プロローグ
うちの妹、ほんとに不思議な子なんですよ!
今度は妹か。
長さ30センチくらいの立派なやつで、もうふわっふわで、見ただけで気絶しそうでした。
私と妹で分けようってことになったんですけど、妹が「お姉ちゃん、私ナイフ持ってくるね」って言って、台所から包丁を持ってきて……
横じゃなくて!
普通、ロールケーキって輪切りにするじゃないですか。
なのに妹は「縦に切ったら断面の渦巻きが全部見えてキレイだから」って言って、長い方向にスーッと切って、半分ずつに分けたんです。
確かにキレイだったんですけど、お皿に乗らなくて、二人とも30センチの長い棒みたいなケーキを抱えながら食べる羽目になりました。
妹はドヤ顔で「分け方が違っても価値は変わらない」って言ってました。
私、ちょっと感動しちゃって。
……まあ確かに、一つのもんを二つに分ける時、分け方は色々ある。
それぞれの取り分が同じになるんやったら、どっちでも文句は出んやろな。
「バラバラだと邪魔だから一個にまとめた」って。
私と妹のケーキが、また一本の長いケーキみたいになってました。
そのとき、事務所の入口で軽くノックの音がして、南向壱星が顔を出した。手にはいつものメモ帳と、土地の公図のコピーらしき紙が何枚か握られている。
すみません、今日もまたお邪魔します……
壱星はこむぎちゃんの姿を見ると、ふっと表情がゆるみ、それから慌てて姿勢を正してメモ帳を開いた。
この前は建物の登記の話でしたよね。
今日は何ですか?
表題登記の件、すぐに司法書士さんに繋いで、無事に手続きが進んでます。
今日はその後で出てきた土地の登記の話で、また分からないことがいくつかありまして……
広い土地を持ってて、子どもさんが3人いるから「土地を3つに分けて、それぞれに譲りたい」って相談に来られました。
ただ、その土地、金融機関の抵当権がついてるんです。
「抵当権がついてる土地でも、分けることなんてできるんですか?」って聞かれて、僕、答えに詰まってしまって。
隣り合った2筆の土地を持ってて、「使い勝手が悪いから1筆にまとめたい」って言うんです。
簡単な事務手続きやと思って軽く請け負ったんですけど、調べたら片方の土地に抵当権がついてることが分かって……。
同じ抵当権の話なのに、分けるのと、まとめるのと、なんか扱いが違うんじゃないかって気になって。
分けたり、まとめたりって……
妹が縦に分けて、お父さんが一個にまとめた、あの話と!!
土地でも、分けたりまとめたりするのって、同じことがあるってことですか!?
一つのもんを分けるか、複数のもんをまとめるか。
土地でも建物でも、考え方の根っこは同じや。
前回は建物の登記の一生を見たから、今度は土地や。
これがまた、分筆と合筆でルールが全然違うっちゅう、ひっかけの宝庫みたいなテーマでな。
令和2年12月の宅建試験 問14でも正面から問われとる。
順番に見ていこう。
明日の朝、分筆信吾さんに電話する予定なので、しっかり整理させてください。
今日の事件:令和2年12月 問14
不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- 表題部所有者が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者について相続があったときは、その相続人は、当該表示に関する登記を申請することができる。
- 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地については、分筆の登記をすることができない。
- 区分建物が属する一棟の建物が新築された場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該新築された一棟の建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。
- 登記の申請書の閲覧は、請求人に正当な理由があるときに、その正当な理由があると認められる部分に限り、することができる。
今日のメインは設問2の分筆や。残りの3つは「ついでに整理しとこ」っちゅう形で見ていくで。
推理①:分筆信吾さんと合筆義雄さん——抵当権がついてるとき、分けるのはOKでまとめるのはNG
復習:表示に関する登記と権利に関する登記
不動産登記の世界は大きく2つに分かれとる。
表示に関する登記と権利に関する登記やな。
表題部に記録される。
代表例は表題登記、滅失登記、それから今日の主役の分筆登記と合筆登記や。
申請義務があるもんが多くて、登記原因証明情報は不要。
権利部に記録される。所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記、賃借権設定登記なんかがこっち。
原則として申請義務はない。
前回、表題登記が建物の出生届、滅失登記が建物の死亡届だって話でしたよね。
今日の分筆・合筆は、土地版の表示登記や。
土地の細胞分裂と細胞融合みたいなもんやな。
分筆信吾さんのケース——一筆を三筆に分ける
分筆信吾さんは広い一筆の土地を持ってて、長男・次男・長女の3人に分けて譲りたい。
これが分筆や。不動産登記法39条で定義されとる。
「一筆」っちゅうのは登記上の単位で、地番が一つ振られた一つの土地のこと。
例えば「○○町1丁目1番」を「1番1」「1番2」「1番3」みたいに分けるんが分筆や。
これは表示に関する登記やから、表題部所有者か所有権の登記名義人が申請する。
申請義務はないけど、土地を分けたい時にはやらんと売買や相続の単位として扱えへん。
問題は抵当権——分筆信吾さんの不安
銀行に「うちが担保にとってる土地を勝手に分けるな!」って怒られそうじゃないですか?
