宅建にチャレンジ 権利関係

宅建探偵 第59話 「たまった利息、全部は持っていけない?」抵当権の被担保債権の範囲と利息2年分の制限を後順位抵当権者の視点で深掘り|元本・利息・遅延損害金・違約金と民法375条

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プロローグ

午後の事務所。こむぎちゃんが、スマホの画面を見つめて「あー!」と大きな声を上げた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
登記田さん、聞いてください!
わたし、貯めてたポイント、半分くらい消えてました!
ポイント?
なんのポイントや。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
いつも行くドラッグストアのです。
コツコツ貯めて、3年分くらい貯まってると思ってたのに。
画面見たら「有効期限は2年。古い分から順に失効します」って書いてあって。
ああ、よくある仕組みやな。
古いポイントから先に消えていくっちゅうやつや。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
そうなんですよ。
だから、いちばん最近の2年分しか残ってなくて。
3年前、4年前にせっせと貯めたポイントは、ぜんぶパー。
あんなに頑張ったのに〜。
まあ、貯めたら貯めただけずっと使える、っちゅうわけにはいかんのやろな。
どっかで線を引かんと、お店も際限がのうなるからな。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
線、引かれちゃいました。
2年っていう線で、バッサリ。
昔の分は「もう無効です」って、冷たいんですよ。
ほな、これからは2年以内にちょこちょこ使うこっちゃな。
貯め込まんと。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
はい……。
でも、なんだか納得いきません。
古い分から消えるなら、せめて教えてほしかったです。

そのとき、事務所のドアがノックされた。

登記田さん、こんにちは。
敷地です。
お忙しいところすみません。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

入ってきたのは敷地倫太郎さん。
少し前に投資用のアパートを自分で買ったのをきっかけに、つい最近、独立して不動産業を始めたばかりだ。
担保まわりの知識も、その物件を持ってから少しずつ身につけてきた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
敷地さん、いらっしゃいませー。
今ちょうど、わたしのポイントが2年で消えた話をしてたところなんです。
それは……お気の毒ですね。
実は今日も、ちょっと「線の引かれ方」で困っている話を持ってきたんですが。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

敷地さんは手帳を開くと、少し前のめりになって切り出した。


今日の事件:躯体守(くたい まもる)さんの相談

今日は、抵当権の「どこまでが優先で回収できるのか」という相談なんです。
僕の知人の躯体守(くたい まもる)さんという方が、ある土地建物にお金を貸していて、そこに2番抵当権を持っているんですが。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
その不動産には、先に銀行が1番抵当権を設定しているんです。
所有者は外構慎二(がいこう しんじ)さんという方で、銀行から2,000万円を借りていて。
ところが外構さん、返済が苦しくなって、もう何年も利息を滞納しているらしくて。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そこで躯体さんが、いくつか心配しているんです。
順番に聞いてもいいですか。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ええよ。
一つずつ整理していこ。
登記田探偵
登記田探偵
まず一つ目。
1番抵当の銀行が、長年たまった利息を全部「優先」で持っていったら、後順位の躯体さんの取り分は、ほとんど残らないんじゃないか、と。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
二つ目。
そもそも利息って、何年分でも優先して回収してもらえるものなんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
三つ目。
外構さんは滞納で遅延損害金もふくらんでいるはずなんですが、それも全部、銀行が優先で持っていくんでしょうか。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
最後に四つ目。
もし2年で切られた残りの利息があるとして、銀行はそれを、もう一円も取れなくなるんでしょうか。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
こむぎちゃん
こむぎちゃん
あれ……?
2年で切られる、って。
それ、さっきのわたしのポイントの話と、なんだか似てません?
こむぎちゃん
こむぎちゃん
古い分から消えて、最近の2年分しか残らないっていう。
たまっていったものに、2年っていう線が引かれるところ、そっくりじゃないですか。
こむぎちゃん、ええとこに気づいたな。
構造はまさにそれや。
たまっていく利息に、優先の枠として2年っちゅう線が引かれる」——これが今日の中心や。
登記田探偵
登記田探偵
抵当権で「どこまでを優先で回収できるか」、その範囲を「被担保債権の範囲」と言う。
躯体さんの心配を軸に、その範囲を順に解きほぐしていこか。
登記田探偵
登記田探偵
お願いします。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

