プロローグ
午後の事務所。こむぎちゃんが、雑誌を片手にうきうきと入ってきた。
来月、駅前に新しいカフェがオープンするんですって!
サブスク制のカフェで、月3,000円で月に10杯までコーヒーが飲めるんですよ!
だって、毎日通っても10杯までしか飲めないし、月の終わりに「あ、あと2杯残ってる!」って慌てて飲みに行くのもなんか違うじゃないですか。
サブスクの権利を友達に又貸ししたらどうなるんだろうって!
私が月3,000円払って、使い切れない分を友達のさくらちゃんに「1杯500円で売るね」って言って、私が代わりに注文してあげるんです。
そしたら残った権利を有効活用できるし、ちょっとお小遣いも稼げて一石二鳥じゃないですか?
そのカフェの利用規約、ちゃんと読んだか?
たぶん「会員本人のみ利用可」って書いてあると思うで。
契約の上の権利を勝手に第三者に転売することはできへんのが普通や。
契約には「誰と誰の間の権利か」っちゅう枠があってな。
それを勝手に飛び越えると、契約違反になることがある。
私とさくらちゃんの間の話なのに。
カフェの店主からしたら、自分が契約した相手以外がコーヒーを飲みに来るのは想定外やからな。
そのとき、事務所のドアがコンコンとノックされた。
先日はありがとうございました。
今日もご相談に伺いました。
入ってきたのは南向壱星。前回に続いて、抵当株真司さんの担当案件で訪れたようだ。こむぎちゃんを見つけて、表情がふっと和らいだ。
今日はアイスコーヒー淹れますね。
あ、サブスクじゃないですよ、ちゃんと淹れたやつです。
こむぎちゃんが、サブスクの権利を又貸ししたいっちゅう話をしてただけや。
壱星はメモ帳を取り出してソファに腰を下ろした。
今日の事件:平成24年 問7
今度は別の事情が出てきまして。
3年間、地方の支店勤務になるそうで。
ご家族も一緒に引っ越されるんですが、住宅ローンの返済中ですし、せっかく購入した自宅を売るのはもったいない。
そこで、3年間は他人に賃貸して家賃収入で住宅ローンを返済したい、というご相談なんです。
ローンの返済原資にしたいんですけど、銀行に差し押さえられたら困るんですよね……
過去問でも平成24年問7に物上代位の問題があるんですが、選択肢が複雑で頭が整理できてないんです。
ほな、その平成24年問7を一緒に潰しながら、抵当株さんの相談にも答えていこか。
【平成24年 問7】物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象とする目的物について、その払渡し又は引渡しの前に差し押さえるものとする。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Bの一般債権者が差押えをした場合には、Aは当該賃料債権に物上代位することができない。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Aが当該建物に抵当権を実行していても、当該抵当権が消滅するまでは、Aは当該賃料債権に物上代位することができる。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物が火災によって焼失してしまった場合、Aは、当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について、CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Aは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。
銀行が抵当権を持っとる建物について、家賃とか保険金とか転貸料を追いかけられるかどうかっていう。
「誰の権利が、どこまで他人の取引に及ぶか」っていう感覚で。
そう、物上代位はまさに「他人の取引から発生した金銭に、自分の担保権をどこまで及ぼせるか」っちゅう話や。
サブスクの又貸しの逆方向の問題でもある。
推理①:物上代位の基本——なぜ「差押え」が必要なのか
復習:物上代位性とは
前回も触れたけど、もう一回押さえとこか。
民法372条(留置権等の規定の準用) 第296条、第304条、第351条及び第350条において準用する第288条、第296条……の規定は、抵当権について準用する。
