プロローグ
午後の事務所。こむぎちゃんが、大きな鉢を両手で抱えてうれしそうに入ってきた。
ホームセンターで、ミニトマトの鉢植え買っちゃいました。
こむぎちゃん、ベランダ菜園でも始めるんか。
これがですね、苗だけじゃなくて、鉢と、土と、支柱が全部ひとまとめのセットになってたんですよ。
私は苗だけ欲しかったのに。
店員さんに「苗だけ売ってください」って言ったら、「これは栽培スターターセットなので、苗だけはお売りできないんです」って。
鉢も土も支柱も、ぜんぶ苗にくっついてくるんですって。
メインの品に、付属の品がぞろぞろついてくる、っちゅうやつや。
うまく育てたら、夏には真っ赤なトマトがいっぱい実るらしいんです。
鉢を買っただけなのに、トマトまで採れるなんて、お得じゃないですか〜。
まあ、育てばの話やけどな。
そのとき、事務所のドアがノックされた。
今日もよろしくお願いします。
入ってきたのは南向壱星さん。丸山ハウジング不動産部門の若手営業で、宅建の勉強中だ。こむぎちゃんの顔を見ると、表情がふっとほころんだ。
今ちょうど、買ってきたトマトの鉢をベランダに置いてきたとこなんですよ。
育つの楽しみですね。
……あ、いえ、相談のほうもよろしくお願いします。
壱星さんはメモ帳を取り出すと、少し改まった様子で切り出した。
今日の事件:平成27年 問6
うちのお客さんで、借りた土地の上に建っているアパートを、銀行の抵当に入れて融資を受ける方がいるんです。
「抵当に入れたのは建物だけど、もし返せなくて競売になったら、建物の中の畳やエアコン、備え付けの建具はどうなるの? あれも一緒に持っていかれるの?」と。
「返済が滞ったら、銀行はその家賃まで取っていくのか?」って。
抵当権の効力って、いったいどこまで及ぶんでしょうか。
建物本体だけなのか、中の設備や、土地の権利や、家賃まで含むのか。
そこを整理したいんです。
それ、抵当権の中でも「効力の及ぶ範囲」っちゅう、まとまった論点やねん。
ちょうど平成27年の問6に、その中心になる設問があってな。
他の設問もいっぺんに片付けながら、壱星さんの疑問に答えていこか。
【平成27年 問6】抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 賃借地上の建物が抵当権の目的となっているときは、一定の場合を除き、敷地の賃借権にも抵当権の効力が及ぶ。
- 抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をした者は、抵当権消滅請求をすることができる。
- 抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。
- 土地に抵当権が設定された後に抵当地に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を競売することができるが、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる。
建物の抵当権が、土地を使う権利にも及ぶかどうかの話ですよね。
壱星さんのお客さんの「土地の権利はどうなるの?」っていう疑問そのものじゃないですか。
さっきの私のトマトの鉢の話と、なんか似てません?
メインの苗を買ったら、鉢や支柱がぞろぞろついてくるっていう。
建物を抵当に入れたら、いろんなものがくっついてくるのと、同じ構造じゃないですか?
