プロローグ
うちのベランダ、カラスに乗っ取られたんです!
あと2、3日で食べごろっていう真っ赤に熟れた苺が3つ並んでて、昨日の夜「明日のヨーグルトに乗せよう」って楽しみにしてたんです。
それなのに、今朝起きてベランダ見たら、苺は全部きれいに食べ尽くされて、しかもエアコンの室外機の上にカラスが小枝集めて巣を作りかけてたんです!
もう完全に住み着く気満々で!
街のカラスはたくましいで。
むしろ「お前こそ誰や」って顔してるんです!
うちなのに!
私、家賃ちゃんと払ってるのに!
それなのにカラスに「証拠でもあるんか」みたいな目で見られたんですよ!
もう屈辱で!
せやけど、こむぎちゃんがちゃんと借りて住んどる以上、勝手に来たカラスに文句言うのに証拠書類なんか要らんはずや。
そのとき、事務所の入口で軽く咳払いがして、敷地倫太郎さんが入ってきた。手にはお菓子の箱と、いくつかの書類のコピー。
実は来月から開業届を出して独立予定なんですが、その前に自分名義で投資物件を一つ持っておこうと思いまして。
今、その購入の話を進めてるんですが、ちょっと気になる点が出てきたので相談に来ました。
ついに独立ですか、おめでとうございます!
それで、測量勇さん――
前に第28話で取得時効の件で来られた、画地さんのお知り合いの方です――
その測量さんから「アパート一棟、買い取ってもらえないか」って話が来てまして。
古い木造アパートなんですが、立地が駅近で利回りもいいので、購入することにしたんです。
あの人は時効取得の件があったから、今は登記の重要性が骨身に染みとるはずや。
それで何が問題なん?
一つ目――
そのアパートには現在の入居者が3部屋分いて、賃借人がついたままの状態で買い受ける、いわゆるオーナーチェンジ案件なんです。
二つ目――
敷地のすぐ脇に、誰か知らない人がプレハブ小屋を勝手に建てて住んでて、測量さんが何度言っても出て行かない。
三つ目――
測量さんから手付金は払って契約書も交わしたんですが、所有権移転登記の手続きが遅れてるんです。
司法書士さんが体調を崩してて、来月にずれ込みそうで。
それって、さっきの私のカラスの話と似てません!?
自分の場所のはずなのに、勝手に占領されてるやつに「出ていけ」って言いたい話ですよね!?
それで私がカラスに「証拠でもあるんか」って目で見られたみたいに、敷地さんも「登記がないと言えないんじゃないか」って思ってる、ってことじゃないですか!
スケールはアパートとカラスでえらい違うけど、「権利者なんやから出ていけと言いたい」「家賃を払ってほしい」っちゅう場面で、登記が要るんか要らんのかっちゅう話や。
これは今までやってきた解除・時効・相続の話とセットで覚えとかんと現場で困るとこや。
令和元年宅建試験 問1で正面から問われた論点でもある。
順番に整理していこう。
最初の物件でつまずきたくないので、しっかり確認させてください。
推理①:プレハブ小屋のあの男――不法占拠者は「第三者」に当たらない
アパートはT市の私鉄沿線、駅から徒歩6分の好立地。
築35年の木造2階建て、全6戸、現在の入居者は3戸。
元の所有者が測量勇(そくりょう いさむ)さん。
買主が敷地倫太郎(しきち りんたろう)さんや。
せやけど所有権移転登記はまだ完了しとらん。
司法書士さんの都合で来月になる。
陸内陽太(りくない ようた)っちゅう男や。
誰の許可も得ず、敷地の角の空きスペースに勝手にプレハブ小屋を建てて、寝起きしとる。
要するに何の権原もない不法占拠者や。
測量さんも「前から困ってたが、年取ったから手が回らなくて」って言ってまして。
でも敷地さんはまだ所有権移転登記してないんですよね?
登記してないと「所有者なんやから出て行け」って言えないんじゃないですか?