民法304条1項(物上代位) 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
せやから、抵当権者も物上代位できる、っちゅうことや。
抵当株さんのケースで整理
【現状】抵当株さんの自宅と銀行
- 抵当株さんの自宅に銀行の抵当権設定登記がある
- 抵当株さんは2,500万円のうち、まだ返済中
【転勤後の予定】
- 3年間、自宅を他人(仮に入居 太郎さんとしよか)に賃貸する
- 家賃収入は月12万円
- 抵当株さんは入居さんから家賃を受け取って、住宅ローンの返済に充てたい
抵当不動産を賃貸した場合、その賃料債権に対して抵当権の効力が及ぶ(民法372条による民法304条の準用)。
つまり、銀行は抵当株さんが入居さんからもらう家賃を差し押さえることができる。
家賃で返済しようと思ってたのに、銀行に差し押さえられたら何のために貸したのか。
「銀行が物上代位できる」っちゅうことと、「実際に物上代位する」っちゅうことは別や。
銀行が物上代位を実行するのは、たいてい債務者が住宅ローンを滞納したときや。
抵当株さんが普通に返済を続けとる間は、銀行は物上代位を実行する動機がない。
なぜ「差押え」が必要なのか
民法304条1項のただし書——「払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」。
これが物上代位の最大のポイントや。
理由は2つや。
| 差押えが必要な理由 | 内容 |
|---|---|
| ①第三債務者の保護 | 第三債務者(例:入居さん)が「誰に払えばええか」混乱せんように、差押えで権利者を明確にする |
| ②第三者の保護 | 抵当不動産の賃料が第三者に譲渡されたり差し押さえられたりした場合、優劣を判断する基準が必要 |
「抵当権者が物上代位できる」っちゅう抽象的な話だけやと、誰が優先するかわからん。
せやから、差押えっちゅう公の手続きで「私が物上代位を行使します」と宣言する必要があるんや。
抵当株さんが家賃を受け取ってしもうたら、もう物上代位はできへん。
「払渡し前」っちゅう時期的な制限が、物上代位の生命線や。
該当する例: 抵当株さんが家賃を受け取る前に、銀行が賃料債権を差し押さえる → 物上代位成立(民法304条1項本文)
該当しない例: 抵当株さんが入居さんから家賃を受け取った後 → もう物上代位はできない(民法304条1項但書)
推理②:賃料債権と一般債権者——「差押えの先後」の決定的論点
平成24年問7・設問1の検討
設問1: Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Bの一般債権者が差押えをした場合には、Aは当該賃料債権に物上代位することができない。
【ケース】抵当株さんに別の借金もあった場合
- 抵当株さんの自宅:銀行の抵当権設定登記あり
- 抵当株さんは入居さんに自宅を賃貸して、月12万円の家賃債権を持つ
- 抵当株さんには消費者金融からの借金もあり、消費者金融(一般債権者)が抵当株さんの家賃債権を差し押さえた
これが「抵当権者(物上代位)と一般債権者(差押え)の競合」っちゅう論点や。
判例の立場——「対抗関係」として処理する
具体的には——
- 抵当権者の公示時点:抵当権設定登記の時
- 一般債権者の公示時点:差押命令が第三債務者に送達された時
| 時系列 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年4月 | 銀行が抵当株さんの自宅に抵当権設定登記を完了 |
| 2026年3月 | 抵当株さんが入居さんに賃貸開始(賃料債権発生) |
| 2026年5月 | 消費者金融が賃料債権について差押命令を入居さんに送達 |
| 2026年5月 | 銀行が物上代位で賃料債権を差し押さえ |
せやから、銀行が優先する。
銀行は賃料債権に物上代位できる。
設問1の正誤判定
設問1:「Bの一般債権者が差押えをした場合には、Aは当該賃料債権に物上代位することができない」
一般債権者が差押えをしただけでは、抵当権者が物上代位できなくなるわけやない。
抵当権設定登記と差押命令送達の先後で決まる。
普通は抵当権設定登記の方が先やから、抵当権者(銀行)が物上代位できる。
もし他の借金で家賃を差し押さえられても、銀行の抵当権登記が先ならまだ銀行優先になる、と。
