プロローグ
午後の事務所。こむぎちゃんが、頬を膨らませながら入ってきた。
先月オープンした「Bistro Komugi」っていう新店、ずっと行きたかったんですよ。
で、先週ようやく予約取れたんです!
すっごい人気店で、もう来月末まで満席で。
やっとの思いで6週間後の土曜の19時、押さえました。
こむぎちゃんが楽しみにしとるんやったら、ええ話やな。
それで「やったー!」って返事したら、その日がまさにBistro Komugiの予約日と被ってるんですよ!
あれだけ苦労して取った予約を?
お店に電話して、「予約日を1週間ずらせませんか」って聞いたら、「Bistro Komugiは現在キャンセル待ちのお客様が30組以上いらっしゃいまして、一度キャンセルされて取り直しという形になりますと、今のキャンセル待ちの方々の後ろに並んでいただくことになります」って!
つまり、今手放したら、次に取れるのは早くても3ヶ月後ですよ!
予約っちゅうのは「この日のこの時間っちゅう順番」を押さえとるだけや。
一回手放したら、自動的に1週間ずれてくれるわけやない。
キャンセル待ちの行列の一番後ろに並び直しっちゅうことや。
予約は順番だけ押さえてる状態なんですよね。
今、私の6週間後の枠の後ろには、もう何十組もキャンセル待ちが並んでて、私が手放した瞬間にその人たちが繰り上がる。
順番だけは絶対手放しちゃいけない!
順番だけは絶対手放さん——それは大事な感覚や。
誕生日会は別の日に振替できへんのか、友達に相談してみたらどうや。
うーん、悩ましい!
そのとき、事務所のドアがコンコンとノックされた。
入ってきたのは南向壱星。丸山ハウジング不動産部門の若手営業で、宅建勉強中の青年だ。こむぎちゃんの顔を見た瞬間、表情がふっと柔らかくなった。
コーヒー淹れますね。
壱星はメモ帳を取り出して、ソファに腰を下ろした。
売主は仮谷 留次(かりや とめじ)さん——所有している土地を手放したいというご相談です。
買主は本田 進(ほんだ すすむ)さん——その土地を購入希望されています。
で、長兄に確認したところ「正式に書面で同意するけど、来月末まで待ってくれ」と。
本田さんは「待つのは構わないが、その間に他の人に売られたら困る」とおっしゃるんです。
本登記と何が違うのか、どうやって申請するのか、後でちゃんと本登記に進めるのか……。
ちゃんと整理しておきたくて。
さっきの私のお店の予約の話と同じじゃないですか?
今すぐ正式な契約はできないけど、順番だけ押さえておきたい!
本田さん、待ってる間に他の人に先に買われたら困るから、「僕が一番ですよ」っていう順番だけは確保しておきたいってことですよね!
構造はそっくりや。
第52話で権利登記は共同申請が原則っちゅう話をして、第53話で申請に必要な3点セットを見た。
今日扱う仮登記は、その「権利登記の世界」のなかで、本登記の手前段階として順番を押さえるっちゅう特殊な登記の話や。
仮登記の論点を横断的に問う、ええ問題やで。 順に潰していこか。
今日の事件:平成16年 問15
仮登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- 仮登記は、所有権の移転に関する請求権が停止条件付きであるときも、することができる。
- 仮登記の申請は、仮登記の登記義務者の承諾があるときは、当該仮登記の登記権利者が単独ですることができる。
- 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
- 仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人の承諾がある場合であっても、当該仮登記の登記上の利害関係人が単独で申請することはできない。
仮登記の論点が綺麗に1問に詰まっとる、ありがたい問題やで。
順に見ていこか。
推理①:仮登記とは何か——本登記の「予約」と順位保全効
仮登記の本質:本登記の手前段階
仮登記っちゅうのは、こむぎちゃんが言うた通り「本登記の予約」みたいなもんや。
所有権移転登記でも、抵当権設定登記でも、本登記がされたらその時点で第三者対抗力が発生する。
これが第52話・第53話までの世界やった。
たとえば——
- 売買契約は結んだけど、売主の登記識別情報が今すぐ用意できへん
- 売買の約束はしたけど、売主側の親族の同意がまだ取れてへん(停止条件付き)
- 将来買う約束はしたけど、まだ本契約には至ってへん
今回の本田さんと仮谷さんの件は、まさにこのパターンやな。
不動産登記法106条——仮登記の順位保全効
ここがめちゃくちゃ大事や。
不動産登記法106条(仮登記に基づく本登記の順位) 仮登記に基づく本登記の順位は、当該仮登記の順位による。
やさしく言うと—— 後から本登記したときの順位は、仮登記した時点の順位で決まるっちゅうこっちゃ。
予約と同じ!
