プロローグ
夕方近くの事務所。こむぎちゃんが、ぐったりとした顔で帰ってきた。
わたし、町内会の班長さん、引き継いだんですけど。
めちゃくちゃ大変でした。
なんでまた。
「悪いけど、こむぎちゃん、班長やってくれない?」って頼まれて、軽い気持ちで「いいですよー」って受けたんです。
引き受けてあげたんやな。
わたし、てっきり「これから先のことだけやればいい」と思ってたのに。
引き継いだとたん、前の班長さんが「来月までにやります」って約束してた仕事まで、ぜーんぶわたしに回ってきて。
役だけやのうて、前の人の約束ごとまでくっついてきたわけか。
夏祭りの出店の手配とか、回覧板の作り直しとか。
前の班長さんがやるはずだったことが、引き継いだわたしのところに、どっさり。
「わたし、まだ何も始めてないのに……」って感じです。
前の人が背負うとった荷物も、いっしょについてくることがある。
引き継ぐなら引き継ぐで、前の約束ごとがどれだけ残ってるか、確認してから受けるべきでした。
そのとき、事務所のドアが控えめにノックされた。入ってきたのは南向壱星さん。こむぎちゃんの顔を見るなり、肩の力がふっと抜けたように表情がやわらいだ。
お忙しいところすみません。 今日も、お客さんの件で知恵をお借りしたくて。
ちょうど今、わたしが町内会の班長を引き継いで、前の人の約束ごとまで背負わされた話をしてたんです。
……それ、今日の相談と、ちょっと似てるかもしれません。
壱星はメモ帳を開くと、少し前のめりになって切り出した。
今日の事件:平成21年 問6
ところが、もとの持ち主の借金が残っていて。
「このままだと、ぼくの建物が競売にかけられてしまうんでしょうか」と、不安がっていて。
民法第379条は、「抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。
- 抵当不動産の第三取得者は、当該抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることができる。
- 抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に民法第383条所定の書面を送付すれば足り、その送付書面につき事前に裁判所の許可を受ける必要はない。
- 抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求にかかる民法第383条所定の書面の送付を受けた抵当権者が、同書面の送付を受けた後2か月以内に、承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知すれば、同請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。
売主の躯田さん……あ、いえ、買主が躯田さんで、売主は別の方なんですが。
ともかく躯田さんが、抵当権つきの建物を買って「第三取得者」になったと。
ひとつ、そもそも抵当権つきの建物を買ったぼくは、どうやって抵当権を消せるのか。
ふたつ、もし競売の差押えが始まってしまったら、もう手遅れなのか。
みっつ、抵当権を消す手続には、裁判所の許可みたいな面倒な手間が要るのか。
よっつ、抵当権者が「いやだ、承諾しない」と言ってきたら、それで終わりなのか。
前の人の約束ごとが、引き継いだ人にくっついてくる、って。
それ、さっきのわたしの班長の話と、まるっきり同じじゃないですか?
「引き継いだ側がどう扱われるか」ってところ、つながってません?
構造はまさにそれや。
「借金のついた物を買うた人を、どう救うか」——これが今日の中心や。
この人を救う方法が、民法には2つ用意されとる。
ひとつが「代価弁済」、もうひとつが「抵当権消滅請求」や。
躯田さんの心配を軸に、順に解きほぐしていこか。
推理①:そもそも「第三取得者」とは何か──なぜ保護が必要なのか
抵当権は、売られても消えない
これ、何やと思う?