構造はまさにそれや。
「メインの物に抵当権をかけたとき、それに付いてくる物や権利は、どこまで一緒に扱われるか」
——これが今日のテーマや。
そこが今日の隠し味や。
壱星さんの借地アパートを軸に、平成27年問6を順に潰していくで。
推理①:抵当権の効力はどこまで及ぶ?──付加一体物という考え方
まず大原則を押さえる
ほな、その建物にぴったりくっついて一体になっとる物は、抵当権の対象に入ると思うか、入らんと思うか。
建物の一部みたいになってる物なら、建物と一緒に扱われそうな気はします。
条文を見てみよか。
民法370条(抵当権の効力の及ぶ範囲) 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。
抵当権の効力は、抵当不動産そのものだけやのうて、この付加一体物にも及ぶんや。
要するに、建物に「くっついて一体になってる物」ってことですね。
私のミニトマトでいう、セットの鉢や支柱みたいな。
ほんで「効力が及ぶ」っちゅうのは、具体的には——いざ抵当権を実行して競売にかけるとき、その付加一体物も一緒に競売の対象になる、っちゅう意味や。
買い受けた人は、建物と一緒にそれも手に入れる。
付加一体物の中身は3種類
大きく3つや。
②従物(じゅうぶつ)、
③従たる権利。
この3つが付加一体物に含まれる。
逆に、家賃や収穫物みたいな「果実」は、付加一体物には含まれへん。
果実だけは別ルールや。
それぞれ何が違うんでしょうか。
そこを一つずつ、壱星さんの借地アパートに当てはめて見ていこか。
まずは付合物と従物からや。
該当する例: 壱星さんのアパートに付加一体となっている物(雨戸、建具、設備など)→ 抵当権の効力が及び、競売の対象になる
該当しない例: アパートから生じる家賃(果実)→ 付加一体物ではないので、370条の効力は及ばない(別ルールで処理)
推理②:付合物と従物──設定の前後を問わず及ぶ
付合物とは
これは、もとの不動産にくっついて一体化し、独立性を失った物のことや。
もう建物や土地の「一部」になってしもて、引きはがすのが難しい物やな。
土地のほうなら、取り外し困難な庭石や、根を張った立木(立木法の登記がないもの)。
こういうのが付合物や。
もう建物や土地の一部になっちゃってる物ですね。
それは確かに、建物と切り離せないから一緒に扱われるのは納得です。
付合物は、抵当権設定の前についた物でも、後についた物でも、関係なく効力が及ぶ。
もう一体やからな。
従物とは
これは付合物と違うて、独立性はあるけど、主物の役に立つために備え付けられた物のことや。
取り外そうと思えば取り外せる。
でも、あると便利でセットで使うもんやな。
こむぎちゃんのミニトマトでいう「鉢」や「支柱」みたいなもんや。
支柱単体でも使えるけど、苗とセットでこそ意味がある。
「これはスターターセットです」って言われたやつ。
従物については、条文にこうある。
民法87条2項 従物は、主物の処分に従う。
設定の前後を問うか
従物に抵当権の効力が及ぶ時期について、判例と通説を押さえとこ。
たとえば設定後に新しく入れた畳やエアコンにもや。
「付合物・従物は付加一体物として、原則、設定の前後を問わず効力が及ぶ」——これが幹や。
該当する例: 設定後にアパートに据え付けたエアコン(従物)→ 抵当権の効力が及び、競売で建物と一緒に処分される
該当しない例: 入居者が自分で持ち込んで自由に使っている家電(壱星さんの所有物でなく、独立して占有・使用されている物)→ アパートの従物とはいえず、効力は及ばない
推理③:従たる権利──借地上の建物の抵当権は借地権にも及ぶ
設問1の核心
壱星さんのアパートは、借りた土地の上に建っとるんやったな。
土地は地主の壁芯 豊(へきしん ゆたか)さんから借りていて、その借地の上に、お客さんがアパートを所有しているんです。
建物はお客さんのもの、土地は賃借権という形で。
【ケース】借地上のアパートに抵当権
- 壁芯 豊さん:土地の地主(土地賃貸人)
- 躯体 守(くたい まもる)さん:壁芯さんから土地を借り、その上にアパートを所有する人(建物所有者=借地権者・抵当権設定者)
- 銀行:躯体さんのアパート(建物)に抵当権を設定した抵当権者
設問1(再掲):賃借地上の建物が抵当権の目的となっているときは、一定の場合を除き、敷地の賃借権にも抵当権の効力が及ぶ。
銀行が抵当権を実行して、躯体さんのアパートを競売で誰かに売ったとする。
ところが、その建物が建っとる土地を使う権利(借地権)が一緒についてこんかったら、どうなる?