6週間後の予約を取ったら、6週間後の順番が私のもの。
後から予約した人は、私より後ろ。
仮登記しとけば、後から本登記しても、仮登記した時の順番で並べるってことですよね!
具体例で見るで。
今回の本田さんの件で、ちょっと厄介な状況を想定してみよか。
【ケース】
- 1月10日:本田さんが仮谷さんから土地を買う約束(ただし長兄の同意待ち)→ 本田さん名義で仮登記
- 2月5日:仮谷さんが第三者の先取 守さんにも同じ土地を売って、先取さんが本登記
- 3月20日:長兄の同意が取れて、本田さんが本登記
これが対抗関係の原則や。
ほんで3月20日に本登記したら、その本登記の順位は——106条によって——1月10日の仮登記の順位になるんや。
つまり、1月10日 > 2月5日で、本田さんが先取さんに勝つ。
仮登記しておけば、後から第三者が本登記しても勝てるってことですか。
ただし、注意点がある。
仮登記には対抗力がない——順位保全効「だけ」
これが大事なポイントや。
本登記して初めて対抗できるんや。 ただし、その本登記の順位だけは仮登記の時点まで遡る。
- 仮登記:順位は押さえる。けど対抗力はない
- 本登記:対抗力が発生する。順位は仮登記の時点まで遡る
予約しただけでは料理は食べられないけど、当日その時間に行けば、後から来た人より優先される、と。
ここを混同せんよう気をつけや。
推理②:1号仮登記と2号仮登記——不動産登記法105条
仮登記には2種類ある
これが1号仮登記と2号仮登記や。
不動産登記法105条に書いてある。
不動産登記法105条(仮登記) 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。 一 第3条各号に掲げる権利について、保存等があった場合において、当該保存等に係る権利の設定、移転、変更又は消滅に関する登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、法務省令で定めるものを提供することができないとき。 二 第3条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関する請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
1号仮登記(105条1号)——「実体はあるけど書類が足りない」
- 売買契約も終わって所有権は移転しとる。せやけど売主の登記識別情報が用意できへん
- 抵当権設定も終わっとるけど必要書類の一部が揃わへん
2号仮登記(105条2号)——「まだ実体的権利は発生してへん」
- 始期付き:「来年4月1日に売る」など、期限が来たら効力が発生する契約
- 停止条件付き:「親族の同意が得られたら売る」など、条件が成就したら効力が発生する契約
- 将来確定することが見込まれるもの:予約や合意による将来の請求権
仮谷さんの長兄の同意が「停止条件」になっとって、同意が得られたら本田さんに所有権が移る——っちゅう停止条件付きの請求権を仮登記で保全する。
これが2号仮登記や。
1号と2号の違いがすっきり分かりました。
設問1の判定
平成16年 問15 設問1 仮登記は、所有権の移転に関する請求権が停止条件付きであるときも、することができる。
「停止条件付きの請求権」は2号仮登記の典型例として条文に明記されとる。
設問1は正しい。
該当する例: 仮谷さんが「長兄の同意が得られたら本田さんに売る」と約束 → 停止条件付きの所有権移転請求権を保全するため、本田さん名義で2号仮登記(不動産登記法105条2号)
該当しない例: 売買契約も登記書類もすべて揃っている → そもそも仮登記の必要がなく、最初から本登記をすればよい
推理③:仮登記の申請方法——共同申請の原則と単独申請の例外
第52話の復習:共同申請の原則
第52話で扱った話を踏まえて整理するで。