普通は登記が要る、でも要らない場面がある。
これが今日のテーマや。
民法177条の「第三者」とは何者か
民法177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
せやけど、判例はずっと前から、ここで言う「第三者」を限定的に解釈してきた。
明治41年の大審院連合部判決――大判明41.12.15――では、こう判示しとる。
買主の敷地さんが登記をまだ備えてへん。
そこで誰かが「敷地さんは登記してへんから、所有権を主張する資格がない」と文句をつけたとする。
このとき、その文句を言える立場にあるんは、自分自身もこの土地について何らかのまっとうな権利や利害を持っとる人だけや。
たとえば「実は俺もこの土地を測量さんから買って登記した」とか「俺はこの土地に抵当権を持っとる」とか、そういう立場の人やな。
不法占拠者は正当な利益を有さない
陸内は何や?――
何の権原もなく他人の土地を占領しとる、ただの居座りや。
陸内が敷地さんに対して「あんたの登記がないやろ」と言うのは、自分の不法占拠を続けるための言いがかりにすぎん。
陸内には登記の欠缺(けんけつ)を主張する正当な利益なんかあらへん。
不法占拠者は177条の第三者に当たらない――
せやから所有者は登記がなくても明渡しを請求できる。
ただし、注意点が一つ。
敷地さんが所有者であることを証明する必要はある。
売買契約書、手付領収書、測量さんが「売りました」と認める書面――
こういうもんで「自分が所有者や」と立証できれば、登記がなくても陸内には勝てる。
令和元年 問1 肢1 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。
Aが測量さん、Bが敷地さん、Cが陸内に当たる。
問題文は「Bは登記を備えなければ明渡請求できない」と言うとるが、判例の結論は逆や。
Bは登記がなくてもCに対して明渡しを請求できる(最判昭25.12.19)。
せやからこの肢は誤りや。
陸内については、登記の前でも明渡し請求の準備を進めて構わない、ということですね。
ただし実際の明渡訴訟は時間も金もかかる。
司法書士さんの登記が来月終わるなら、それを待ってから動いた方が立証も楽になる場合は多い。
「できる」と「急ぐべき」は別の話や。
ついでに:他の「第三者に当たらない者」も整理しとこ
試験ではこの一覧表が頭に入ってると鬼に金棒や。
何の権原もなく占有する者。
同様に、登記なき所有者の不動産を不法に毀損した者(不法行為者)も177条の第三者に当たらない(最判昭25.4.27ほか)。
せやから所有者は登記なくして損害賠償を請求できる。
たとえば虚偽表示で登記を取得した者――前に第22話の仮登修さんと仮登陸さん親子がやってたパターン――は無権利者や。
無権利者から登記を譲り受けた者も同じく無権利者にすぎへん。
単なる悪意者は177条の第三者に当たるが、信義則に反する積極的な害意を持って動いた背信的悪意者は第三者に当たらん(最判昭43.8.2)。
これも対抗関係そのものが成立せえへんからや。
じゃあもし敷地さんがこのアパートをすぐ別の人に売ったら、その人は測量さんに対して登記なくして主張できるってことですか?
A→B→Cと順番に移転した場合、AとCはお互いに「対抗関係」やない。
所有権はA→B→Cと素直に流れていっとるだけで、AとCが同じ権利を取り合っとるわけやないからや。
これが令和元年問1 肢3の構造で、肢3は正しいっちゅう判定や。
試験では深追いせんでええ。
該当する例(第三者に当たらない者): 何の権原もない不法占拠者・不法行為者・無権利者(虚偽表示の名義人や転得者)・背信的悪意者・転々譲渡の前主などに対しては、所有者は登記なくして所有権を主張できる。
該当しない例: 「登記がない買主は誰に対しても所有権を主張できない」は誤り。判例は177条の「第三者」を「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」に限定している(大判明41.12.15)。
推理②:入居者問題――賃貸人の地位移転には登記が必要
アパートの入居者の話や。
アパートの入居者は3名。柱見里穂(はしらみ りほ)さん、間取祥子(まどり しょうこ)さん、桁下達(けたした とおる)さんや。
3人とも、もとの所有者の測量さんと賃貸借契約を結んで、毎月家賃を測量さんの口座に振り込んどる。
引渡しは終わって、鍵も敷地さんに渡されとる。
せやけど所有権移転登記はまだ敷地さん名義になっとらん。
さあ、来月の家賃はどうなる?
それじゃダメなんですか?