建物だけ買っても、土地を使えなかったら、その建物に住めないし、最悪、地主さんに「土地から出ていけ」って言われちゃいますね。
建物だけポツンとあっても意味ないです。
建物の価値は、その下の土地を使える権利とセットで初めて意味を持つ。
こむぎちゃんのトマトの苗も、鉢や土がなかったら根を張れんのと一緒や。
この借地権のように、主物(建物)に従って扱われる権利を「従たる権利」と呼ぶんや。
従物に準じて、付加一体物の仲間として扱われる。
だから競売で建物を買った人は、建物と一緒に借地権も手に入れて、ちゃんと土地を使い続けられるわけですね。
そうやないと抵当権の意味がのうなってまう。
設問1の「敷地の賃借権にも抵当権の効力が及ぶ」は、正しい。
原則は及ぶけど、例外もありうる、っちゅう含みや。
こういう「原則及ぶ、例外もある」式の表現は、たいてい正しい設問のサインや。
該当する例: 躯体さんの借地アパートに抵当権 → 効力は建物と借地権の両方に及ぶ → 競売の買受人は借地権も取得して土地を使える
該当しない例: 躯体さんが土地も建物も両方所有しているケース(借地でない)→ そもそも借地権が存在しないので、この論点は出てこない
推理④:果実は別扱い──債務不履行の後でなければ及ばない
家賃はどうなるのか
アパートの家賃です。
お客さんは「返済が滞ったら、銀行は家賃まで取っていくのか」と気にしていて。
家賃は、これまでの付合物・従物とは別の扱いになる。
家賃や収穫物のように、物から生み出される収益を「果実(かじつ)」と呼ぶ。
木から採れる作物みたいなんを「天然果実」、家賃や利息みたいにお金で入ってくるんを「法定果実」と呼ぶ。
アパートの家賃は法定果実や。
鉢(主物)や支柱(従物)とは違うて、あくまで「育てて初めて生み出される別もん」やな。
371条の条文
民法371条 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
裏を返すと、躯体さんがちゃんと返済しとる間は、銀行の抵当権は家賃には及ばへん。
抵当権は本来、不動産の「交換価値」だけを把握する担保や。
誰にどう使わせて、いくら家賃をとるかは、所有者である躯体さんの自由。
そこに銀行は口を出さへん。
そこからは、抵当権の効力がその後に生じた家賃にも及ぶ。
銀行は、担保不動産収益執行や物上代位といった手段で、家賃から回収できるようになる。
返済している間は家賃に及ばない。
滞納した後の家賃には及ぶ。
時期で区切られるんですね。
ここが付合物・従物との決定的な違いや。
付合物・従物は「物」やから設定の前後を問わず及ぶ。
けど果実は「不履行の後」になって初めて及ぶ。
この対比が試験で問われる。
該当する例: 躯体さんが返済を滞納した後に発生した家賃 → 371条により抵当権の効力が及ぶ(物上代位等で回収可能)
該当しない例: 躯体さんがきちんと返済している間に発生した家賃 → 抵当権の効力は及ばず、家賃は躯体さんが自由に取得できる
推理⑤:効力範囲を一枚に整理+残りの設問を片付ける
効力の及ぶ範囲・早見表
| 対象 | 具体例 | 効力が及ぶか | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 付合物 | 雨戸、戸扉、取外し困難な庭石、立木 | 及ぶ(設定の前後問わず) | 370条 |
| 従物 | 畳、建具、据付エアコン、石灯籠 | 及ぶ(設定の前後問わず/判例・通説) | 370条・87条・最判昭44.3.28 |
| 従たる権利 | 借地上の建物の敷地賃借権(借地権) | 及ぶ(一定の場合を除く) | 370条(従物に準じる) |
| 果実 | 家賃(法定果実)、収穫物(天然果実) | 不履行の後に生じた分のみ及ぶ | 371条 |
建物の中の付合物・従物(畳・建具・据付設備)は、競売で建物と一緒に持っていかれる。
借地権も建物とセットで買受人に移る。
家賃だけは、返済を滞納した後の分に限って銀行が回収できる——や。
助かりました。
残りの設問(2・3・4)を補足で潰す
これは別の大きな論点に枝分かれする話やから、今日は深入りせんと、結論を押さえるだけにしとこ。
それぞれじっくりやるのは、また相談が持ち込まれたときにな。
設問2(再掲):抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をした者は、抵当権消滅請求をすることができる。
ところが、主債務者・保証人・これらの承継人は、この消滅請求ができへん。
自分が借金を全額返すべき立場やのに、勝手に値踏みして抵当権を消すなんて虫が良すぎるからや。