これは仮登記でも基本的には同じや。 仮登記権利者と仮登記義務者の共同申請が原則。
- 仮登記権利者:本田さん(買主、新しく権利を取得する側)
- 仮登記義務者:仮谷さん(売主、登記義務を負う側)
不動産登記法107条1項——仮登記権利者の単独申請
これが第52話で扱った「単独申請の例外」の追加メンバーや。
不動産登記法107条1項(仮登記の申請方法) 仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき、又は仮登記を命ずる処分があるときは、第60条の規定にかかわらず、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。
仮登記権利者が単独で申請できる場合は次の2つや。
- 仮登記義務者の承諾があるとき
- 仮登記を命ずる処分(裁判所の処分)があるとき
共同申請でなくてええ、っちゅうことや。
売主さんが「いいよ」って言ってくれたら、買主さんだけで法務局に行けばいいんですか。
仮登記の段階では、本登記みたいに重い手続にはなってへん。
最終的には本登記に進めば本人確認もしっかりやるから、仮登記の段階では「承諾があれば単独でもOK」っちゅう柔軟なルールになっとるんや。
設問2の判定
平成16年 問15 設問2 仮登記の申請は、仮登記の登記義務者の承諾があるときは、当該仮登記の登記権利者が単独ですることができる。
設問2は正しい。
該当する例: 仮谷さんが仮登記を承諾 → 本田さんが単独で仮登記を申請できる(不動産登記法107条1項)
該当しない例: 仮谷さんが仮登記を拒否し、裁判所の仮登記命令もない → 単独申請はできず、共同申請するか、訴訟等で仮登記命令を取る必要がある
推理④:仮登記に基づく本登記——109条1項の利害関係人の承諾
仮登記から本登記への進み方
今回の件で言えば、仮谷さんの長兄の同意が無事に得られて、本田さんが本登記をする場面やな。
不動産登記法109条1項——利害関係人の承諾
不動産登記法109条1項(仮登記に基づく本登記) 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
やさしく言うと——
【ケース再掲】
- 1月10日:本田さんが仮登記
- 2月5日:仮谷さんが先取守さんに売って、先取さんが本登記
- 3月20日:本田さんが本登記したい
で、本田さんの本登記が先取さんの本登記より優先される。 つまり、先取さんの登記は事実上、追い出されるんや。
仮登記した本田さんは強い立場ですが、本登記にあたっては利害関係人の承諾を取らないといけない、と。
利害関係人にとっては自分の権利が事実上失われるんやから、本登記する側もそれなりの手間をかける必要がある、っちゅう設計や。
承諾が取れへん場合は、訴訟して承諾に代わる判決を取らなあかん。
「所有権に関する仮登記」だけ——抵当権など他の権利は違う
109条1項は「所有権に関する仮登記」に限定して利害関係人の承諾を要求しとる。
所有権以外の権利(抵当権など)に関する仮登記に基づく本登記では、この承諾要件は適用されへん。
せやから利害関係人の承諾を求める設計になっとる。
抵当権なんかの場合は、複数の権利が並存できるから、そこまで強い承諾要件は要らへん、っちゅう違いや。
設問3の判定
平成16年 問15 設問3 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
該当する例: 本田さんが仮登記後、第三者の先取さんが本登記 → 本田さんが本登記するには先取さんの承諾が必要(不動産登記法109条1項)
該当しない例: 仮登記後、利害関係人となる第三者が一切登場していない → 承諾は不要で、そのまま本登記できる
推理⑤:仮登記の抹消——110条の単独申請ルート
仮登記の抹消は誰が申請する?