ただし、抵当株さんの場合はローン滞納をしてへん限り銀行が物上代位を実行する動機がないから、現実的には他の債権者が先に差押えてくる可能性の方が高い、っちゅう構造もある。
該当する例: 抵当権設定登記(2023年)→ 一般債権者の差押命令送達(2026年) → 抵当権者が優先、物上代位できる
該当しない例: 一般債権者の差押命令送達(2022年)→ 抵当権設定登記(2023年) → 一般債権者が優先、抵当権者は物上代位できない
推理③:抵当権実行後の賃料への物上代位
平成24年問7・設問2の検討
設問2: Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Aが当該建物に抵当権を実行していても、当該抵当権が消滅するまでは、Aは当該賃料債権に物上代位することができる。
抵当株さんで考えるで。
【ケース】抵当株さんがローン返済を滞納し、銀行が抵当権を実行した場合
- 抵当株さんが住宅ローンの返済を6か月滞納
- 銀行が抵当権を実行(競売手続を開始)
- ただし、競売の手続き中でも、抵当株さんは家を入居さんに貸し続けとる
- 入居さんからの家賃は引き続き発生しとる
判例(最判平17.3.10)は、抵当権が実行されとっても、抵当権が消滅するまでは、賃料債権への物上代位が可能としとる。
抵当権が消滅するまでは、抵当権の効力(物上代位含む)が及び続ける。
競売手続が始まったからといって、抵当権が即座に消えるわけやない。
競売による売却が完了して買受人が代金を納付し、抵当権が消滅して初めて、物上代位の権利も終わる。
銀行からすると、競売で建物を売って債権を回収する一方で、競売が完了するまでの間に発生する賃料も追いかけられる、ということですね。
銀行の取りっぱぐれを防ぐ仕組みやな。
設問2の正誤判定
抵当権実行中でも、抵当権が消滅するまでは賃料への物上代位ができる。
該当する例: 銀行が抵当権実行(競売開始)→ 競売完了前 → 賃料への物上代位可能
該当しない例: 競売完了で抵当権が消滅した後 → もう物上代位はできない
推理④:火災保険金請求権への物上代位
平成24年問7・設問3の検討
設問3: Aの抵当権設定登記があるB所有の建物が火災によって焼失してしまった場合、Aは、当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。
抵当株さんで言い換えるで。
【ケース】抵当株さんの賃貸中の自宅が火事で焼失
- 抵当株さんは火災保険に加入していた
- 自宅が火事で全焼
- 保険会社から抵当株さんに火災保険金請求権が発生
- 銀行はこの火災保険金請求権に物上代位できるか
民法304条1項に「滅失」も明記されとる。
建物が火災で滅失すれば、それは「滅失によって債務者が受けるべき金銭」に該当する。
銀行は火災保険金請求権を差し押さえて、保険金から優先弁済を受けられる。
受け取った後では物上代位できへん。
設問3の正誤判定
建物の滅失で発生する火災保険金請求権への物上代位は、判例・実務でも認められとる。
該当する例: 抵当不動産が火災で焼失 → 保険金請求権発生 → 払渡し前に銀行が差押え → 物上代位成立
該当しない例: 抵当株さんが保険金を受け取って自分の口座に振り込まれた後 → 差押えできず物上代位不可
推理⑤:転貸賃料への物上代位——「設定者の取得すべき金銭か」が鍵
平成24年問7・設問4の検討
設問4: Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について、CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Aは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。
抵当株さんの設定をちょっと変えて考えるで。
【ケース】入居さんが知人に又貸ししていた場合
- 銀行:抵当権者
- 抵当株さん:抵当不動産の所有者、賃貸人
- 入居さん:抵当株さんから建物を借りた賃借人
- 又貸 二郎さん:入居さんから建物をさらに借りた転借人
| 賃料の流れ | 支払う側 | 受け取る側 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 元の賃料 | 入居さん(賃借人) | 抵当株さん(賃貸人=抵当権設定者) | 月12万円 |