推理①:そもそも何が「優先で回収できる」のか──被担保債権の射程

まず全体像を押さえる

敷地さん、抵当権っちゅうのは、貸したお金を不動産の価値から「他の債権者より先に」回収できる権利やったな。
ほな、その「回収できるお金」には、何が含まれると思う?
登記田探偵
登記田探偵
まず、貸した元本ですよね。
あとは……利息も入りそうな気がします。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
その通り。
抵当権で優先弁済を受けられるお金の中身は、大きく分けてこうなる。
登記田探偵
登記田探偵
①元本、
②利息、
③遅延損害金(債務不履行による損害賠償)、
④違約金。

この4つが、抵当権の被担保債権に含まれる代表的なものや。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
元本、利息、遅延損害金、違約金……。
要するに、貸したお金と、それにくっついて発生するお金ってことですね。
イメージはそれでええ。
元本っちゅう幹に、利息や損害金っちゅう枝葉がぶら下がっとる、そんな格好や。
登記田探偵
登記田探偵

元本は全額、優先で回収できる

ここで大事なんは、この4つがぜんぶ同じ扱いやない、っちゅうことや。
登記田探偵
登記田探偵
外構さんの借りた元本2,000万円
これは、何年たっとろうが、まるごと優先弁済の対象や。
元本に「2年分まで」みたいな制限はかからへん。
登記田探偵
登記田探偵
元本は、全額そのまま優先なんですね。
そこは制限なし、と。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そういうことや。
問題になるのは、利息と遅延損害金みたいな「毎年積み重なっていくお金」のほうや。
これには、ある制限がかかる。
それを次でやろか。
登記田探偵
登記田探偵

該当する例: 外構さんが借りた元本2,000万円 → 全額が抵当権の優先弁済の対象になる(年数による制限なし)

該当しない例: 外構さんが銀行とは別件で負っている、抵当権と無関係の買掛金 → そもそもこの抵当権の被担保債権ではないので、優先弁済の対象にならない


推理②:利息は「最後の2年分」だけ──民法375条1項の制限

積み重なる利息に引かれる線

さあ、ここが今日の主役や。
外構さんは、年利5%で2,000万円を借りとった。
っちゅうことは、利息は1年でいくらや。
登記田探偵
登記田探偵
2,000万円の5%ですから……年に100万円ですね。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
その通り。
ほんで外構さんは、その利息を4年分も滞納しとる。
単純に足したら、たまった利息はいくらや。
登記田探偵
登記田探偵
100万円が4年分で、400万円。
けっこうな額です。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ここで、躯体さんの二つ目の心配——「利息は何年分でも優先してもらえるのか」に答えが出る。
条文を見てみよか。
登記田探偵
登記田探偵

民法375条1項(抵当権の被担保債権の範囲) 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。

ポイントは「満期となった最後の2年分についてのみ」や。
たまった利息が4年分あっても、抵当権で優先的に回収できるのは、いちばん新しい2年分だけ
つまり、外構さんの400万円のうち、優先は200万円までや。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
あっ、まさにわたしのポイントです!
古い分から消えて、新しい2年分だけ残るってやつ!
構造はそっくりやな。
ただし、ポイントと違うて、こっちは古い利息が「消える」わけやない。
そこが大事なとこやから、あとできっちり言うで。
登記田探偵
登記田探偵

なぜ「利息その他の定期金」なのか

条文には「利息その他の定期金」とある。
定期金っちゅうのは、利息みたいに一定期間ごとに繰り返し発生するお金のことや。
だから、毎年積み上がっていくタイプのものが、この2年制限の対象になる。
登記田探偵
登記田探偵
元本は一回きりのものだから制限なし、積み重なる利息は2年分まで、という線引きなんですね。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そういう整理でええ。
これを試験用語で「利息の2年分の制限」と呼ぶ。
抵当権の論点では、まず真っ先に押さえる数字や。
登記田探偵
登記田探偵