今度は仮登記を抹消する場面の話やで。
長兄の同意が得られへんかった、っちゅう場合やな。
その場合、本田さんの仮登記はもう用済みやから、抹消することになる。
不動産登記法110条——仮登記の抹消の単独申請
不動産登記法110条(仮登記の抹消) 仮登記の抹消は、第60条の規定にかかわらず、仮登記の登記名義人が単独で申請することができる。この場合において、仮登記の登記上の利害関係人は、仮登記の登記名義人の承諾があるときは、単独で当該仮登記の抹消を申請することができる。
仮登記の抹消ができるのは——
- 仮登記名義人本人:単独で申請できる
- 仮登記の利害関係人:仮登記名義人の承諾があれば、単独で申請できる
利害関係人も、承諾があれば単独で抹消申請できるっちゅうことになっとる。
設問4の判定
平成16年 問15 設問4 仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人の承諾がある場合であっても、当該仮登記の登記上の利害関係人が単独で申請することはできない。
110条後段で、利害関係人は仮登記名義人の承諾があれば単独で抹消申請できると明記されとる。
設問4は「承諾があっても単独申請できない」と言うとるけど、これは条文に真っ向から反する。
これが平成16年問15の正解や。
仮登記の申請も承諾があれば単独でできるし、抹消も承諾があれば単独でできる。
仮登記は前後とも柔軟ってことですよね。
そういうことや。
仮登記の段階では、本登記ほど厳格な手続要求はない。
申請も抹消も、関係者の承諾があれば単独でできる柔軟さがあるんや。
ここは「本登記する=対抗力が発生する=中間処分を事実上追い出す」っちゅう強い効果があるから、慎重な手続になっとる、っちゅうこっちゃ。
該当する例: 本田さんの仮登記の利害関係人(後順位の権利者など)が、本田さんから「抹消してええよ」と承諾を得て、単独で抹消申請(不動産登記法110条後段)
該当しない例: 利害関係人が、仮登記名義人の承諾なしに勝手に抹消を申請 → 単独申請はできない
推理⑥:仮登記の全体地図
| 仮登記のポイント | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 意義・効果 | 本登記の順位を保全する登記 | 不登法105条柱書、106条 |
| 対抗力 | ない(本登記して初めて対抗力が発生) | 解釈 |
| 順位保全効 | 本登記の順位は仮登記の順位による | 不登法106条 |
| 1号仮登記 | 実体的権利は発生済み、書類等が揃わない場合 | 不登法105条1号 |
| 2号仮登記 | 始期付き・停止条件付き等の請求権保全 | 不登法105条2号 |
| 申請方法(原則) | 仮登記権利者と仮登記義務者の共同申請 | 不登法60条 |
| 申請方法(例外) | 仮登記義務者の承諾/仮登記を命ずる処分があれば仮登記権利者の単独申請 | 不登法107条1項 |
| 本登記時の制約 | 所有権の仮登記に基づく本登記は利害関係人の承諾必要 | 不登法109条1項 |
| 抹消の申請 | 仮登記名義人が単独申請可。利害関係人も仮登記名義人の承諾があれば単独申請可 | 不登法110条 |
| 比較項目 | 1号仮登記(105条1号) | 2号仮登記(105条2号) |
|---|---|---|
| 実体的権利変動 | すでに発生済み | まだ発生していない |
| 何を保全するか | 既に発生した権利 | 将来発生する請求権 |
| 典型例 | 売買は完了したが登記識別情報が揃わない | 停止条件付き・始期付き売買、予約 |
| 順位保全効 | あり(106条) | あり(106条) |
今回の本田さんの件は、停止条件付きなので2号仮登記。
仮谷さんの承諾を得れば本田さんが単独で申請できて、長兄の同意が得られたら本登記に進む。
本登記の時点で利害関係人がいれば、その承諾を取る——という流れですね。
最後に、第52話以降で扱った「共同申請と単独申請」を仮登記も含めて総整理しとくで。
| 場面 | 申請方法 | 根拠 |