| 転貸賃料 | 又貸さん(転借人) | 入居さん(賃借人) | 月14万円(差額が入居さんの利益) |
判例の立場——転貸賃料は「設定者の取得すべき金銭」ではない
理由はシンプルや。
ここでの「債務者」は、抵当権設定者である抵当株さんを指す。
入居さんは賃借人にすぎず、抵当権設定者ではない。
せやから、転貸賃料は「抵当権設定者(抵当株さん)が取得すべき金銭」ではなく、物上代位の対象外、ということになる。
契約の相手じゃない第三者の権利には、原則として手を出せないっていう。
カフェの店主が、こむぎちゃんの友達さくらちゃんに対して直接「コーヒー代を払え」と言われへんのと、構造は同じや。
あくまで契約関係の枠内で権利は動く。
例外:法人格否認や濫用的賃貸借
判例も「原則として」と言うとるな。
- 抵当権設定者と賃借人が実質的に同一と見られる場合(法人格の濫用など)
- 抵当権の効力を潜脱するための濫用的な賃貸借だった場合
ただ、宅建試験で問われとるのは「当然に物上代位することができない」っちゅう原則ルールやから、設問4は正しいっちゅう判定になる。
設問4の正誤判定
転貸賃料は賃借人が取得する金銭であり、抵当権設定者の財産ではないため、原則として物上代位の対象外。
該当する例: 入居さんが又貸さんから受け取る転貸賃料 → 抵当権設定者(抵当株さん)の財産ではない → 銀行は物上代位できない
該当しない例: 入居さんが抵当株さんに払う賃料(本来の賃料) → 抵当株さんが受け取る金銭 → 銀行は物上代位できる
推理⑥:物上代位の対象を一枚に整理
物上代位の対象まとめ
| 対象 | 物上代位の可否 | 根拠・判例 |
|---|---|---|
| 抵当不動産の売却代金 | ○ | 民法304条「売却」 |
| 抵当不動産の賃料 | ○ | 民法304条「賃貸」、民法371条 |
| 火災保険金請求権 | ○ | 民法304条「滅失」 |
| 不法行為による損害賠償請求権 | ○ | 民法304条「損傷」 |
| 転貸賃料 | ✕ (原則) | 設定者の財産ではない(最決平12.4.14) |
物上代位の手続要件まとめ
| 手続要件 | 内容 |
|---|---|
| 時期的制限 | 払渡し又は引渡しの前に差押えが必要(民法304条1項但書) |
| 第三者との競合 | 抵当権設定登記と第三者の公示の先後で優劣決定 |
| 抵当権の存続 | 抵当権が消滅していないこと(消滅すれば物上代位もできない) |
これが物上代位を理解する核や。
「誰の財産から発生したか」を見たら、たいてい答えが出る。
事件の結論
一般債権者と抵当権者の優劣は、抵当権設定登記と差押命令送達の先後で決まる(最判平10.3.26)。
一般債権者が単に差押えをしただけでは、抵当権者の物上代位は妨げられない。
抵当権が消滅するまで物上代位の権利は存続する(最判平17.3.10)。
建物の滅失で発生する保険金請求権は民法304条の対象。
転貸賃料は賃借人の財産であり、抵当権設定者の財産ではないため、原則として物上代位の対象外(最決平12.4.14)。
抵当株さんへの回答
抵当株さんへの回答もまとめさせてください。
ただし、返済が滞れば銀行は家賃債権に物上代位して差押えができる。
これは抵当権の効力の一部であり、賃貸する以上、避けられない構造である。
家賃をローン返済原資に使う計画自体は問題ないが、滞納すれば家賃を含めて回収される可能性があることは認識しておく必要がある——とお伝えします。
ついでに、入居者選びは慎重にっちゅう助言も付け足しとくとええ。
信頼できる借主と契約しとけば、抵当株さんも安心して家賃を受け取って返済できる。
畝井先輩にも今日の内容、共有しておきます。
先輩は「物上代位は実務でも揉める論点やから、しっかり押さえとけ」っていつも仰ってましたので。
今日もアイスコーヒー、美味しかったですか?
こむぎちゃんが淹れてくださると……いつもよりおいしい気がします。
お世辞でも嬉しいです!
壱星はメモ帳をしまうと、こむぎちゃんに丁寧に頭を下げて事務所を出て行った。
明らかにお世辞やないんやけど、こむぎちゃんはお世辞認定したな。
お世辞じゃないってことですか?
壱星さんの想いっちゅう"債権"が発生しても、こむぎちゃんっちゅう"設定者"はまだその金銭を受け取った認識すらない。
払渡し前どころか、債権の存在すら認識してへん状態や。
壱星くん、何か払うんですか?