抵当権のついた不動産を誰かに売っても、抵当権は消えへん。
建物にくっついたまま、新しい持ち主のところまで追いかけていく。
これが追及効や。
売主が代金を受け取って出ていっても、抵当権はその建物に残ったままや。
だから躯田さんは「抵当権つきの建物」を手に入れたことになる。
借金を払うのは売主、なのに家を失うのは買主
躯田さんは、ただ建物を買っただけで。
借金を背負うとるのは売主(債務者)や。
ところが、その売主が借金を返さへんかったら、抵当権が実行されて、競売にかけられるのは躯田さんの建物や。
これでは、おちおち抵当権つきの不動産なんか買えへんやろ。
そこで民法は、第三取得者を救う手立てを2つ用意したんや。
約束したのは前の班長さんなのに、こなすのは引き継いだわたし。
構造はそっくりやな。
で、救う方法が「代価弁済」と「抵当権消滅請求」。
この2つ、似とるようで、主導権を握る人がまるで違う。
そこが今日のいちばんの勘どころや。
該当する例: 躯田さんが抵当権つきの建物を買って所有者になった → 追及効により抵当権は建物に残り、躯田さんは「第三取得者」として保護制度を使える立場になる
該当しない例: 抵当権つきの建物を借りているだけの賃借人 → 所有権を取得していないので「第三取得者」ではなく、代価弁済・抵当権消滅請求の主体にはならない
推理②:抵当権者が主導する「代価弁済」──民法378条
抵当権者が「代金、こっちに払うて」と請求する
これは民法378条に定めがある。
民法378条(代価弁済) 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
言い出しっぺは、抵当権者のほうなんや。
抵当権者が、第三取得者である躯田さんに対して「建物の代金、こっちに払うてくれへんか」と請求する。
躯田さんがそれに応じて代金を抵当権者に払うと、抵当権が消える。
これが代価弁済や。
売主に払うはずだった代金を、抵当権者に振り向ける
躯田さんが建物を2,000万円で買うたとする。
本来なら、この2,000万円は売主に払う。
すると、たとえ借金が2,500万円残っとっても、抵当権は消える。
躯田さんは、きれいな建物を手に入れられるわけや。
でも、それだと抵当権者は損をしませんか。
500万円足りないのに。
せやから、これは「抵当権者が請求してきたとき」だけの話なんや。
抵当権者が「この代金で手を打つわ」と納得したから請求しとるわけでな。
主導権が抵当権者にある、という意味がここにある。
躯田さんの側から「代価弁済させてくれ」と強制はできひん。
該当する例: 抵当権者が躯田さんに「建物の代価2,000万円を払ってくれ」と請求し、躯田さんが応じて支払う → 抵当権は躯田さんのために消滅する(378条)
該当しない例: 躯田さんのほうから「代価弁済をさせてほしい」と抵当権者に強制する → できない。代価弁済はあくまで抵当権者の請求が起点
推理③:第三取得者が主導する「抵当権消滅請求」──民法379条・383条〜386条
今度は買主が「これで消してくれ」と切り出す
さっきの代価弁済とは、主導権が逆になる。
民法379条(抵当権消滅請求) 抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
躯田さんが抵当権者に対して「この金額で抵当権を消してくれ」と請求する。
代価弁済が抵当権者から、抵当権消滅請求は第三取得者から。
ここがきれいに裏返しになっとる。
手続の流れ──書面を送り、2か月待つ
順を追って見ていこか。
躯田さんが、登記をしている各債権者に対して、383条で決められた書面を送る。
「この建物、これだけの金額で評価したから、これで抵当権を消してくれ」という申し出や。
民法383条(抵当権消滅請求の手続) 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、(中略)次に掲げる書面を送付しなければならない。
書面を受け取った抵当権者には、2か月の熟慮期間が与えられる。
この2か月のあいだに、抵当権者は2つにひとつを選ぶ。
ひとつは「その金額で承諾する」。
もうひとつは「いや、安すぎる。競売にかける」や。
もし抵当権者が、その2か月のあいだに何もしなかったら、どうなるんですか。
それが第三段階や。
みなし承諾──競売を申し立てなければ、承諾とみなされる
これを「みなし承諾」と言う。
民法384条(債権者のみなし承諾) 次に掲げる場合には、(中略)債権者は、抵当不動産の第三取得者が(中略)提供した同号に規定する代価又は金額を承諾したものとみなす。 一 その債権者が(中略)2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。
抵当権者が消滅請求をつぶしたいなら、2か月以内に「競売を申し立てる」しかない。
