プロローグ:こむぎちゃん、フリマアプリの手数料に怒る
朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを睨んでいた。
3,000円のワンピースが売れたのに、手取り2,700円って…
私も仲介手数料ビジネスを始めようかな
不動産の仲介手数料はな、宅建業法で上限が決まっとるから、好きな金額をもらえるわけやないんやで
そのとき、事務所のドアが開いた。
フランクな笑顔で入ってきたのは敷地倫太郎だ。以前、営業保証金と弁済業務保証金の相談に来た、独立開業を目指す30代の男性。あのときと比べて、どこか自信に満ちた表情をしている。
久しぶりやな。
開業の準備はどうや?
保証協会への加入も決めましたし、事務所の内装も仕上がってきました。
それで、早速仲介の話が来てるんですが、報酬っていくらもらえるんですか?
もう一度ちゃんと確認しておこうと思って…
こむぎちゃんが椅子から立ち上がった。
お久しぶりです!
開業準備、進んでるんですね!
敷地がこむぎちゃんに笑いかけた。
登記田さんは幸せものですよ
こむぎちゃんが嬉しそうに笑った。
登記田がコーヒーを差し出しながら切り出した。
開業前に知っておかなあかんことやからな
相談① 報酬額の制限とは?|上限の根拠と必要経費のルール
報酬には上限がある
敷地が聞いた。
国土交通大臣が定めた額を超えて報酬を受領してはならない。
これが宅建業法のルール。
しかも事務所ごとに報酬額を掲示する義務もある。
開業したら事務所に掲示しとかなあかんで
敷地がメモを取りながら質問した。
チラシとかネット広告とか、結構かかりますよね
別途請求はできん。
ただし、依頼者から"特別に"頼まれた広告は別途請求できる
普通のチラシやポータルサイトへの掲載は"通常の広告"やから報酬に含まれる
こむぎちゃんが言った。
ここは試験でも出るで
該当する例:通常の媒介業務としてポータルサイトに物件情報を掲載 → 費用は報酬に含まれる(別途請求不可)
該当しない例:依頼者の特別の依頼で新聞全面広告を掲載 → 広告費用を別途請求できる
相談② 売買の報酬を速算法で計算|媒介・代理・交換・複数業者のルール
敷地さんの案件で実際に計算してみよか
敷地が説明した。
物件は2,000万円の中古マンション。
最初の売上がいくらになるか知りたくて
売買の報酬は"速算法"で計算するのが一番早い
登記田がホワイトボードに書いた。
売買の報酬計算(本来の方法):
| 代金の区分 | 料率 |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円超〜400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円超の部分 | 3% |
速算法:売買代金 × 3% + 6万円
ステップ①:税抜代金 × 3% 2,000万円 × 3% = 60万円
ステップ②:+6万円 60万円 + 6万円 = 66万円(税抜の報酬上限)
ステップ③:消費税を上乗せ 66万円 × 1.1 = 72万6,000円(税込)
これが敷地さんが一方の依頼者から受け取れる報酬の上限や
敷地の目が光った。
開業資金の回収に希望が見えますね
誰からもらえるかいう話
媒介の場合:
- 売主から最大72万6,000円
- 買主から最大72万6,000円
- 双方から受け取れば 合計最大145万2,000円
媒介なら売主・買主それぞれから上限額まで受け取れる。
ただし一方の上限は72万6,000円。
これを超えたらあかん
代理の場合:
- 代理は媒介の2倍が上限 → 最大145万2,000円
- ただし1つの取引で受け取れる報酬の総額は、媒介で双方から受け取る合計額を超えてはならない
敷地が続けて聞いた。
たとえば2,000万円の土地と1,500万円の土地を交換する場合、2,000万円で計算する。
等価交換でも同じやで
別の業者が買主側についた場合はどうなりますか?