そのままでええわ……。
試験のひっかけメモ
- 抵当権者vs一般債権者の優劣は「先後」で決まる:抵当権設定登記と差押命令送達(=第三債務者への送達)の時期を比較。「一般債権者が差押えをしたら抵当権者は物上代位できない」というのは完全な誤り
- 抵当権実行中でも賃料への物上代位は可能:抵当権が消滅するまで物上代位の権利は存続する。競売手続中も賃料は追いかけられる
- 保険金請求権への物上代位の手続要件:払渡し前の差押えが必須。設定者が保険金を受け取った後は差押え不可
- 転貸賃料は原則として物上代位の対象外:賃借人の財産であって設定者の財産ではないため。「当然に物上代位できる」という肢が出たら誤り
- 物上代位の対象は「設定者の財産から発生した金銭」:売却代金・賃料・保険金・損害賠償請求権。誰の財産から発生したかで判定する
- 「払渡し又は引渡しの前」の差押えが絶対条件:受け取った後では物上代位できない(民法304条1項但書)
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
今日の教訓は—— サブスクの権利は又貸ししちゃダメ! ってことですよね!
カフェのコーヒーは私だけのもので、さくらちゃんに売ったら契約違反!
銀行も同じで、家賃は抵当株さんのものだから差し押さえられるけど、入居さんが又貸ししたら、その又貸し料には銀行は手を出せない!
だから私、サブスクのコーヒーを月10杯きっちり飲み切る予定表を作って、毎日「物上代位できない権利」を行使してきます!
そして来月から、家賃も保険金も損害賠償も全部追いかけられる人生を送ろうと思います!
そもそもこむぎちゃんは抵当権者ちゃう!
あと「全部追いかけられる人生」って何や、銀行になる気か!
正確に言うで!!
物上代位っちゅうのは、抵当目的物が売却・賃貸・滅失・損傷で形を変えた場合、その代わりに発生した金銭(売却代金・賃料・保険金請求権・損害賠償請求権)に対しても抵当権の効力が及ぶっちゅう性質や(民法372条による民法304条の準用)!
ただし、払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法304条1項但書)!
抵当権者と一般債権者の優劣は、抵当権設定登記と差押命令送達の先後で決まる(最判平10.3.26)!
抵当権実行中でも、抵当権が消滅するまでは賃料への物上代位ができる(最判平17.3.10)!
転貸賃料は、賃借人の財産であって設定者の財産ではないから、原則として物上代位の対象外(最決平12.4.14)!
そして、こむぎちゃんはカフェのサブスクを契約通りに自分で楽しみなさい!
月10杯を無理に飲み切ろうとせんでも、飲める分だけ飲んだらええ!
今回のまとめ
物上代位性は、抵当権の4つの性質のうち「目的物が形を変えた場合の追及力」を担う性質である(民法372条による民法304条の準用)。抵当不動産が売却・賃貸・滅失・損傷で形を変えた場合、その代わりに発生した金銭(売却代金・賃料債権・保険金請求権・損害賠償請求権)に対しても、抵当権の効力が及ぶ。
①「払渡し又は引渡しの前」の差押えが要件: 民法304条1項但書により、物上代位を実行するには目的物の払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない。受け取った後では物上代位できないため、差押えのタイミングが物上代位の生命線となる。これは第三債務者の保護(誰に払えばよいかを明確化)と第三者の保護(優劣判断の基準提供)の両方の趣旨を持つ。
②抵当権者と一般債権者の競合は「公示の先後」で決まる: 同一の賃料債権について、抵当権者の物上代位と一般債権者の差押えが競合した場合、判例(最判平10.3.26)は両者の優劣を「抵当権設定登記」と「差押命令の第三債務者への送達」の時期の先後で決定するとした。通常は抵当権設定登記が賃貸借開始より前にあるため、抵当権者が優先する。「一般債権者が差押えをしたら抵当権者は物上代位できない」という命題は誤りである。
③抵当権実行中の賃料への物上代位: 抵当権者が抵当権を実行(競売開始)していても、抵当権が消滅するまでは賃料債権への物上代位が可能である(最判平17.3.10)。競売手続中に発生する賃料も、抵当権者が追及できる。