黙っとったら、承諾したことにされてしまう。
抵当権者が承諾し(あるいは承諾とみなされ)、躯田さんが提示した金額を払い終えたとき、抵当権がようやく消える(386条)。
流れがすっきりしました。
該当する例: 躯田さんが各債権者に383条の書面を送り、抵当権者が2か月以内に競売を申し立てなかった → 躯田さんの提示額を承諾したものとみなされ、躯田さんが支払えば抵当権は消滅する(384条1号・386条)
該当しない例: 抵当権者が「金額が安すぎる」と考えたのに、2か月以内に競売を申し立てず、口頭で文句だけ言った → 競売の申立てをしない以上、承諾とみなされてしまう
推理④:誰が請求できて、いつまでにすべきか──民法380条・382条
主たる債務者・保証人は、抵当権消滅請求ができない
まず、抵当権消滅請求は「誰でもできる」わけやない。
民法380条 主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
この人らは、たとえ抵当不動産を買うて第三取得者になったとしても、抵当権消滅請求はできひん。
第三取得者になったのは同じなのに。
保証人っちゅうのは「借金が返せんかったら、自分が全額払います」と約束した人やろ。
その人が「建物の評価額だけ払って抵当権を消してくれ」なんて言い出したら、虫がよすぎる。
こういう人らは、抵当権を一部の金額で消してもらうんやのうて、借金そのものを全額払うべき立場なんや。 だから消滅請求は認められへん。
じゃあ、躯田さんが仮にこの建物の借金の保証人だったとしたら……。
過去問の設問1が、まさにこれを狙っとる。
「保証人が第三取得者になれば消滅請求できる」——これは誤りや。
競売の差押え前に、請求しておかなければならない
抵当権消滅請求は、いつでもできるわけやない。
民法382条(抵当権消滅請求の時期) 抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。
いったん競売の差押えが効力を生じたら、もう抵当権消滅請求はできひん。
躯田さんが心配していた、まさにそこですね。
過去問の設問2は「差押えの効力が発生した後でも、売却許可の決定が確定するまではできる」と書いとる。
これは誤りや。
差押えの効力が発生する前にやらなあかん。
躯田さんには「やるなら早めに、競売が動き出す前に」と伝えてやり。
該当する例: 一般の第三取得者である躯田さんが、競売の差押え効力が生じる前に抵当権消滅請求をする → 適法にできる(382条)
該当しない例: 借金の保証人が抵当不動産を買って消滅請求しようとする/差押えの効力が発生した後に消滅請求しようとする → いずれもできない(380条・382条)
推理⑤:代価弁済と抵当権消滅請求を対比する
躯田さんが混乱せんように、表にするで。
| 比較項目 | 代価弁済(378条) | 抵当権消滅請求(379条〜) |
|---|---|---|
| 言い出す人 | 抵当権者 | 第三取得者 |
| 主導権 | 抵当権者にある | 第三取得者にある |
| 払う金額 | 抵当権者が請求した代価 | 第三取得者が提示した金額 |
| 抵当権者の対抗手段 | (請求した側なので不要) | 2か月以内に競売を申し立てる |
| 消滅のタイミング | 代価を弁済したとき | 承諾+支払い完了のとき(386条) |
代価弁済は抵当権者が動き、抵当権消滅請求は第三取得者が動く。
試験では、この2つをわざと混ぜてひっかけてくる。
「代価弁済は第三取得者から請求する」なんて書いてあったら、それは引っくり返した誤りや。
主導権が誰にあるか、そこを軸に覚えるんやで。
該当する例: 抵当権者が動けば代価弁済、第三取得者が動けば抵当権消滅請求、と主導権で見分ける → 正しい整理
該当しない例: 「代価弁済も抵当権消滅請求も、どちらも第三取得者が請求する制度だ」と覚える → 誤り。代価弁済は抵当権者の請求が起点
推理⑥:平成21年問6をあてはめる
設問1──保証人が第三取得者になったら?
- 抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。
保証人は、第三取得者になっても抵当権消滅請求はできひん(380条)。
保証人は借金を全額払うべき立場やからや。
よって設問1は誤り。
設問2──差押えの後でもできる?
- 抵当不動産の第三取得者は、(中略)競売による差押えの効力が発生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることができる。
抵当権消滅請求は、差押えの効力が発生する「前」にせなあかん(382条)。
差押えの後ではもうできひん。
よって設問2は誤り。
設問3──裁判所の許可は要る?