これが今日の最重要ポイントの一つや。
銀行の承諾もいらない?
なんでかっちゅうと、こういう仕組みになっとるからや。
分筆信吾さんの土地――仮に「1番」の一筆や――に銀行の抵当権が登記されとる。
これを「1番1」「1番2」「1番3」の三筆に分けたとする。
分筆後の登記簿には、3つの土地それぞれに同じ抵当権が転写されるんや。
これを共同担保と呼ぶ。
銀行から見たら、担保の対象が分かれただけで、価値は変わらん。
土地を物理的に切り分けても、抵当権の効力はそのまま3筆全部に及ぶ。
せやから銀行も困らんし、抵当権者の権利も守られる。
縦に切っても横に切っても、味も量も変わらない。
分け方は違うけど、価値は同じ!
分け方が違っても、権利関係の総量は変わらんっちゅうことや。
該当する例(分筆ができるケース): 抵当権が登記されている土地でも分筆できる。地上権・地役権・賃借権など、所有権以外の権利が登記されていても分筆は可能。分筆後の各土地に共同担保として権利が転写される。
該当しない例: 「抵当権がついている土地は分筆できない」「銀行の承諾がなければ分筆できない」は誤り。分筆そのものに権利者の承諾要件はない(地役権の場合は地役権者の証明情報添付の特則があるが、分筆自体は可能)。
合筆義雄さんのケース——2筆を1筆にまとめる
こっちは逆の話。合筆は二筆以上の土地を一筆にまとめる登記や。
不動産登記法39条にこれも定義されとる。
建物を建てる時に1筆になっとった方が使い勝手がええし、管理もシンプルになる。普通に考えたら問題なさそうに見えるな。
隣り合ってて、所有者も同じ合筆義雄さん。
なのに、調べたら片方の「2番」の土地に抵当権がついてて、「3番」にはついてない。
これがどうも問題らしくて……
ここで不動産登記法41条を見てみるで。
不動産登記法41条(合筆の登記の制限) 次に掲げる合筆の登記は、することができない。 一 相互に接続していない土地の合筆の登記 二 地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆の登記 三 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記 四 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記 五 所有権の登記がある土地と所有権の登記がない土地との合筆の登記 六 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆の登記(一定の例外あり)
これは試験に頻出やから、しっかり覚えなあかん。
合筆義雄さんが引っかかっとるのは6号や。
「所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆の登記」はできへん。
抵当権、これがまさに「所有権以外の権利」やな。
分筆はOKだったのに。
合筆ができない理由——一物一権主義の壁
仮に「2番(抵当権あり)」と「3番(抵当権なし)」を合筆して「新2番」にしたとする。
そうすると、新2番の一部にだけ抵当権が及ぶっちゅう、おかしな状態が生まれる。
「一つの物には一つの所有権、一つの抵当権」っちゅう考え方や。
一筆の土地の一部分にだけ抵当権が及んで、もう一部分には及ばへん、そんな半端な権利は認められへん。
土地は一物一権の世界やから、合筆して一筆になった以上、その一筆全体に統一された権利関係が成立せなあかん。
勝手に「3番」まで抵当権の対象を広げるわけにいかん。
逆に、抵当権者の意思を無視して「2番」の抵当権を消すわけにもいかん。
せやから、合筆を認めると登記簿上も実体上も収拾がつかなくなる。
だから法律で最初から合筆を禁止しとるんや。[/st-kaiwa6] [st-kaiwa6 r]なるほど!