順番に整理するで。
ステップ1:賃貸借はそもそも誰に対抗できるんか
柱見さんたち入居者は、もともと測量さんとの賃貸借契約に基づいて住んどる。
敷地さんっちゅう新しい所有者が現れたとき、入居者は敷地さんに「自分はここに住む権利がある」と言えるんか。
物権やない。
せやから「賃貸借契約を結んだ相手」(旧所有者・測量さん)にしか主張できへんはずや。
新しい所有者の敷地さんから「俺は契約しとらんから出て行け」と言われたら、入居者は反論できへん――っちゅうのが、契約法の素直な帰結や。
家賃ちゃんと払って住んどるのに、所有者が変わるたびに追い出されるんやったら、賃借人の生活が不安定すぎる。
それが民法605条と借地借家法や。
民法605条(不動産賃貸借の対抗力) 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。
せやけど現実には、賃借権の登記は賃貸人の協力が要って、賃貸人がふつう協力せえへんから、ほとんど実例がない。
せやから借地借家法31条で対抗要件は備わっとる。
敷地さんは入居者に「出て行け」とは言えへん。
住んでる人を追い出すつもりは最初からないので、その点は問題ないです。
問題は逆向きで、敷地さんから入居者に「家賃を払ってください」と言えるかなんです。
ステップ2:賃貸人の地位はどうやって移転するんか
民法605条の2を見るで。
これは平成29年(債権法)改正で新設された条文で、令和2年4月から施行されとる。
民法605条の2第1項 前条、借地借家法第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
試験用語で賃貸人の地位の当然承継と呼ぶ。
アパートは敷地さんに譲渡された。
賃貸人の地位は、もう敷地さんに移っとるんや。
まあアパートの引渡しを受けとらんなんてことは普通ないけど――
でも、譲渡人と譲受人の合意だけで賃貸人の地位を譲受人に移すことはできる。
これが民法605条の3や。
民法605条の3前段(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転) 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。
なんでかと言うと、賃貸人が誰になっても、賃借人は同じように物件を使い続けられて不利益がないからや。
家賃の振込先が変わるだけや。
ステップ3:では、賃貸人の地位を入居者に主張するには登記が要るんか
賃貸人の地位は敷地さんに移っとる。
せやけど敷地さんが入居者の柱見さん・間取さん・桁下さんに「俺が新しい大家や、家賃は俺の口座に振り込んでくれ」と主張するためには、何が要るか?
民法605条の2第3項 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
これは最判昭49.3.19を明文化したもんや。
民法605条の3でも同じ規律が準用されとるから、合意で地位を移した場合も同じや。
来月の家賃を測量さんに振り込んでも、入居者には何の落ち度もない。
敷地さんが「家賃を寄こせ」と言える立場になるのは、所有権移転登記が完了してからや。
「両方から請求が来たらどうしよう」って。
判例が登記を要求するのも、まさに入居者を二重請求のリスクから守るためや。
「あんたが新しい大家っちゅうんやったら、せめて登記簿で確認させてくれ」っちゅう、入居者側の合理的な要請に応えとるんや。
令和元年 問1 肢2 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。Bが甲土地の所有権移転登記を備えていない場合には、Aから建物所有目的で甲土地を賃借して甲土地上にD名義の登記ある建物を有するDに対して、Bは自らが甲土地の所有者であることを主張することができない。
Dは借地人で、自己名義で建てた建物の登記を備えとる。
借地借家法10条1項で対抗要件あり。
新所有者のBが「俺が新しい大家や」とDに対抗するには、B自身が土地の所有権移転登記を備える必要がある(最判昭49.3.19、現在は民法605条の2第3項)。
せやからこの肢は正しい。
アパートの入居者は引渡しという対抗要件を備えとる。
敷地さんは登記を備えるまで、入居者に賃貸人の地位を主張できへん。
ステップ4:敷金と費用償還債務はどうなる?
民法605条の2第4項や。
民法605条の2第4項 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
費用償還債務(必要費・有益費)も同じや。
アパート売買では、現金で敷金相当額を売主から買主に渡すか、売買代金から差し引くか、どっちかで処理するのが普通や。
手付金の精算と一緒に決済時に整理しとくべきや。
せやから入居者が退去するまで具体的な返還請求はできひんけど、その潜在的な債務は敷地さんが背負うっちゅうことや。
該当する例(賃貸人の地位移転): 入居者が借地借家法31条の引渡しなどで対抗要件を備えとる場合、不動産売買により賃貸人の地位は当然に買主に移転する(民605条の2第1項)。
新賃貸人が賃借人に賃料を請求するには、所有権移転登記が必要(同条3項、最判昭49.3.19)。