|---|---|---|
| 権利登記(一般)の原則 | 共同申請 | 不登法60条 |
| 表示登記 | 単独申請(表題部所有者等) | 不登法18条等 |
| 所有権保存登記 | 単独申請(74条所定の者) | 不登法74条 |
| 相続による登記 | 単独申請(相続人) | 不登法63条2項 |
| 登記名義人の住所等変更 | 単独申請 | 不登法64条1項 |
| 判決による登記 | 単独申請(勝訴当事者) | 不登法63条1項 |
| 仮登記の申請 | 原則共同/義務者承諾等で権利者単独可 | 不登法60条/107条1項 |
| 仮登記の抹消 | 仮登記名義人単独可/利害関係人も承諾あれば単独可 | 不登法110条 |
事件の結論
平成16年問15の4つの設問や。
正しい。
正しい。
正しい。
設問4は「承諾があっても単独申請できない」と言うとるが、条文に明確に反する。
この設問が誤りで、これが平成16年問15の正解や。
本田さんと仮谷さんの件は、停止条件付きなので2号仮登記(105条2号)。
仮谷さんの承諾を得て本田さんが単独申請(107条1項)。
長兄の同意が得られたら本登記に進む。 その際、利害関係人がいれば承諾を取る(109条1項)。
万が一、停止条件が成就しなかったら、本田さんが単独で仮登記を抹消(110条前段)。
この道筋を整理してお伝えします。
壱星さん、今日もよう理解した。
先輩は「仮登記は実務で意外と多いから、しっかり押さえとけ」っていつも仰ってましたので。
頑張ってくださいね。
こむぎちゃんもありがとうございました
コーヒー、いつもおいしいです。
壱星はメモ帳を大事そうにしまうと、こむぎちゃんの方をちらっと見てから、丁寧に頭を下げて事務所を出て行った。
今日は「いつもおいしいです」までグレードアップしとったぞ。
普通にお礼を言ってくれただけじゃないですか?
仮登記どころか本登記レベルや。
そのままでええわ。
試験のひっかけメモ
- 仮登記には対抗力がない: 仮登記そのものでは第三者に対抗できない。本登記して初めて対抗力が発生し、順位だけが仮登記時点に遡る(106条)。「仮登記しただけで第三者に対抗できる」は誤り
- 1号仮登記と2号仮登記の区別: 1号は「実体的権利変動はすでにあるが書類が揃わない」、2号は「まだ実体的権利は発生していない請求権の保全」。停止条件付き・始期付きは2号仮登記
- 仮登記の単独申請ルート: 仮登記権利者が単独で申請できるのは、①仮登記義務者の承諾があるとき、②仮登記を命ずる処分があるとき(107条1項)。「常に共同申請」「常に単独申請」はいずれも誤り
- 109条1項は「所有権に関する」仮登記に限定: 利害関係人の承諾が必要になるのは所有権の仮登記に基づく本登記の場合。抵当権など他の権利では同じ要件は課されない
- 仮登記の抹消は柔軟: 仮登記名義人は単独で抹消申請できる。利害関係人も、仮登記名義人の承諾があれば単独で抹消申請できる(110条)。「利害関係人は承諾があっても単独申請できない」は条文に反する典型ひっかけ(設問4のポイント)
- 107条と110条の対称性: 仮登記の申請時は「義務者の承諾で権利者単独可」、仮登記の抹消時は「名義人の承諾で利害関係人単独可」。前後とも「承諾+単独申請」というルートが用意されている
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
今日の教訓は—— 順番だけは絶対手放しちゃダメってことですよね!
Bistro Komugiの予約と同じで、一回手放したら最後尾!
だから本契約できない時は仮登記で順番だけ押さえる!
仮登記には1号と2号があって、1号は「もう買った後だけど書類がない」、2号は「これから条件が揃ったら買う」!
申請は売主さんが「いいよ」って言ってくれたら買主さん一人でできる!
抹消も、名義人が「いいよ」って言ったら利害関係人一人でできる!
本登記の時だけは、間に入った第三者の承諾がいる!
つまり、仮登記は予約席で、本登記が実際の着席!
だから私もBistro Komugiの予約は絶対キャンセルしません!