分筆は3つに分かれても、全部に共同担保として権利が及ぶから矛盾がない。
でも合筆は、片方にしか権利がないものをくっつけたら、新しい一筆の中で権利関係がガタガタになる。[/st-kaiwa6] [st-kaiwa3 r]そういうこっちゃ。
分筆は権利を増やしてきれいに分配する方向、合筆は権利関係をぐちゃぐちゃに混ぜる方向。
せやから分筆はOKで合筆はNGっちゅう違いが生まれる。
これが令和2年12月問14 設問2の最大のひっかけになっとる。
問題文をもう一回見てみよか。
令和2年12月 問14 設問2 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地については、分筆の登記をすることができない。
「分筆の登記をすることができない」って書いてあるけど、これは間違い。
できないのは合筆の方や。
問題作成者は、分筆と合筆を入れ替えて出題することで、受験生が混乱するんを狙っとる。
せやけど構造を理解しとけば見破れる。
分筆は分けても権利関係が壊れへんから自由にできる。
合筆はまとめると権利関係が壊れるから制限がある。
この一文を腹に入れとけ。
合筆ができない6パターンを整理
試験では6号以外もよう聞かれる。
| 合筆ができないケース(不動産登記法41条) | 理由 |
|---|---|
| 1号 相互に接続していない土地 | 物理的に離れた土地を一筆にできるわけがない |
| 2号 地目または地番区域が相互に異なる土地 | 田と宅地、別の区域をまとめると性質が混在する |
| 3号 表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる土地 | 所有者が違うものをまとめたら誰のものか分からない |
| 4号 表題部所有者または所有権の登記名義人の持分が相互に異なる土地 | 共有持分が違う土地をまとめると持分が計算できない |
| 5号 所有権の登記がある土地と所有権の登記がない土地との合筆 | 登記の有無が混在する |
| 6号 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地 | 一物一権主義に反する(一定の例外あり) |
せやけど試験対策としては、まず「抵当権が片方だけにある→合筆できない」っちゅう原則を押さえとけば十分や。
実務的には抵当権の追加設定で「同一債権を担保する合同抵当」にしてもらえば合筆できる場合もある。
司法書士さんと相談しながら進めるんがええやろう。
該当する例(合筆ができないケース): 抵当権が登記されている土地と登記されていない土地の合筆は不可。所有者が違う土地、地目が違う土地、接続していない土地の合筆も不可。
該当しない例: 「抵当権がついていれば合筆もできない」は半分正しいが、「分筆もできない」は誤り。分筆と合筆を混同させないこと。
推理②:地目春彦さんの遺された土地と、申請書をのぞき見たがる人——設問1と設問4のついでの整理
令和2年12月問14の設問1と設問4も見ておくで。
これも壱星くんに関係しそうな話やからな。
設問1:地目春彦さんが遺した土地——一般承継人による表示登記の申請
例えば地目 春彦(ちもく はるひこ)さんっちゅう人が、自分の広い土地を分筆して子どもらに譲ろうとしてた。
図面も準備して、いよいよ来週分筆登記を申請しよかっちゅう矢先に、急病で亡くなってしもた。
土地はまだ春彦さん名義のまま、分筆登記もされてへん。
残されたんは奥さんと息子さん。
さて、息子さんは分筆登記を申請できるやろうか?