せやから、設問2の「連帯保証をした者は抵当権消滅請求ができる」は誤り。
これが本問の正解肢や。
保証人はダメ、なのに。
連帯やろうが普通やろうが、保証人は保証人。
消滅請求はできひん。
設問3(再掲):抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。
抵当不動産を買うた第三者が、抵当権者から請求されたときに、その代価を抵当権者に払う。
ほな抵当権はその第三者のために消える。
これは条文通りで正しい。
「誰が言い出すか」が逆になっとる。
このへんは「第三取得者の保護」っちゅうまとまった論点やから、それはまた別の機会にしっかりやろか。
そこは改めて、ですね。
設問4(再掲):土地に抵当権が設定された後に抵当地に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を競売することができるが、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる。
更地に抵当権を設定した後で、その土地に建物が建ったとき——抵当権者は、土地だけやのうて建物もまとめて競売にかけられる。
ただし、優先的に弁済を受けられるのは、あくまで抵当権を設定した土地の代価だけや
。建物は抵当に入っとらんからな。 これも条文通りで正しい。
そっちは奥が深いから、そのうちまた一緒に整理しよか。
今日のところは「更地に抵当権→後で建物→一括競売できる、でも優先権は土地代価だけ」と押さえてくれたらええ。
事件の結論
本問は「誤っているもの」を1つ探す問題や。
借地権は従たる権利として付加一体物に準じ、効力が及ぶ。
連帯保証人も保証人なので消滅請求はできない。
これが正解。
代価弁済の条文通り。
一括競売の条文通り。
抵当権の論点は、こうやってつながってるのがわかってきました。
今日は効力範囲——付合物・従物・従たる権利・果実——をしっかり押さえたから、残りはそれぞれの回でな。
壱星さんはメモを取り終えると、丁寧に礼を言って事務所を出て行った。ドアが閉まると、こむぎちゃんが淹れたお茶のおかわりをもらおうと、もう一度顔を出しかけて、やめておいた。
試験のひっかけメモ
- 付加一体物=付合物・従物・従たる権利:この3つは抵当権の効力が及び、競売の対象になる。「果実」は付加一体物に含まれないので、ここで一緒に並べてきたら要注意
- 付合物・従物は設定の前後を問わない:設定後に備え付けた畳やエアコン(従物)にも効力が及ぶ(判例・通説)。「設定時に存在した物に限る」という限定は誤り
- 借地上の建物の抵当権は借地権にも及ぶ:従たる権利として、一定の場合を除き効力が及ぶ。買受人は建物とともに借地権を取得する
- 果実は「不履行の後」に生じた分のみ:返済中は家賃に及ばず、滞納(債務不履行)後に生じた家賃に及ぶ。天然果実・法定果実の双方が対象。「設定時から家賃に及ぶ」は誤り
- 保証人は抵当権消滅請求できない:連帯保証人も保証人なのでできない。「連帯保証人ならできる」は典型的なひっかけ。代価弁済(抵当権者からの請求に応じる)とは制度が別物
- 一括競売の優先権は土地代価のみ:建物も一緒に競売できるが、優先弁済は抵当を設定した土地の代価に限られる
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
今日の教訓は—— ミニトマトの鉢を買ったら、鉢も土も支柱も、ぜんぶ抵当権で持っていかれる! ってことですよね!
だから私、あの鉢植えは銀行に内緒にしておこうと思います。
あと、これから実るトマトは「果実」だから、私が債務不履行するまでは私のもの!
来月から、あのカフェの窓際の席を付加一体物として確保する人生を送ります!
もそも付加一体物の話は、抵当不動産に付加して一体になっとる物の話や。
こむぎちゃんの鉢は誰の借金の担保にもなっとらん!
あとカフェの席は付加一体物ちゃう!
ただの早い者勝ちや!
正確に言うで!!
抵当権の効力は、抵当不動産に付加一体となっとる物に及ぶ(370条)!
その中身は付合物・従物・従たる権利の3つや!
付合物と従物は、設定の前後を問わず及ぶ——畳もエアコンも据え付けたらアウトや!
判例は最判昭44.3.28!
借地上の建物の抵当権は、従たる権利として敷地の借地権にも及ぶ(設問1)!
果実は別扱いや!
被担保債権の不履行があった後に生じた果実にだけ及ぶ(371条)!
家賃も収穫物も、滞納してからの話や!
保証人は連帯保証人も含めて抵当権消滅請求はできひん(設問2が誤りで正解)!
そして、こむぎちゃんが育てるトマトは、ただの家庭菜園やから安心して食べなさい!