④火災保険金請求権への物上代位: 抵当目的物が火災等で滅失した場合、設定者に発生する火災保険金請求権は民法304条の「滅失」によって生じた金銭にあたり、物上代位の対象となる。ただし設定者が保険金を受け取る前に差押えが必要。
⑤転貸賃料への物上代位は原則不可: 抵当不動産の賃借人がさらに転貸した場合、転借人から賃借人へ支払われる転貸賃料は、賃借人の財産であって抵当権設定者の財産ではない。民法304条1項の「債務者が受けるべき金銭」に該当しないため、抵当権者は原則として転貸賃料に物上代位できない(最決平12.4.14)。ただし、賃借人と設定者が実質的に同一と見られる法人格濫用の場合や、抵当権の効力を潜脱する濫用的賃貸借の場合は例外的に物上代位が認められる。
⑥物上代位の根本原理は「設定者の財産から発生したか」: 物上代位の対象になるか否かは「その金銭が抵当権設定者の財産から発生したものか」を判定基準とすると整理しやすい。売却代金・賃料・保険金・損害賠償請求権は設定者の財産から派生したもので物上代位可。転貸賃料は賃借人の財産から派生したもので物上代位不可。
⑦実務的含意: 住宅ローン中の不動産を賃貸に出すこと自体は禁止されないが、滞納が生じれば抵当権者は賃料への物上代位を行使できる。賃貸計画と返済計画は表裏一体で考える必要がある。火災保険金請求権への物上代位も実務上重要で、賃貸物件には借主の家財保険とは別に、所有者(設定者)の建物保険が必要になる。
| 物上代位の対象 | 物上代位の可否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 抵当不動産の売却代金 | ○ | 民法304条「売却」 |
| 抵当不動産の賃料 | ○ | 民法304条「賃貸」、民法371条 |
| 火災保険金請求権 | ○ | 民法304条「滅失」 |
| 不法行為による損害賠償請求権 | ○ | 民法304条「損傷」 |
| 転貸賃料 | ✕ (原則) | 賃借人の財産であり設定者の財産ではない(最決平12.4.14) |
| 物上代位の手続要件 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 時期的制限 | 払渡し又は引渡しの前に差押え必要 | 民法304条1項但書 |
| 第三者との優劣 | 抵当権設定登記と差押命令送達の先後 | 最判平10.3.26 |
| 抵当権の存続 | 抵当権消滅まで物上代位可 | 最判平17.3.10 |
| 平成24年問7・正誤判定 | 設問 | 正誤 | 判定の根拠 |
|---|---|---|---|
| 設問1 | 一般債権者の差押えで抵当権者は物上代位できない | 誤り | 抵当権設定登記と差押命令送達の先後で決まる(最判平10.3.26) |
| 設問2 | 抵当権実行中でも抵当権消滅まで賃料に物上代位できる | 正しい | 最判平17.3.10 |
| 設問3 | 火災焼失で火災保険金請求権に物上代位できる | 正しい | 民法304条「滅失」 |
| 設問4 | 転貸賃料に当然に物上代位することはできない | 正しい | 賃借人の財産であり設定者の財産ではない(最決平12.4.14) |
| 正解 | 「誤っているもの」は設問1 | — | — |
| 抵当株さんの賃貸計画への回答 | 内容 |
|---|---|
| 賃貸自体の可否 | 抵当権設定後も賃貸は可能(契約上の制限があれば別途確認必要) |
| 銀行による家賃差押え | 住宅ローン滞納時に物上代位で差押え可能 |
| 通常返済中のリスク | 銀行が物上代位を実行する動機がないため、家賃は設定者に入る |
| 火災時の対応 | 火災保険金請求権にも物上代位の対象になることに留意 |
| 物上代位 vs 妨害排除 (抵当権の保全手段の対比) | 物上代位 | 妨害排除請求権 |
|---|---|---|
| 目的 | 価値の追及(金銭への効力) | 物としての保全(目的物の保護) |
| 対象 | 売却代金・賃料・保険金等の金銭 | 抵当目的物そのもの |
| 行使方法 | 差押え | 妨害排除請求(明渡請求含む) |
| 根拠 | 民法372条・304条 | 解釈(抵当権の効力) |