該当する例: 外構さんの滞納利息400万円(4年分) → 抵当権で優先弁済を受けられるのは、満期となった最後の2年分=200万円まで

該当しない例: 外構さんの元本2,000万円 → 定期金ではないので2年制限の対象外。全額が優先弁済の対象


推理③:2年で切られた利息は消えるのか──残りは無担保債権として残る

「優先で取れない」と「取れない」は違う

さあ、躯体さんの四つ目の心配や。
「2年で切られた残りの利息は、銀行はもう取れなくなるのか」やったな。
登記田探偵
登記田探偵
はい。
2年分しか優先されないなら、残りの200万円は、銀行はあきらめるしかないのかな、と。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ここが、こむぎちゃんのポイントとの決定的な違いや。
ポイントは2年で「消えてなくなる」。
けど、利息の残り200万円は、債権としては消えへん
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
え、消えないんですか?
じゃあ、どうなるんです?
375条が制限しとるのは、あくまで「抵当権を行使できる範囲」、つまり「優先弁済を受けられる範囲」だけや。
2年を超えた古い利息200万円は、抵当権では優先的に回収できへん
でも、ただの一般債権(無担保の債権)としては、ちゃんと残っとる。
登記田探偵
登記田探偵
せやから銀行は、その200万円を、外構さんに対して普通に請求はできる
ただ、他の債権者を押しのけて先に取る、っちゅう「優先」の力がないだけや。
登記田探偵
登記田探偵
なるほど。
「優先では取れない」けれど、「まったく取れない」わけではない、と。
担保の力が及ばないだけで、貸したお金の権利そのものは生きているんですね。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
その理解が正確や。
ここ、試験でもよう狙われる。
「2年を超えた利息は消滅する」みたいな言い方は誤りや。
消えるんやのうて、「優先弁済の枠から外れる」だけやからな。
登記田探偵
登記田探偵

特別の登記という抜け道

ついでに、条文のただし書きも見とこか。
「それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時から抵当権を行使できる」とある。
登記田探偵
登記田探偵
つまり、2年を超えた古い利息でも、満期後にちゃんと登記をすれば、その分も優先で回収できるようになる、っちゅう例外や。
ただ、実務でこれをやることはまれでな。
原則は「優先は最後の2年分」と押さえて、例外として特別登記がある、と覚えとけば実戦は戦える。
登記田探偵
登記田探偵

該当する例: 2年を超えた古い利息200万円 → 抵当権の優先弁済は受けられないが、無担保の一般債権として外構さんへの請求自体は可能

該当しない例: 満期後に特別の登記をした古い利息 → 例外的に、その登記の時から抵当権による優先弁済を受けられる


推理④:遅延損害金も「通算して2年分」──そして2年制限は誰のためにあるのか

遅延損害金の扱い

登記田さん、三つ目の心配が残っています。
外構さんは滞納で遅延損害金もふくらんでいるはずで。
それも全部、銀行が優先で持っていくんでしょうか。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
遅延損害金っちゅうのは、返済が遅れたことに対する損害賠償や。
これも、利息と同じように毎年積み上がっていくタイプのお金やな。
条文はこう定めとる。
登記田探偵
登記田探偵

民法375条2項 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の2年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して2年分を超えることができない。