敷金返還債務・費用償還債務も新賃貸人に承継される(同条4項)。
該当しない例: 「登記がなくても引渡しを受けてれば家賃請求できる」は誤り。
賃貸人の地位の移転を賃借人に対抗するには所有権移転登記が必要。
「賃借人の承諾がないと賃貸人の地位は移転できない」も誤り。
賃借人の承諾は不要(民605条の3)。
推理③:他にもある「登記なくして対抗」の場面――不法行為と無権利者
今回は出てこんかったけど、現場で出会いやすい類型を二つだけ補足しとくで。
不法行為者への損害賠償請求
これは不法占有を超えて不法行為になる。
敷地さんは不法行為に基づく損害賠償請求ができる。
このときも登記は要らん(最判昭25.4.27の系統)。
理屈は不法占拠者と同じで、不法行為者は177条の正当な利益を有する第三者やないからや。
無権利者から取得した者は何も取得できない
万が一、陸内が「俺がここの所有者や」と偽って、勝手に登記名義を移して、誰かに売却したらどうなるか。
これは前に第22話の仮登修さん親子の事件と同じ構造や。
無権利者から買ったやつも無権利者や。
これは民法94条2項類推適用みたいな救済規定が働かん限り、買った人は所有権を取得できへん。
敷地さんは登記がなくても自分の所有権を主張できる。
無権利者は177条の第三者ではないからや。
「登記が要る場面」と「登記が要らん場面」は、相手が誰かで決まる。
これが177条の核心や。
①陸内には、登記前でも明渡しの内容証明を打つことはできる。
せやけど訴訟まで踏み込むなら登記後の方が立証が楽。
②入居者には、登記が完了してから「賃貸人が変わりました」と通知する。
それまでは家賃は測量さんが受領して、決済時に精算する。
③敷金は決済時に必ず引き継ぐ。
慌てて入居者に「家賃を私の口座に」って通知しなくて本当によかったです。
該当する例: 不法行為者・無権利者は177条の第三者ではないので、所有者は登記なくして請求できる。敷金返還債務は新所有者が承継するので、決済時の精算が実務上必須。
該当しない例: 「登記前は何もできない」は誤り。相手が誰かで要否が変わる。
事件の結論
今日の話を令和元年問1の4つの肢でまとめるで。
不法占拠者は177条の「第三者」に当たらない(最判昭25.12.19)。
所有者は登記なくして明渡しを請求できる。
問題文は「登記が必要」と言うとるから誤りや。
新所有者は所有権移転登記がなければ、賃貸人の地位を賃借人に対抗できない(民法605条の2第3項、最判昭49.3.19)。
正しい。
Cは登記なくしてAに所有権を主張できる。
正しい。
時効取得者は登記なくして主張できる(最判昭41.11.22)。
正しい。
最初の物件で大きなミスをせずに済みそうです。
陸内については登記後に明渡しを進める、入居者へは登記完了通知と一緒に賃貸人変更のお知らせを出す、敷金は決済時に精算する。
3つとも整理できました。
独立おめでとう。
最初に持つ物件は一生覚えとるもんや。
丁寧にやり。
敷地さんはお礼を言って、書類のコピーを大事そうに鞄にしまった。事務所のドアが閉まる音を聞きながら、登記田は窓の外の夕暮れを眺めた。
あの几帳面さやったら、案外うまいこといくかもしれん。
測量さんも画地さん経由でちゃんとした人ですし。
試験のひっかけメモ
- 不法占拠者は177条の「第三者」に当たらない: 登記なくして明渡し・損害賠償を請求できる(最判昭25.12.19)。「登記が必要」は誤り。同じ理屈で不法行為者・無権利者・背信的悪意者・転々譲渡の前主も第三者に当たらない
- 賃貸人の地位は対抗要件具備で当然に新所有者へ移転: 民法605条の2第1項。賃借人の承諾は不要(民605条の3)。「賃借人が承諾しないと地位移転できない」は誤り
- 新賃貸人が賃借人に賃料請求するには所有権移転登記が必要: 民法605条の2第3項。「引渡しを受ければ登記前でも家賃請求できる」は誤り。判例(最判昭49.3.19)の明文化で、賃借人を二重請求から守るため
- 敷金返還債務・費用償還債務は新賃貸人が承継: 民法605条の2第4項。実務上は売買決済時に敷金相当額の精算が必須
- 建物の引渡しは借地借家法31条の対抗要件: 賃借人は引渡しを受けるだけで新所有者に賃借権を主張できる。賃借権登記(民605条)は実務上ほとんど使われない
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
つまり、登記がなくても言いたいことを言える相手をうまく選べばいいってことですよね!
うちのベランダのカラスは何の権原もない不法占拠者なので、私は登記がなくても「出て行け」って言えます!
苺を食べたのは不法行為だから損害賠償も登記不要で請求できます!
しかも巣作りで小枝を集めて運び込んでるのは敷金の差し入れに当たらないので、敷金返還債務も新賃貸人として承継しません!
もしカラスが「俺の方が先にここに住んでた」と言ってきても、カラスは借地借家法31条の引渡しを受けてないので対抗要件なし、私は登記なくして所有権を主張できます!
万が一カラスが私のベランダを別のスズメに又貸ししても、カラスは無権利者なのでスズメも無権利者、登記なくして全員追い出せます!
ベランダの平和は登記なくして守れる!
カラスにはまず民法177条の判例を読ませる必要があります!