サプライズ誕生日会は欠席して、友達には後で「ごめんね、私には予約という名の仮登記があったから」って説明します!
それ友達ブチギレるやつや、絶対やめとき!
誕生日会優先せんかい!
正確に言うで!!
仮登記は権利登記の手前段階で、本登記の順位を保全する登記や(不動産登記法106条)!
1号仮登記は実体的権利変動はあったけど登記情報を提供できへんとき(105条1号)、2号仮登記は始期付き・停止条件付き・将来確定見込みの請求権を保全するとき(105条2号)!
申請は原則共同やけど、仮登記義務者の承諾または仮登記を命ずる処分があれば仮登記権利者が単独で申請できる(107条1項)!
所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要や(109条1項)!
仮登記の抹消は、仮登記名義人が単独で申請できるし、利害関係人も仮登記名義人の承諾があれば単独で申請できる(110条)!
仮登記そのものには対抗力はなく、本登記して初めて対抗力が生じ、その順位だけが仮登記の時点まで遡る!
平成16年問15は設問4が誤りで正解は4!
そして、誕生日会は友情の本登記やから、絶対欠席したらアカン!!
今回のまとめ
不動産登記法における仮登記は、本登記をしようとしても本登記に必要な情報が揃わない場合や、まだ実体的な権利は発生していないが将来発生する請求権を保全したい場合に、本登記の順位を保全するために用いられる登記である。第52話で扱った「共同申請の原則と単独申請の例外」、第53話で扱った「申請に必要な3点セット」がいずれも「正式な本登記の話」であったのに対し、第54話の仮登記は「本登記の手前段階」という独自の世界を構成する。平成16年問15は、仮登記の意義・申請方法・本登記への進み方・抹消手続を横断的に問う典型問題であり、特に設問4が110条後段の「利害関係人も仮登記名義人の承諾があれば単独で抹消申請できる」を正面から問うひっかけ問題となっている。
①仮登記の意義と順位保全効(不動産登記法106条): 仮登記は本登記の手前段階として用いられる登記で、仮登記そのものには対抗力はないが、後に仮登記に基づく本登記がされた場合、本登記の順位は仮登記の順位による。仮登記後に登場した第三者は、仮登記権利者が本登記をすることで、事実上その地位を失う。この強力な順位保全効が仮登記の本質である。
②1号仮登記と2号仮登記(不動産登記法105条): 1号仮登記は、第3条各号に掲げる権利についての変動はあったが、本登記に必要な情報(登記識別情報など)を提供できないときに用いる(105条1号)。2号仮登記は、第3条各号に掲げる権利の設定・移転・変更・消滅に関する請求権(始期付き・停止条件付き・将来確定見込みのものを含む)を保全するときに用いる(105条2号)。今回の事例の停止条件付き売買は典型的な2号仮登記となる。
③仮登記の申請方法(不動産登記法107条1項): 仮登記は権利登記であり、原則として登記権利者と登記義務者の共同申請(60条)で行う。ただし、①仮登記の登記義務者の承諾があるとき、または②仮登記を命ずる処分(裁判所による)があるときは、仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。これは第52話で扱った「共同申請の例外」の重要メンバーである。
④仮登記に基づく本登記の利害関係人の承諾(不動産登記法109条1項): 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者があるときは、その承諾があるときに限り、申請することができる。仮登記後に登場した中間処分の権利者などが該当し、その承諾が得られない場合は、承諾に代わる判決を取る必要がある。この条文は「所有権に関する仮登記」に限定されていることに注意。
⑤仮登記の抹消(不動産登記法110条): 仮登記の抹消は、共同申請の原則の例外として、仮登記の登記名義人が単独で申請できる(前段)。さらに、仮登記の登記上の利害関係人も、仮登記の登記名義人の承諾があるときは単独で抹消申請できる(後段)。平成16年問15設問4は、この後段を正面から問うひっかけであり、「承諾があっても単独申請できない」と誤った内容になっている。