- 抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に民法第383条所定の書面を送付すれば足り、その送付書面につき事前に裁判所の許可を受ける必要はない。
抵当権消滅請求は、登記をした各債権者に383条の書面を送付すればよい。
その書面を送るのに、裁判所の許可なんか要らへん。
よって設問3は正しい。
意外とシンプルなんですね。
設問4──「承諾しない」と通知すれば消滅を防げる?
- (中略)書面の送付を受けた抵当権者が、(中略)2か月以内に、承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知すれば、同請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。
抵当権者が消滅請求をつぶすには、2か月以内に「競売を申し立てる」必要がある(384条1号)。 「承諾できない」と通知するだけでは、効力を失わせることはできひん。
よって設問4は誤りや。
というわけで、正しいのは設問3。
正解は3や。
事件の結論
答えは、方法が2つある。
抵当権者から請求される「代価弁済」(378条)と、躯田さんのほうから請求する「抵当権消滅請求」(379条〜)や。 躯田さんが自分から動けるのは、抵当権消滅請求のほうやな。
答えは、手遅れになる。
抵当権消滅請求は、差押えの効力が発生する前にせなあかん(382条)。
やるなら早めに動くことや。
答えは、要らへん。
登記をした各債権者に383条の書面を送付すればよい。
裁判所の許可は不要や(383条)。
答えは、終わりやない。
抵当権者が「承諾しない」と言うだけでは、消滅請求はつぶれへん。
つぶしたいなら2か月以内に競売を申し立てるしかない(384条1号)。
それをせえへんかったら、みなし承諾になる。
正しいのは設問3、登記をした各債権者に383条の書面を送付すれば足り、裁判所の許可は不要——。 正解は3や。
躯田さんには「自分から動ける抵当権消滅請求という手があること、ただし競売の差押えが始まる前に動くこと」を、しっかり伝えます。
壱星はメモ帳に丁寧に書き留めると、ふと顔を上げた。
班長のお仕事、大変そうですね。
もし出店の手配とかで手が足りなかったら、その……ぼくでよければ、手伝いくらいは。
ありがとうございます、心強いです!
壱星は耳をほんのり赤くしたまま、礼を言って事務所を出て行った。
試験のひっかけメモ
- 代価弁済は「抵当権者」が請求、抵当権消滅請求は「第三取得者」が請求:主導権が真逆。これを引っくり返した選択肢は誤り。「代価弁済を第三取得者から請求する」「抵当権消滅請求を抵当権者から請求する」はどちらもNG
- 主たる債務者・保証人・これらの承継人は抵当権消滅請求ができない(380条):第三取得者になっても不可。これらの者は借金を全額弁済すべき立場だから。「保証人が買い受ければできる」は典型的なひっかけ
- 抵当権消滅請求は差押えの効力発生「前」(382条):競売の差押えが効力を生じた後はできない。「売却許可決定が確定するまでできる」は誤り
- 383条の書面送付に裁判所の許可は不要:登記をした各債権者に書面を送付すれば足りる。「事前に裁判所の許可が必要」は誤り
- 抵当権者が消滅請求をつぶすには2か月以内の「競売の申立て」が必要(384条1号):「承諾しない旨を通知するだけ」では効力を失わせられない。何もせず2か月過ぎれば、みなし承諾になる
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
今日の教訓は—— 何かを引き継ぐときは、「いやです」って2か月以内に確定日付つきで言えば、前の人の約束ごとを背負わなくていい!
つまり、わたしも町内会に「前の班長さんの宿題はやりませーん」って確定日付つきのお手紙を出せば、夏祭りの出店から解放されるってことですね!
あと、わたしは前の班長さんの保証人じゃないから、ちゃんと抵当権消滅請求できます!
やったー、これで安心です!
ええか、正確に言うで!!
第三取得者を救う方法は2つ!
ひとつは代価弁済——これは抵当権者のほうから「代金を払うてくれ」と請求してくる制度や(378条)!
第三取得者から強制はできひん!