ポイントは「利息その他の定期金と通算して2年分を超えることができない」や。
遅延損害金も、最後の2年分までは優先で取れる。
けど、利息とは別枠で2年ずつやのうて、利息と合わせて、2年分の枠を分け合うんや。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
つまり、利息で2年、遅延損害金でまた2年、合わせて4年分取れる……ってことですね!
ちゃうちゃう、それは違うで。
利息と遅延損害金をぜんぶ足して、トータルで2年分が天井や。
別々に2年ずつ、っちゅう数え方やないからな。
登記田探偵
登記田探偵
登記田さん、その「2年分」というのは、金額でいうといくらが上限になるんでしょうか。
利息と損害金が混ざると、急に分かりにくくなって。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ええ質問や。
そこをはっきりさせよか。
外構さんは元本2,000万円・年利5%やから、1年分の利息は100万円
っちゅうことは、優先枠の天井は——
登記田探偵
登記田探偵
100万円 × 2年分 = 200万円
この200万円っちゅう金額の枠を、利息と遅延損害金が取り合うんや。
利息と損害金を全部足して、優先で取れるのはこの200万円までや。
登記田探偵
登記田探偵
なるほど、金額で200万円という天井があるんですね。
じゃあ、その200万円を、利息と損害金でどう分け合うんですか。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
たとえば、利息で1年分=100万円の優先枠を使うたとする。
ほな、遅延損害金で優先してもらえるのは、残りの1年分=100万円までや。
合わせて200万円。
これで枠は使い切りや。
登記田探偵
登記田探偵
逆に、利息で2年分=200万円をまるまる使うてしもたら、遅延損害金の優先枠はもう一円も残らへん
「2年分」っちゅうのは、こういう金額の天井のことやと思うてくれたらええ。
登記田探偵
登記田探偵
すっきりしました。
利息と損害金を別々に数えるんじゃなくて、約定利率の2年分にあたる金額(ここでは200万円)が、両者を合わせた優先弁済の上限なんですね。
それなら、銀行が際限なく優先で持っていく、ということにはならない。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

なぜ2年で線を引くのか──後順位抵当権者の保護

さあ、いちばん最初の躯体さんの心配に戻るで。
「1番の銀行が利息を全部優先で持っていったら、後順位の躯体さんの取り分が残らんのやないか」やったな。
登記田探偵
登記田探偵
ここで、なんで2年っちゅう線を引くのか、その理由がはっきりする。
登場人物を整理しよか。
登記田探偵
登記田探偵

【ケース】同じ不動産に1番・2番の抵当権

  • 外構慎二(がいこう しんじ)さん:土地建物の所有者(お金を借りた債務者・抵当権設定者)
  • 銀行:外構さんに2,000万円を貸し、1番抵当権を持つ(先順位抵当権者)
  • 躯体守(くたい まもる)さん:外構さんに別途お金を貸し、2番抵当権を持つ(後順位抵当権者)
考えてみ。
もし「たまった利息は何年分でも優先」やったら、どうなる?
外構さんが10年も滞納してたら、銀行は元本2,000万円+利息1,000万円、ぜんぶ優先で持っていける。
登記田探偵
登記田探偵
ほな、競売で不動産が売れても、後順位の躯体さんに回ってくる分は、すっからかんや。
しかも、利息がどこまでふくらんどるかは、後から抵当に入った躯体さんには見えにくい。
いつのまにか先順位の取り分が際限なくふくらんで、自分の担保価値が食いつぶされる——これでは怖うて後順位の抵当権なんか取られへん。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
あー、それは困りますね。
後から貸す人が、安心できない。
そこで375条が、優先の利息を「最後の2年分まで」と区切った。
こうしておけば、後順位の躯体さんは「先順位が優先で取るのは、元本+せいぜい2年分の利息まで」と見通しが立つ
だから安心して2番抵当を取れる。
登記田探偵
登記田探偵
つまり、2年制限の狙いは、後順位抵当権者や、配当を分け合う他の債権者を守ることにある。
ここが、この制度のいちばんの肝や。
登記田探偵
登記田探偵
腑に落ちました。
あの2年という線は、僕たち後から関わる側を守るための線だったんですね。
銀行を縛るというより、後順位者の予測を立てやすくするための仕組み、と。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ええまとめや。
躯体さんに、そう伝えてやり。
登記田探偵
登記田探偵

