうち15戸を保険でカバーしたら、供託は残り5戸分でええいうことやな
こむぎちゃんが言った。
全戸を保険でカバーすれば供託は不要になる。
ただし保険料はかかるから、タダやないで
該当する例:新築20戸のうち15戸を保険でカバーし、残り5戸分の保証金を供託 → 適法(併用可能)
該当しない例:保証金の供託も保険への加入もせずに新築住宅を引き渡す → 資力確保措置義務違反
相談③ 届出と買主への情報提供|基準日は年1回・届出は3週間以内
資力確保状況の届出:
【改正ポイント①】 従来は基準日が年2回(3月31日と9月30日)だったが、改正により年1回(3月31日のみ)に変更
【改正ポイント②】 従来は基準日時点で供託が完了している必要があったが、改正により基準日から3週間を経過する日までの間に供託すればよいことになった
壱星の質問に、登記田が厳しい表情で答えた。
壱星が青ざめた。
それって営業停止に近いじゃないですか
これは絶対に忘れてはいけない
3月31日の基準日と、3週間以内の届出。
カレンダーに書いておくレベルの話やで
買主への情報提供:
買主への情報提供も義務づけられとる。
供託の場合と保険の場合で内容が違う
供託の場合:
- 売買契約を締結するまでに、供託所の所在地等について、書面を交付して説明
- 【改正ポイント③】 買主の承諾を得れば、電磁的方法でも提供可能に
保険の場合:
- 保険に加入したときは、買主に対して保険証券またはこれに代わるべき書面を交付
- 電磁的方法も可能
重要事項説明と同じタイミングですか
「契約を締結するまでに」やから、重説と一緒に説明するケースが多いな。
ただし、重要事項説明書とは別の書面や。
混同しないようにな
該当する例:保証金を供託した宅建業者が、売買契約前に供託所の所在地等を記載した書面を買主に交付して説明 → 適法
該当しない例:保証金を供託した宅建業者が、買主に何の説明もせずに売買契約を締結 → 情報提供義務違反
エピローグ:宅建業法、大詰めへ
壱星がノートを閉じて、深く息をついた。
うちの会社の新築マンションも、保険か供託で対応しないといけないですね。
先輩に報告します
敷地も頷いた。
届出のルールも、忘れないように管理します
登記田が二人を見て言った。
宅建業法もいよいよ大詰めやな
宅建業者や宅建士がルールを破ったらどうなるか。
いわば宅建業法の"最後の砦"やな。ルールを全部覚えた上で、"破ったらどうなるか"を押さえたら、宅建業法は本当に完結や
次回もぜひ参加させてください
壱星と敷地が同時に立ち上がり、帰り支度を始めた。
おいしかったです
敷地が穏やかに微笑んだ。
壱星が少し張り合うように声を大きくした。
また一緒に来てくださいね!
こむぎちゃんが満面の笑みで両方に手を振った。壱星と敷地がそれぞれ複雑な表情を浮かべながら事務所を出て行った。
登記田がコーヒーカップを片づけながら、小さくため息をついた。
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「住宅瑕疵担保履行法は中古住宅にも適用される」 → 新築住宅のみが対象。中古住宅は対象外。「新築住宅」=建設工事完了から1年以内で、まだ人が住んでいないもの。
ひっかけ②「宅建業者が媒介として関与した場合も資力確保措置が必要」 → 自ら売主として引き渡す場合のみ必要。媒介・代理で関与するだけでは不要。
ひっかけ③「保険契約は新築住宅の引渡し後に締結すればよい」 → 保険契約は引渡し前に締結しなければならない。
ひっかけ④「資力確保状況の届出の基準日は年2回(3月31日と9月30日)」 → 改正により年1回(毎年3月31日のみ)に変更された。
ひっかけ⑤「届出をしない場合、直ちに免許が取り消される」 → 免許取消ではない。基準日の翌日から50日を経過した日以降、新たな売買契約を締結できなくなる。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが拳を握った。
今日の教訓は――
会社が倒産しても保険があれば大丈夫!
だから私も友達の空気清浄機に保険をかけてあげます!
メーカーが倒産したんですよ…?
今回のまとめ
【住宅瑕疵担保履行法とは】
- 品確法による新築住宅の10年間の瑕疵担保責任を、お金の裏付けで確実に履行させる法律
- 対象は新築住宅のみ(完成から1年以内・未入居)
- 宅建業者が自ら売主、買主が非業者の場合に適用(媒介・代理は対象外)
【資力確保措置の方法】
| 保証金の供託 | 保険への加入 | |
|---|---|---|
| 方法 | 最寄りの供託所に供託 | 保険法人と保険契約 |
| 金額 | 戸数に応じて算定 | 保険金2,000万円以上 |
| 期間 | — | 保険期間10年以上 |
| 契約時期 | — | 引渡し前に締結 |
| 倒産時 | 供託金から還付 | 買主が保険法人に直接請求 |
| 併用 | 保険加入の住宅は供託の戸数から除外可 |
【資力確保状況の届出】
- 基準日:毎年3月31日(改正で年1回に変更)
- 届出期限:基準日から3週間以内
- 届出先:免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)
- 届出なし → 基準日の翌日から50日経過後、新規の売買契約が締結できなくなる
- 供託のタイミング:基準日から3週間以内でOK(改正で猶予が設けられた)
【買主への情報提供】
- 供託の場合:契約前に供託所の所在地等を書面で説明(電磁的方法も可能)
- 保険の場合:保険証券を交付(電磁的方法も可能)