敷地さんが売主側で72万6,000円、買主側の業者が72万6,000円。
合計145万2,000円で上限内や
計算の基礎にする売買代金は税抜価格を使う。
土地は非課税やから消費税はかからんけど、建物は課税対象。
もし税込価格で提示されとったら、まず税抜に戻してから報酬を計算して、最後に報酬に消費税を上乗せする
該当する例:2,000万円(税抜)の物件の媒介で、売主から72万6,000円(税込)、買主から72万6,000円(税込)を受領 → 適法
該当しない例:2,000万円(税抜)の物件の媒介で、売主から80万円(税込)を受領 → 上限72万6,000円を超えるため違反
相談③ 空き家等の特例|800万円以下の物件は一方から最大33万円(税込)
敷地が少し渋い顔をした。
正直、報酬が安すぎて割に合わないんじゃないかと思いまして…
登記田がまず通常の計算をした。
本来の計算でいくで
通常の計算:200万円 × 5% = 10万円(税抜)→ 税込11万円
敷地が顔をしかめた。
交通費と調査費で消えますよ…
これじゃ引き受けられません
だから空き家等の特例があるんや
登記田が説明した。
空き家等の特例(低廉な空家等の売買の媒介の特例):
- 対象:800万円以下の宅地・建物(空き家に限らず、居住中でも更地でもOK)
- 上限:依頼者の一方から最大30万円×1.1=33万円(税込)
- 売主からも買主からもそれぞれ最大33万円まで受領可能
- ただし媒介契約の締結に際して、あらかじめ依頼者に説明し、合意を得る必要がある
ただし勝手に請求はできん。
事前に依頼者に説明して合意をもらう必要がある。
合意がなければ通常の計算による上限(11万円)のままや
こむぎちゃんが驚いた。
2024年の改正で、従来は売主からのみだった上乗せが、買主からも可能になった。
だから最大で双方合計66万円(税込)まで受領できるんや
敷地が表情を明るくした。
それなら空き家の仲介も十分引き受けられますね。
田舎の物件は手間がかかりますけど、これだけ報酬があれば対応できます
空き家問題を解消するために、業者が積極的に取り扱えるよう報酬を引き上げたんや
該当する例:200万円の空き家の媒介で、事前に依頼者に説明・合意のうえ、売主から33万円(税込)を受領 → 適法
該当しない例:200万円の空き家の媒介で、依頼者への説明・合意なしに33万円を請求 → 合意がなければ通常の上限(11万円)を超えるため違反
エピローグ:敷地の最初の売上、そして鉢合わせ
敷地がノートを閉じて、満足そうに笑った。
2,000万円の物件で72万6,000円、空き家でも特例で最大33万円。
数字がわかると事業計画が立てやすいです
登記田が頷いた。
次は賃貸の報酬も覚えとかなあかんで。
画地さんのアパートの入居者募集とか、賃貸の仲介もやるんやろ?
賃貸の報酬はどう計算するんですか?
次回教えたるわ
――では、そろそろ失礼しますね
敷地が帰り支度をしていると、ちょうど事務所のドアが開いた。
南向壱星が入ってきて、敷地と目が合った。
敷地が余裕の笑顔で声をかけた。
登記田さんからよく聞いてますよ。
勉強熱心な若手がいるって
壱星がぎこちなくお辞儀した。
敷地がこむぎちゃんに向き直った。
コーヒー、おいしかったです
こむぎちゃんがニコニコ答えた。
敷地さんの開業、応援してます!
敷地が軽く手を振って出て行った。
壱星がこむぎちゃんに聞いた。
独立開業準備中の方で、すごくしっかりした方なんです!
壱星がなんとも言えない表情を浮かべた。
登記田がコーヒーをすすりながら、心の中でつぶやいた。
(…三角関係の予感やな)
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「速算法は200万円の物件にも使える」 → 速算法(代金×3%+6万円)は400万円超の物件のみ使える。400万円以下は本来の区分計算で。
ひっかけ②「売買の代理の報酬は、媒介の報酬の3倍が上限」 → 2倍が上限。しかも1つの取引における報酬の総額は、媒介で双方から受け取る合計額を超えてはならない。
ひっかけ③「交換の報酬は、安いほうの物件の価額で計算する」 → 高いほうの価額で計算する。
ひっかけ④「空き家特例は、売主からのみ上乗せできる」 → 2024年改正で売主からも買主からもそれぞれ最大33万円(税込)まで受領可能。ただし事前の説明と合意が必要。
ひっかけ⑤「通常の広告費用は報酬とは別に請求できる」 → 通常の広告費用は報酬に含まれる(別途請求不可)。別途請求できるのは依頼者の特別の依頼による広告費用のみ。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが目を輝かせた。
フリマアプリの手数料10%より、不動産の仲介手数料3%のほうが安い!
だから私もフリマをやめて不動産仲介を始めます!
いいか、売買の報酬は速算法で"代金×3%+6万円"!
媒介なら売主・買主双方から受領可能!
代理は2倍だが総額の上限は同じ!
交換は高いほうの価額で計算!
800万円以下の空き家特例は一方から最大33万円(税込)で事前に合意が必要!
通常の広告費は報酬に含まれる!
手数料払うのがいやなら、フリマのワンピースは自分で売りなさい!
今回のまとめ
【報酬の基本ルール】
- 国土交通大臣が定めた上限を超えて報酬を受領してはならない
- 事務所ごとに報酬額の掲示義務がある
- 通常の広告費は報酬に含まれる(別途請求不可)。依頼者の特別の依頼による費用は別途請求可
【売買の報酬計算(速算法)】
- 400万円超の場合:売買代金 × 3% + 6万円(税抜)
- 400万円以下の場合は区分計算(200万円以下=5%、200万円超400万円以下=4%)
- 報酬に消費税10%を上乗せ。計算の基礎は税抜価格
【媒介・代理・交換】
- 媒介:一方から上記の上限額。双方から受ければ2倍
- 代理:媒介の2倍が上限。ただし1取引の総額は媒介で双方から受ける合計を超えない
- 交換:高いほうの価額で計算
- 複数業者:全業者の合計が媒介の上限の2倍以内
【空き家等の特例(2024年7月改正)】
- 対象:800万円以下の宅地・建物
- 一方から最大33万円(税込)
- 売主からも買主からもそれぞれ受領可能(改正で買主からも可能に)
- 媒介契約の締結時に依頼者への事前説明と合意が必要
- 合意がなければ通常の上限のまま