普通に考えたら、まず相続して自分名義にしてから登記しないと駄目な気がしますけど……
不動産登記法30条 表題部所有者又は所有権の登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表題部所有者又は登記名義人が申請人となることができる表示に関する登記を申請することができる。
表題部所有者や所有権の登記名義人が、表示に関する登記を申請する権利を持っとった。
せやけど、申請する前に亡くなってしもた。
この場合、相続人や合併存続会社などの一般承継人が、被相続人がやるはずやった表示登記をそのまま申請できるっちゅうことや。
所有権移転登記を経由せんでもええ。
これが大事なポイントや。
表示登記は不動産の物理的現況を公示するもんやから、誰の名義でやろうと早く現況に合わせることが優先される。
せやから一般承継人による申請を認めとる。
令和2年12月 問14 設問1 表題部所有者が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者について相続があったときは、その相続人は、当該表示に関する登記を申請することができる。
この設問は正しい。
地目春彦さんの息子さんも、お父さん名義のまま分筆登記を申請できる。
これは表題部所有者だけやなくて、所有権の登記名義人にも当てはまる規定や。
該当する例: 表題部所有者が表示登記を申請する前に亡くなった場合、相続人が被相続人名義のまま表示登記(分筆・合筆・表題登記など)を申請できる。法人の合併でも同じ。
該当しない例: 「相続人は、まず相続による所有権移転登記をしないと表示登記を申請できない」は誤り。表示登記は所有権移転登記を経由せずに一般承継人が申請できる。
設問4:登記簿の附属書類は誰でも見られる?——閲覧制限の話
これも実務でちょいちょい聞かれる話や。
「他人の土地の登記の申請書、自由に見せてもらえるんですか?」っちゅう質問を、壱星くんも受けたことあるんちゃうか。
この前、ある方が「隣の土地を誰が買ったのか申請書を見れば分かるから、登記所で見せてもらう」って言ってたんですけど、そんなに自由に見られるのか不安で……
不動産登記法121条を見るで。
不動産登記法121条(趣旨) 2項 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類(電磁的記録を含む)のうち政令で定める図面の閲覧を請求することができる。 3項 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、前項に規定する図面以外のものについて、自己が利害関係を有する部分(自己を申請人とする登記記録に係るものその他の正当な理由があると認められる部分に限る)について閲覧を請求することができる。
具体的には土地所在図・地積測量図・地役権図面・建物図面・各階平面図の5種類や。
これは誰でも自由に閲覧請求できる。
手数料さえ払えば、理由を問われへん。
代表が登記の申請書や。
これは正当な理由があると認められる部分に限り閲覧できる。
プライバシーや個人情報の保護があるから、無条件に誰でも見られるわけやない。
「隣の土地のことが気になるから」程度の理由では正当な理由とは認められん。
隣地との境界紛争で当事者になっとる、相続人で関係者やった、共有者やった、みたいに、その人にとって閲覧する具体的な利害関係が必要や。
令和2年12月 問14 設問4 登記の申請書の閲覧は、請求人に正当な理由があるときに、その正当な理由があると認められる部分に限り、することができる。
この設問は正しい。
「申請書」は図面5種類以外の附属書類やから、正当な理由要件がかかる。
該当する例: 土地所在図・地積測量図・地役権図面・建物図面・各階平面図は誰でも閲覧できる。申請書は、自分が当事者である登記や、境界紛争で関係者である等の正当な理由がある場合に、その理由のある部分に限り閲覧できる。
該当しない例: 「申請書は手数料さえ払えば誰でも見られる」は誤り。「図面も正当な理由がないと見られない」も誤り。図面5種類は誰でも、申請書は正当な理由ありの限度で、という区別。
推理③:マンションの表題登記は一括で——設問3と第50話のつなぎ
これは前回の第50話で扱ったマンションの話の続きやから、簡単に押さえとこ。
区分建物の表題登記は「一括申請」
区分建物の保存登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も申請できる、っていう74条2項の特則を勉強しました。
せやけど、それは所有権保存登記の話やった。
今日の設問3は表題登記の話や。
条文も論点も別物やから注意やで。
不動産登記法48条1項 区分建物が属する一棟の建物が新築された場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該一棟の建物に属する他の区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。
一括申請方式と呼ぶ。
一部屋ずつバラバラに申請したらダメなんですか?