⑥実務上の鉄則: 「売主の登記書類が揃わない」「停止条件・始期がある」「将来買う約束をした」といった本登記できない状況では、順番だけでも仮登記で押さえることを検討する。ただし仮登記には対抗力がないため、油断は禁物。停止条件成就や始期到来などの状態が確定したら速やかに本登記に進む。本登記の段階で利害関係人がいれば、その承諾の取得(または承諾に代わる判決の取得)が必要となる。
| 仮登記の世界 全体地図 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 意義 | 本登記の順位を保全する登記 | 不登法105条柱書 |
| 順位保全効 | 本登記の順位は仮登記の順位による | 不登法106条 |
| 対抗力 | 仮登記自体にはなし、本登記で発生 | 解釈 |
| 1号仮登記 | 権利変動はあったが情報提供できない場合 | 不登法105条1号 |
| 2号仮登記 | 始期付き・停止条件付き等の請求権保全 | 不登法105条2号 |
| 申請(原則) | 仮登記権利者と仮登記義務者の共同申請 | 不登法60条 |
| 申請(例外) | 義務者承諾/仮登記命令で権利者単独可 | 不登法107条1項 |
| 本登記時の制約 | 所有権の仮登記に基づく本登記は利害関係人承諾必要 | 不登法109条1項 |
| 抹消(名義人) | 単独で申請可 | 不登法110条前段 |
| 抹消(利害関係人) | 名義人の承諾があれば単独で申請可 | 不登法110条後段 |
| 1号仮登記と2号仮登記の比較 | 1号仮登記 | 2号仮登記 |
|---|---|---|
| 根拠 | 不登法105条1号 | 不登法105条2号 |
| 実体的権利変動 | すでに発生済み | まだ発生していない |
| 保全対象 | 既に発生した権利 | 将来発生する請求権 |
| 典型例 | 売買完了済みだが登記識別情報未提供 | 停止条件付き・始期付き売買、予約 |
| 順位保全効 | あり(106条) | あり(106条) |
| 仮登記に関する単独申請の整理 | 申請の場面 | 単独で申請できる者 | 単独申請の要件 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 仮登記の申請 | 仮登記権利者 | 仮登記義務者の承諾/仮登記を命ずる処分 | 不登法107条1項 | |
| 仮登記の抹消 | 仮登記の登記名義人 | (特段の要件なし、単独で可) | 不登法110条前段 | |
| 仮登記の抹消 | 仮登記の登記上の利害関係人 | 仮登記名義人の承諾 | 不登法110条後段 |
| 平成16年問15 各設問 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設問1(停止条件付き請求権の仮登記) | ◯ | 不動産登記法105条2号 |
| 設問2(仮登記権利者の単独申請) | ◯ | 不動産登記法107条1項 |
| 設問3(本登記時の利害関係人の承諾) | ◯ | 不動産登記法109条1項 |
| 設問4(仮登記抹消の単独申請) | ❌ | 不動産登記法110条後段により、利害関係人も仮登記名義人の承諾があれば単独申請可能 |
| 正解:4(誤り) |
| 第50〜54話の俯瞰(不動産登記法パート) | 第50話 | 第51話 | 第52話 | 第53話 | 第54話 |
|---|---|---|---|---|---|
| テーマ | 表題登記・所有権保存登記 | 分筆・合筆の登記 | 共同申請の原則・単独申請の例外 | 申請情報・登記原因証明情報・登記識別情報 | 仮登記 |
| 区分 | 表示登記+権利登記の入口 | 表示登記 | 権利登記(誰が申請するか) | 権利登記(何を提供するか) | 権利登記の手前段階 |
| 題材過去問 | 平成28年問14 | 令和2年12月問14 | 令和6年問14 | 令和4年問14 | 平成16年問15 |
| キーワード | 1か月以内の申請義務、74条 | 1筆の限界、地目・地番、抵当権付き土地 | 60条、63条3項、69条の2、118条1項 | 18条、61条、22条、23条 | 105条、106条、107条1項、109条1項、110条 |