そもそもカラスは法人格持っとらんから民法の権利義務の主体ですらない!
スズメに又貸しもせえへんわ!
正確に言うで!!
民法177条の「第三者」は判例上「当事者及びその包括承継人以外の者」かつ「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」に限定される(大判明41.12.15)!
不法占拠者・不法行為者・無権利者・背信的悪意者・転々譲渡の前主はいずれも第三者に当たらず、所有者は登記なくして対抗できる(最判昭25.12.19ほか)!
賃貸人の地位は、賃借人が借地借家法等で対抗要件を備えとる場合、不動産売買により当然に買主に移転する(民605条の2第1項)!
合意で移すなら賃借人の承諾は不要(民605条の3)!せやけど新賃貸人が賃借人に賃料請求するためには所有権移転登記が必要(民605条の2第3項、最判昭49.3.19)!
敷金返還債務・費用償還債務も新賃貸人が承継するから決済時に精算する(民605条の2第4項)!
令和元年問1は肢1が誤りで正解は1!
今回のまとめ
民法177条の「第三者」は、判例上「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」に限定される(大判明41.12.15)。不法占拠者・不法行為者・無権利者・背信的悪意者・転々譲渡の前主などはこれに当たらず、所有者は登記なくして対抗できる。一方、対抗要件を備えた賃借人付き不動産を取得した新所有者は、所有権移転登記を備えなければ賃貸人の地位を賃借人に対抗できず、賃料請求もできない(民法605条の2第3項、最判昭49.3.19)。
①民法177条の「第三者」の限定解釈: 当事者およびその包括承継人以外の者で、かつ登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者に限られる(大判明41.12.15)。
②不法占拠者は第三者に当たらない: 何の権原もない不法占有者には、所有者は登記なくして明渡しを請求できる(最判昭25.12.19)。不法行為者に対する損害賠償も同様。
③無権利者・背信的悪意者・転々譲渡の前主: いずれも177条の第三者に当たらず、所有者は登記なくして対抗できる。
④賃貸人の地位の当然承継: 賃借人が対抗要件を備えた状態で不動産が譲渡されると、賃貸人の地位は譲受人に当然に移転する(民605条の2第1項)。賃借人の承諾は不要(民605条の3)。
⑤新賃貸人の賃料請求には所有権移転登記が必要: 賃貸人の地位の移転を賃借人に対抗するには、新所有者が所有権移転登記を備える必要がある(民605条の2第3項)。賃借人を二重請求から保護する趣旨。
⑥敷金・費用償還債務の承継: 賃貸人の地位移転に伴い、敷金返還債務・費用償還債務も新賃貸人に承継される(民605条の2第4項)。実務上は決済時の敷金精算が必須。
⑦実務上の鉄則: 不法占拠者には登記前でも明渡しを請求できるが、訴訟は登記後の方が立証が楽。賃借人付き物件の購入では、登記完了とともに賃貸人変更通知を出す。それまでの家賃は売主が受領し、決済時に精算する。
| 相手方 | 登記の要否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 不法占拠者・不法行為者 | 不要 | 最判昭25.12.19、最判昭25.4.27 |
| 無権利者・無権利者からの譲受人 | 不要 | 民177条の「第三者」に該当しない |
| 背信的悪意者 | 不要 | 最判昭43.8.2 |
| 転々譲渡の前主(A→B→CのAとC) | 不要 | 対抗関係に立たない |
| 二重譲渡の他方の買主 | 必要 | 民177条 |
| 対抗要件を備えた賃借人(賃料請求) | 必要 | 民605条の2第3項、最判昭49.3.19 |
| 賃貸人の地位移転の整理 | 内容 |
|---|---|
| 当然承継の場面 | 賃借人が対抗要件を備えた状態での不動産譲渡(民605条の2第1項) |
| 合意による移転の場面 | 譲渡人と譲受人の合意のみで足りる。賃借人の承諾不要(民605条の3) |
| 賃借人への対抗要件 | 譲受人の所有権移転登記(民605条の2第3項) |
| 承継される債務 | 敷金返還債務・費用償還債務(民605条の2第4項) |
| 令和元年問1 各肢 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 肢1(不法占拠者への明渡請求に登記必要) | ❌ | 最判昭25.12.19(登記不要) |
| 肢2(対抗要件ある借地人への所有権主張に登記必要) | ◯ | 民605条の2第3項、最判昭49.3.19 |
| 肢3(転々譲渡の前主への所有権主張に登記不要) | ◯ | 対抗関係不成立 |
| 肢4(時効完成前の第三者への時効主張に登記不要) | ◯ | 最判昭41.11.22 |
| 正解:1(誤り) |