一棟全体の表題登記もせえへんと、どの建物の中の話かも分からん。
せやから一棟と全部屋を同時に登記しなさいっちゅう仕組みになっとる。
令和2年12月 問14 設問3 区分建物が属する一棟の建物が新築された場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該新築された一棟の建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。
この設問は正しい。
第50話の74条2項との区別
前回勉強した74条2項と、今回の48条1項は、どっちも「区分建物」の話で似てるんですけど、整理するとどう違うんでしょうか?
並べるで。
| 区分建物の特則 | 不動産登記法48条1項 | 不動産登記法74条2項 |
|---|---|---|
| 何の登記? | 表題登記 | 所有権保存登記 |
| 性質 | 表示に関する登記 | 権利に関する登記 |
| 内容 | 一棟と各区分建物の表題登記を一括申請しなければならない | 表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できる |
| 趣旨 | 登記簿の整合性を保つ義務 | 中間省略を認める権利の選択肢 |
| 義務/任意 | 義務(しなければならない) | 任意(申請することができる) |
性格も論点も別物。
試験ではこの2つを混同させる出題が出やすいから、しっかり区別しとくんやで。
前回の専有由香さんは74条2項、今回の話は48条1項。
条文番号と登記の種類で覚えます。
該当する例: マンションを新築したら、一棟の建物の表題登記と各専有部分の表題登記を併せて申請する義務がある。
該当しない例: 「区分建物の表題登記は一部屋ずつ別々に申請できる」は誤り。「48条1項は74条2項と同じ内容」も誤り。
事件の結論
今日の話を令和2年12月問14の4つの設問で整理する。
表題部所有者または所有権の登記名義人について相続その他の一般承継があった場合、相続人等は被相続人がすべきだった表示登記を申請できる(不動産登記法30条)。
正しい。
所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地であっても、分筆の登記はできる。分筆では権利が共同担保として転写されるだけで、権利関係に矛盾は生じへん。
できないのは合筆の方(不動産登記法41条6号)。
問題文は分筆と合筆を入れ替えとる。
この設問は誤りや。
区分建物の表題登記は一棟の建物の表題登記と併せて申請しなければならない(不動産登記法48条1項)。
正しい。
図面5種類以外の附属書類(申請書など)は、正当な理由があると認められる部分に限り閲覧できる(不動産登記法121条3項)。
正しい。
分筆信吾さんには明日朝一で「抵当権がついてても分筆はできます。分筆後は共同担保として3筆に転写されますから、銀行とのトラブルもありません」と説明します。
合筆義雄さんには「片方の土地に抵当権がついてるので、このままでは合筆できません。抵当権を抹消するか、もう一方の土地にも同じ抵当権を追加設定してもらって合同抵当にするか、銀行と相談しましょう」と説明します。
「分筆はできるけど合筆はできない」――この一文を、明日の説明の冒頭で言うてあげるとお客さんも分かりやすいやろ。
今日もありがとうございました。
……あ、もうこんな時間ですね。
壱星はメモ帳を閉じて、こむぎちゃんに小さく会釈をしてから事務所を出て行った。
偉いです!
登記田は窓の外の夕暮れを見ながら、ふっと小さく息を吐いた。
試験のひっかけメモ
- 分筆と合筆を入れ替えるひっかけ: 「所有権以外の権利の登記がある土地は分筆できない」は誤り。分筆はできる、合筆はできない(不動産登記法41条6号)。分筆では権利が共同担保として転写されるだけで矛盾が生じないが、合筆は一物一権主義に反するため制限される
- 合筆ができない6パターン(不動産登記法41条): ①接続していない、②地目・地番区域が異なる、③所有者が異なる、④持分が異なる、⑤所有権登記の有無が異なる、⑥所有権以外の権利の登記がある(一定の例外あり)
- 一般承継人による表示登記の申請(不動産登記法30条): 表題部所有者・所有権の登記名義人について相続・合併等があった場合、相続人等は被相続人名義のまま表示登記を申請できる。所有権移転登記を経由する必要はない
- 区分建物の表題登記(不動産登記法48条1項)vs 区分建物の所有権保存登記(不動産登記法74条2項): 前者は表示登記で一括申請の義務、後者は権利登記で取得者も申請できる規定。混同に注意
- 登記簿の附属書類の閲覧(不動産登記法121条): 図面5種類(土地所在図・地積測量図・地役権図面・建物図面・各階平面図)は誰でも閲覧可。申請書など他の附属書類は正当な理由があると認められる部分に限り閲覧可
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
つまり、土地と人間関係は同じってことですよね!