債務不履行する立場でもなんでもない!
今回のまとめ
抵当権の効力がどこまで及ぶかは、「付加一体物」という考え方を軸に整理できる。抵当権は、抵当不動産そのものだけでなく、それに付加して一体となっている物に及び(民法370条)、それらは抵当権実行の際に競売の対象となる。ただし果実だけは、別の条文(371条)で時期を区切って扱われる。
①効力の及ぶ範囲=付加一体物(370条): 抵当権は、抵当地上の建物を除き、抵当不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。効力が及ぶとは、競売の際に換価(所有権移転)の対象になるという意味である。設定行為に別段の定めがある場合等は及ばない(ただし書)。
②付加一体物の中身は付合物・従物・従たる権利: 付合物(不動産と一体化し独立性を失った物。雨戸・戸扉・取外し困難な庭石・立木など)、従物(独立性はあるが主物の効用を助ける物。畳・建具・据付エアコン・石灯籠など)、従たる権利(借地上の建物における敷地賃借権など)の3つが含まれる。果実は含まれない。
③付合物・従物は設定の前後を問わない: 抵当権設定時に存在した従物に効力が及ぶことは判例(最判昭44.3.28)が認め、設定後に備え付けた従物にも通説上効力が及ぶ。付合物も同様に、設定の前後を問わず効力が及ぶ。
④借地上の建物の抵当権は借地権にも及ぶ: 賃借地上の建物が抵当権の目的であるとき、一定の場合を除き、敷地の賃借権(借地権)にも抵当権の効力が及ぶ。借地権は従たる権利として扱われ、建物の価値は敷地利用権とセットで成り立つため、競売の買受人は建物とともに借地権を取得する。
⑤果実は債務不履行後に及ぶ(371条): 抵当権は、被担保債権について不履行があったとき、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。不履行前は果実に及ばない。天然果実・法定果実の双方が対象であり、法定果実(賃料)への効力は、担保不動産収益執行や物上代位によって実現される。
⑥抵当権消滅請求は保証人にはできない: 抵当不動産の主債務者・保証人・これらの承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。連帯保証人も保証人であるため、これに含まれる。一方、第三取得者は、抵当権者の請求に応じて代価を弁済する代価弁済(378条)により抵当権を消滅させることができる。
⑦一括競売の優先権は土地代価のみ: 更地に抵当権が設定された後に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を一括競売できるが、優先弁済を受けられるのは抵当を設定した土地の代価に限られる。
| 平成27年問6・正誤判定 | 設問 | 正誤 | 判定の根拠 |
|---|---|---|---|
| 設問1 | 借地上の建物の抵当権は敷地賃借権にも及ぶ | 正しい | 借地権は従たる権利として付加一体物に準じる |
| 設問2 | 連帯保証人は抵当権消滅請求ができる | 誤り | 連帯保証人も保証人であり消滅請求はできない |
| 設問3 | 第三取得者の代価弁済で抵当権が消滅 | 正しい | 代価弁済の条文通り(378条) |
| 設問4 | 一括競売の優先権は土地代価のみ | 正しい | 一括競売の条文通り(389条) |
| 正解 | 「誤っているもの」は設問2 | — | — |
| 抵当権の効力が及ぶ範囲 | 具体例 | 効力 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 付合物 | 雨戸、戸扉、取外し困難な庭石、立木 | 及ぶ(設定前後問わず) | 370条 |
| 従物 | 畳、建具、据付エアコン、石灯籠 | 及ぶ(設定前後問わず) | 370条・87条・最判昭44.3.28 |
| 従たる権利 | 借地上建物の敷地賃借権 | 及ぶ(一定の場合を除く) | 370条(従物に準じる) |
| 果実 | 家賃(法定果実)、収穫物(天然果実) | 不履行後に生じた分のみ及ぶ | 371条 |
| 似た制度の対比 | 抵当権消滅請求 | 代価弁済 |
|---|---|---|
| 言い出す人 | 第三取得者の側から | 抵当権者からの請求に応じて |
| できる人・できない人 | 主債務者・保証人・承継人はできない | 抵当不動産を買い受けた第三者ができる |
| 効果 | 抵当権が消滅 | 抵当権がその第三者のために消滅 |
| 根拠 | 379条・380条ほか | 378条 |