該当する例: 後順位に躯体さんがいる外構さんの不動産 → 銀行が優先で取る利息は最後の2年分に制限され、その分、躯体さんの配当原資が守られる

該当しない例: 元本2,000万円そのもの → 制限の対象外なので、後順位者がいても全額が先順位の優先弁済に充てられる


事件の結論

ほな、躯体さんの4つの心配に、順番に答えを出していこか。
登記田探偵
登記田探偵
一つ目——「銀行が利息を全部優先で持っていったら、後順位の取り分が残らないのでは」。
答えはノー
銀行が優先で取れる利息は最後の2年分に制限されとるから、その分、躯体さんの取り分は守られる。これが375条の狙いそのものや。
登記田探偵
登記田探偵
二つ目——「利息は何年分でも優先してもらえるのか」。
答えはノー
優先は満期となった最後の2年分のみ(375条1項)。
外構さんの滞納利息400万円のうち、優先は200万円までや。
登記田探偵
登記田探偵
三つ目——「遅延損害金も全部優先で持っていくのか」。
答えはノー
遅延損害金も最後の2年分まで。
しかも利息と通算して2年分が上限や(375条2項)。
別枠で2年ずつではない。
外構さんなら、利息と損害金を合わせて200万円(年100万円×2年分)までが優先の天井や。
登記田探偵
登記田探偵
四つ目——「2年で切られた残りの利息は、もう取れないのか」。
答えはノー
優先弁済は受けられんが、無担保の一般債権としては残る
銀行は外構さんに普通に請求できる。消えてなくなるわけやない。
登記田探偵
登記田探偵
4つとも、すっきりしました。
被担保債権の範囲って、ただ「何が入るか」だけじゃなくて、「どこまで優先か」「優先を外れたらどうなるか」まで含めて見ないといけないんですね。
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ええ気づきや。
元本は全額、利息と遅延損害金は通算2年分まで優先、それを超えた分は無担保で残る——この三段で覚えとき。
登記田探偵
登記田探偵

敷地さんは手帳に丁寧に書き留めると、礼を言って事務所を出て行った。


試験のひっかけメモ

  • 元本に2年制限はかからない:2年分に制限されるのは「利息その他の定期金」と「遅延損害金」。元本は何年たっても全額が優先弁済の対象。「元本も2年分まで」は誤り
  • 優先は「最後の2年分」:たまった利息が4年分でも、優先で取れるのは新しい2年分だけ(375条1項)。古い分から優先枠を外れる
  • 2年を超えた利息は「消える」のではなく「優先から外れる」だけ:無担保の一般債権としては残り、債務者への請求自体は可能。「消滅する」という表現は誤り
  • 利息と遅延損害金は「通算して」2年分:別枠で利息2年+遅延損害金2年=合計4年分、ではない。両者を合算して、約定利率の2年分にあたる金額が優先弁済の上限(375条2項)。元本2,000万円・年利5%なら上限は100万円×2年=200万円で、この枠を利息と損害金が取り合う。これは典型的なひっかけ
  • 2年制限の趣旨は後順位者の保護:先順位の取り分が際限なくふくらむのを防ぎ、後順位抵当権者や他の債権者の予測可能性を守るための制度。なお、後順位抵当権者や配当を争う他の債権者が存在しない場面では、2年分を超える利息についても優先弁済を受けうると解されている(趣旨が後順位者等の保護にあるため)。ただし射程の限られた応用論点なので、まずは「原則は最後の2年分」を確実に押さえる

締め:こむぎちゃんの1行まとめ

さてと、今日の教訓を一言でまとめてみ。
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
はい!
今日の教訓は—— たまったものは古い分から消える。
だからポイントも利息も、2年以内に使い切れ!
ってことですよね!
わたし、決めました。
これからは利息をこまめに回収する人生を送ります!
あと、銀行に頼んで、わたしのポイントにも特別の登記をしてもらおうと思います!
そうすれば、3年前の分も復活するはずです!
なんでやねーん!!
登記田探偵
登記田探偵
ポイントに特別の登記なんかできるかいな!
特別の登記っちゅうのは、抵当権の話や。
こむぎちゃんのドラッグストアのポイントとは何の関係もない!
正確に言うで!!
抵当権の被担保債権には、元本・利息・遅延損害金・違約金が含まれる(375条)!
そのうち元本は全額が優先、年数の制限はかからへん!
利息その他の定期金は、満期となった最後の2年分のみ優先弁済を受けられる(375条1項)!
遅延損害金も最後の2年分まで、しかも利息と通算して2年分が上限や(375条2項)!
別枠で2年ずつやないぞ!
金額でいうたら、約定利率の2年分——外構さんなら200万円が天井や!
2年を超えた利息は消えるんやのうて、無担保の一般債権として残る
優先から外れるだけや!
その2年制限の狙いは、後順位抵当権者や他の債権者を守ることにある!
そして、こむぎちゃんのポイントは、ただの有効期限切れや!
登記したら復活するなんて都合のええ話はない!
登記田探偵
登記田探偵
ちゃんとしなさい!
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
…てへっ♪