もうひとつが抵当権消滅請求——これは第三取得者のほうから登記をした各債権者に書面を送って請求する(379条・383条)!
裁判所の許可なんか要らん!
そして抵当権者がこれをつぶしたいなら、2か月以内に「競売を申し立てる」しかない(384条1号)!
「いやです」と通知するだけでは止まらん!
黙っとったらみなし承諾や!
おまけに、保証人や主たる債務者は、買い受けても抵当権消滅請求はできひん(380条)!
全額払えっちゅう話や!
しかも差押えの効力が生じる前にやらなあかん(382条)!
今回のまとめ
抵当権つきの不動産を買った第三取得者を救う制度には、代価弁済(378条)と抵当権消滅請求(379条〜386条)の2つがある。両者は主導権を握る人が真逆であり、平成21年問6のように、抵当権消滅請求の手続・要件・タイミングを正確に押さえることで確実に解ける。
①第三取得者は追及効により不安定な立場に置かれる: 抵当権は不動産が売られても消えず、新所有者(第三取得者)に追いかけてくる。売主(債務者)が借金を返さなければ、第三取得者の不動産が競売にかけられる。これを救うのが代価弁済と抵当権消滅請求。
②代価弁済は抵当権者が主導する(378条): 抵当権者の請求に応じて第三取得者が代価を弁済すると、抵当権はその第三取得者のために消滅する。言い出すのは抵当権者であり、第三取得者から強制することはできない。
③抵当権消滅請求は第三取得者が主導する(379条・383条): 第三取得者が登記をした各債権者に383条の書面を送付して請求する。書面の送付に裁判所の許可は不要。代価弁済とは主導権が裏返しの関係にある。
④抵当権者の対抗手段は2か月以内の競売申立て(384条1号): 書面送付を受けた抵当権者が消滅請求の効力を失わせるには、2か月以内に競売を申し立てる必要がある。「承諾しない旨の通知」だけでは足りず、何もしなければ承諾したものとみなされる(みなし承諾)。抵当権者が承諾し、第三取得者が支払いを終えたときに抵当権が消滅する(386条)。
⑤できない者・できない時期に注意(380条・382条): 主たる債務者・保証人・これらの承継人は、第三取得者になっても抵当権消滅請求をすることができない(全額弁済すべき立場のため)。また、抵当権消滅請求は競売による差押えの効力が発生する前にしなければならない。
| 論点 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第三取得者 | 抵当権つき不動産の買主。追及効により抵当権が残る | ─ |
| 代価弁済 | 抵当権者の請求に応じて代価を弁済→抵当権消滅。主導権は抵当権者 | 378条 |
| 抵当権消滅請求 | 第三取得者が各債権者に書面送付して請求。裁判所の許可は不要 | 379条・383条 |
| みなし承諾 | 抵当権者が2か月以内に競売を申し立てなければ承諾とみなす | 384条1号 |
| 抵当権の消滅時期 | 承諾+代価等の支払い完了時 | 386条 |
| できない者 | 主たる債務者・保証人・これらの承継人 | 380条 |
| できる時期 | 競売による差押えの効力発生前 | 382条 |
| 代価弁済と抵当権消滅請求の対比 | 代価弁済(378条) | 抵当権消滅請求(379条〜) |
|---|---|---|
| 言い出す人 | 抵当権者 | 第三取得者 |
| 払う金額 | 抵当権者が請求した代価 | 第三取得者が提示した金額 |
| 抵当権者の対抗手段 | (請求した側なので不要) | 2か月以内に競売を申し立てる |
| 消滅のタイミング | 代価を弁済したとき | 承諾+支払い完了のとき |
| 平成21年問6 設問の正誤 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| 1 | 保証人が第三取得者になれば抵当権消滅請求できる | ×(380条によりできない) |
| 2 | 差押えの効力発生後も売却許可決定確定まで消滅請求できる | ×(382条により差押え前に限る) |
| 3 | 各債権者に383条書面を送付すれば足り、裁判所の許可は不要 | ◯(正解) |
| 4 | 2か月以内に承諾できない旨を通知すれば消滅の効果は生じない | ×(競売の申立てが必要・384条1号) |