分筆は兄弟ゲンカで土地を3つに分けることで、抵当権は家族の呪いとして全員に等しく受け継がれるんです!
合筆は結婚なので、片方だけ呪いがあると相手の家族に迷惑がかかるからダメなんですね!
一物一権主義は一夫一妻制のことで、土地にも貞操観念があるんです!
相続人による表示登記の申請は遺言の代わりで、お父さんが言い残したことを息子が勝手にやっていいよって法律です!
区分建物の表題登記の一括申請はマンション一棟まるごと結婚式で、全戸同時に挙式しないとお赤飯がもらえません!
登記簿の申請書はラブレターなので、正当な理由がないと見られないようにプライバシーが守られています!
うちの妹がロールケーキを縦に切ったのは、つまり分筆の練習だったってことですね!
父が一つにまとめたのは、抵当権がついてないケーキ同士だったから合筆OKだったんです!
冷蔵庫が一物一権主義を守ってくれたんですね!
家族の貞操観念とも結婚式とも関係ないし、ロールケーキはどこまで行ってもロールケーキや!
正確に言うで!!
分筆は一筆の土地を二筆以上に分ける表示登記で、所有権以外の権利の登記があっても分筆できる!
分筆後の各土地に共同担保として権利が転写されるだけやから、権利関係に矛盾は生じへん!
対して合筆は二筆以上を一筆にまとめる表示登記で、不動産登記法41条で6パターンの制限がある!
特に6号で「所有権以外の権利に関する登記がある土地」の合筆はできへん!理由は一物一権主義――一筆の土地の一部分にだけ権利が及ぶ状態は認められへんからや!
それから、表題部所有者や所有権の登記名義人について相続・合併などの一般承継があったときは、相続人等は被相続人名義のまま表示登記を申請できる(不動産登記法30条)!
区分建物の表題登記は一棟と全区分建物を一括申請する義務がある(不動産登記法48条1項)――これは前回の第50話の74条2項の保存登記の特則とは別物や!
登記簿の附属書類のうち土地所在図・地積測量図・地役権図面・建物図面・各階平面図の5種類は誰でも閲覧でき、申請書など他の附属書類は正当な理由があると認められる部分に限り閲覧できる(不動産登記法121条)!
令和2年12月問14は設問2が誤りで正解は2!
今回のまとめ
不動産登記法における分筆と合筆は、どちらも土地の表示に関する登記であり、形は対になっているが、扱いのルールは大きく異なる。分筆は権利関係を分けて転写するだけなので、抵当権など所有権以外の権利の登記があっても自由にできる。一方、合筆は一筆の土地に統一された権利関係が成立しなければならず、一物一権主義の制約から多くの制限がある。第50話で扱った「建物の登記の一生」に続いて、今回は「土地の登記」の主要場面である分筆・合筆を中心に整理した。
①分筆の登記: 一筆の土地を二筆以上に分けて登記すること(表示に関する登記)。所有権以外の権利(抵当権・地上権・賃借権など)が登記されていても分筆できる。分筆後の各土地には共同担保として権利が転写されるため、権利関係に矛盾は生じない。表題部所有者または所有権の登記名義人が申請する。
②合筆の登記: 二筆以上の土地を一筆にまとめる登記(表示に関する登記)。不動産登記法41条で6パターンの制限あり。①接続していない、②地目・地番区域が異なる、③所有者が異なる、④持分が異なる、⑤所有権登記の有無が異なる、⑥所有権以外の権利の登記がある土地の合筆は原則できない。
③分筆と合筆の違いの本質: 一物一権主義(一つの物に一つの権利)。分筆は権利を整理して分配する方向に働くため矛盾を生じないが、合筆は権利関係を混在させる方向に働くため厳しく制限される。
④一般承継人による表示登記の申請(不動産登記法30条): 表題部所有者・所有権の登記名義人に相続・合併等の一般承継があった場合、相続人や合併存続会社は、被相続人名義のまま表示登記を申請できる。所有権移転登記を経由する必要はない。
⑤区分建物の表題登記の一括申請(不動産登記法48条1項): 区分建物が属する一棟の建物が新築された場合、一棟の建物の表題登記と各区分建物の表題登記を併せて申請する義務がある。第50話の所有権保存登記の特則(74条2項)とは別物。