今回のまとめ

抵当権で「どこまでを優先弁済で回収できるか」、その範囲を被担保債権の範囲という。被担保債権には元本・利息・遅延損害金・違約金が含まれるが、すべてが同じ扱いではない。元本は全額が優先の対象である一方、毎年積み重なる利息その他の定期金と遅延損害金には、民法375条による「最後の2年分」という制限がかかる。

①被担保債権の射程: 抵当権の被担保債権には、元本・利息・遅延損害金(債務不履行による損害賠償)・違約金が含まれる。これらが優先弁済の対象となりうる。

②元本に年数制限はない: 元本は一回きりの債権であり、何年経過しても全額が抵当権の優先弁済の対象となる。2年分の制限は元本には及ばない。

③利息その他の定期金は最後の2年分のみ(375条1項): 利息のように一定期間ごとに繰り返し発生する定期金について、抵当権者が優先弁済を受けられるのは、満期となった最後の2年分に限られる。

④2年を超えた分は無担保債権として残る: 375条が制限するのは「抵当権を行使できる範囲(優先弁済の範囲)」のみである。2年を超えた古い利息は、抵当権による優先弁済こそ受けられないが、無担保の一般債権としては存続し、債務者への請求は可能である。消滅するわけではない。なお、満期後に特別の登記をすれば、それ以前の定期金についても登記の時から抵当権を行使できる(375条1項ただし書)。

⑤遅延損害金は利息と通算して2年分(375条2項): 債務不履行による遅延損害金も、最後の2年分について優先弁済を受けられる。ただし利息その他の定期金と通算して2年分を超えることはできない。利息と遅延損害金で別々に2年分ずつ取れるわけではなく、約定利率の2年分にあたる金額(元本2,000万円・年利5%なら100万円×2年=200万円)が、両者を合わせた優先弁済の金額上限となり、その枠を利息と損害金が分け合う。

⑥2年制限の趣旨は後順位者の保護: 先順位抵当権者の優先弁済額が利息の累積によって際限なくふくらむことを防ぎ、後順位抵当権者や配当を分け合う他の債権者の予測可能性・担保価値を守るための制度である。

被担保債権の種類 優先弁済の範囲 根拠
元本 全額(年数制限なし) 375条の制限対象外
利息その他の定期金 満期となった最後の2年分のみ 375条1項
遅延損害金(損害賠償) 利息と通算して最後の2年分(約定利率2年分の金額が上限) 375条2項
2年を超えた利息・損害金 抵当権では優先弁済不可(無担保債権として存続) 375条の反対解釈
違約金 被担保債権に含まれる(定期金性があれば2年制限の対象) 375条
数字で見る2年分の制限(外構さんのケース) 金額
元本(2,000万円) 2,000万円すべて優先
滞納利息(年100万円×4年分) 累計400万円
└ うち優先弁済を受けられる分(最後の2年分) 200万円
└ 優先から外れる分(無担保債権として存続) 200万円
利息+遅延損害金の優先弁済の上限(共通枠) 200万円(年100万円×2年分。利息と損害金で分け合う)
後順位の躯体さんが受ける効果 先順位の優先利息等が200万円に抑えられ、配当原資が守られる
制限の有無の対比 元本 利息・遅延損害金
性質 一回きりの債権 繰り返し積み重なる定期金等
年数による優先制限 なし(全額優先) あり(通算して最後の2年分のみ)
制限の趣旨 後順位抵当権者・他の債権者の保護

参考書籍:2026年版 史上最強の宅建士テキスト

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