⑥登記簿の附属書類の閲覧(不動産登記法121条): 土地所在図・地積測量図・地役権図面・建物図面・各階平面図の5種類は誰でも閲覧請求できる。申請書など他の附属書類は、正当な理由があると認められる部分に限り閲覧できる。
⑦実務上の鉄則: 抵当権がついた土地を分けたいなら分筆OK。隣接土地をまとめたいが片方に抵当権があるなら、抵当権の抹消か合同抵当への変更を経て合筆へ。表題登記を申請せずに所有者が亡くなったら、相続人が被相続人名義のまま申請できる。マンション新築の表題登記は一棟と全戸まとめて。申請書を見たい時は正当な理由を示せ。
| 分筆 vs 合筆 | 分筆 | 合筆 |
|---|---|---|
| 内容 | 一筆を二筆以上に分ける | 二筆以上を一筆にまとめる |
| 性質 | 表示に関する登記 | 表示に関する登記 |
| 所有権以外の権利の登記がある場合 | 可能(共同担保として転写) | 原則不可(不動産登記法41条6号) |
| 制限の有無 | 特に制限なし | 6パターンの制限あり(41条1〜6号) |
| 法的根拠 | 不動産登記法39条 | 不動産登記法39条・41条 |
| 理屈 | 権利を分配する方向→矛盾なし | 権利を混在させる方向→一物一権主義違反 |
| 合筆ができない6パターン(不動産登記法41条) | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 相互に接続していない土地 |
| 2号 | 地目または地番区域が相互に異なる土地 |
| 3号 | 表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる土地 |
| 4号 | 表題部所有者または所有権の登記名義人の持分が相互に異なる土地 |
| 5号 | 所有権の登記がある土地と所有権の登記がない土地 |
| 6号 | 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(一定の例外あり) |
| 区分建物の表題登記 vs 所有権保存登記 | 48条1項(表題登記) | 74条2項(所有権保存登記) |
|---|---|---|
| 性質 | 表示に関する登記 | 権利に関する登記 |
| 内容 | 一棟と各区分建物を一括申請する義務 | 表題部所有者から所有権を取得した者も申請できる |
| 義務/任意 | 義務 | 任意 |
| 趣旨 | 登記簿の整合性確保 | 中間省略による効率化 |
| 令和2年12月問14 各設問 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設問1(一般承継人による表示登記の申請) | ◯ | 不動産登記法30条 |
| 設問2(所有権以外の権利の登記がある土地の分筆登記) | ❌ | 分筆はできる。合筆との混同を狙ったひっかけ(41条6号) |
| 設問3(区分建物の表題登記の一括申請) | ◯ | 不動産登記法48条1項 |
| 設問4(登記申請書の閲覧制限) | ◯ | 不動産登記法121条3項 |
| 正解:2(誤り) |
| 土地と建物の登記の一生(第50話+第51話の俯瞰) | 段階 | 登記 | 申請義務 |
|---|---|---|---|
| 建物の出生 | 新築 | 表題登記 | あり(1か月以内) |
| 建物の所有者確定 | 完成 | 所有権保存登記 | なし |
| 建物の死亡 | 取り壊し | 滅失登記 | あり(1か月以内) |
| 土地の細胞分裂 | 一筆を複数に | 分筆登記 | なし(権利の制限なし) |
| 土地の細胞融合 | 複数を一筆に | 合筆登記 | なし(41条の制限あり) |
| 区分建物の出生 | マンション新築 | 表題登記(一棟と一括) | あり(一括申請) |
| 区分建物の所有者確定 | 部屋の販売 | 所有権保存登記(取得者も可) | なし |
