プロローグ
うちの伯母さん、本当にギリギリの人なんですよ!
何があったんや。
可愛い赤ちゃんを抱かせてもらって、もうメロメロで。
そしたら友人が「赤ちゃんが生まれたら14日以内に出生届を出さないといけないんですよ」って教えてくれたんです。
私、ぜんぜん知らなくて。
戸籍法で決まっとる。
あるとき家計簿を整理しててふと「あれ、出生届ってもう出したっけ?」って気づいて、カレンダー見たら期限の前日だったって。
あとから笑いながら「あと一日遅れてたら過料だったわ」って言ってました。
私、その話を聞いて、世の中には期限があるものってこんなに身近にあるんだなって、しみじみ思いました。
家に帰ってから、自分の身の回りで期限があるものを全部書き出してみたんです。
運転免許の更新、住民票の異動、健康診断、確定申告、それからベランダの苺の食べごろ……。
期限を意識すると人生が引き締まるって思いました。
せやけど、出生届に期限があるんは大事な話や。
生まれてから役所に届出することで、その子の存在が公の記録に載る。
届出せんかったら、住民票も作れんし、保険証ももらえん。
社会の仕組みの入口や。
そのとき、事務所の入口で軽くノックの音がして、南向壱星が顔を出した。手にはいつものメモ帳と、何冊かの登記簿の写し。
今日もちょっと相談があって……
壱星はこむぎちゃんの姿を見ると、ふっと表情がゆるんだ。それから慌てて姿勢を正して、メモ帳を開いた。
何のお話ですか?
先輩の畝井さんに半分は聞いたんですけど、自分でちゃんと整理しておきたくて。
新築した家にもう半年住んでるんですけど、「登記なんて何もしてないよ」って言うんです。
所有権保存登記をしないと罰金になるって聞いたことがあって、僕、その場で慌ててしまって。
色々あって、整理がついてないんです。
特に最初の、新築から半年も登記してないって、もう完全に期限切れじゃないですか!
それって、さっきの私の伯母さんの話と似てません!?
人の世界では生まれたら届出義務があるように、建物にも生まれたら届出義務があるってことじゃないですか!?
で、伯母さんはギリギリセーフだったけど、壱星くんのお客さんは完全にアウトってことですか!?
人と建物でえらい違うけど、「生まれたら届出する」「期限がある」「過料がある」っちゅう仕組みは共通しとる。
新築されて生まれたとき、所有者が決まるとき、誰かに売られるとき、抵当に入るとき、そして取り壊されて死ぬとき。
それぞれの段階でどんな登記がされて、何が義務で何が任意なんか、丁寧に見ていく必要がある。
平成28年宅建試験 問14で正面から問われた論点で、ひっかけポイントもいっぱいある。
順番に整理していこう。
特に、新築のお客さんが本当に罰金を払うことになるのか、明日までに答えを返したいので、しっかり確認させてください。
今日の事件:平成28年 問14
不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。
- 登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。
- 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
- 区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。
建物の登記の一生を順番に追いかけながら、どこに罠が仕掛けられとるか暴いていくで。
推理①:新築健治さんの半年——「表題登記」と「所有権保存登記」は別物
壱星くんが担当しとる売主のお客さんが新築健治(しんちく けんじ)さんや。
半年前に注文住宅を新築して、家族と一緒にもう住み始めとる。建物代金もちゃんと払って、自分の名義の建物っちゅう認識でおる。
せやけど、登記関係の手続きは「何もしてない」と言うとる。
家を建てた工務店から「登記は司法書士さんに頼んでくださいね」って言われたのは覚えてるんですけど、引越しやら近所への挨拶やらでバタバタしてて、つい後回しになって、そのまま半年経ったみたいで。
それは大丈夫なんですか?
私の伯母さんの出生届みたいに、過料とかあるんじゃ……?
壱星くんが「所有権保存登記をしないと罰金」っちゅう話を聞いたって言うとったやろ。
ここにものすごく大事なひっかけがある。
表示に関する登記と権利に関する登記——根本的に違う2つの世界
民法には書いてへんけど、不動産登記法2条で定義されとる。
「ここにこんな建物がありますよ、こんな広さでこんな構造ですよ」と公に示すためのもん。
これが記録されるのが表題部や。
「この建物の所有者はこの人ですよ、抵当権は誰の名義で設定されてますよ」と公示する。
これが記録されるのが権利部で、さらに甲区(所有権)と乙区(所有権以外)に分かれる。
一番大きな違いは申請義務や。
表示に関する登記には申請義務がある。
権利に関する登記には原則として申請義務がない。
ここが今日のキモや。
買ったら登記、売ったら登記、みたいな。
所有権移転登記――売買とか相続で所有者が変わったときの登記――は、原則として義務ちゃう。
せやけど、登記せんかったら第三者に対抗できないっちゅう、これまでさんざん勉強してきたあのデメリットがある。
せやから実務上は登記するんが当たり前になっとるだけや。
罰則があるんやない。
3年以内に申請せんと10万円以下の過料っちゅう、相続登記義務化の話やな。
これは権利登記の中の例外的な仕組みや。
表題登記の申請義務——建物の「出生届」
新築建物の表題登記は不動産登記法47条1項に書いてある。
不動産登記法47条1項 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
建物を新築したら、所有権を取得した人は1か月以内に「表題登記」を申請する義務がある。
これが建物の「出生届」やな。
本当に出生届みたいなんですね!
じゃあ、新築健治さん、もう半年経ってるから……
不動産登記法164条で、申請を怠った者には10万円以下の過料っちゅう制裁が用意されとる。
新築健治さんに今すぐ司法書士さん紹介して手続きしてもらわないと。
実務上は過料が実際に課されるケースは多くないけど、義務があるっちゅう構造そのものは押さえとかんとあかん。
ここからがひっかけの本丸
問題文の肢1をそのまま見てみるで。
平成28年 問14 肢1 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。
新築から1か月以内に登記しないといけないって、さっき登記田さんが言ったとおりじゃ……
「所有権の保存の登記」って書いてある。
さっき言うた条文は何やった?
1か月以内に申請する義務があるんは「表題登記」やのに、問題文は「所有権の保存の登記」と書いとる。表題登記と所有権保存登記は別物やからな。
表題登記は表示に関する登記、表題部に記録される、申請義務あり、職権登記もあり得る。
所有権保存登記は権利に関する登記、権利部甲区に記録される、申請義務なし(権利登記の原則どおり)。
それを混同させるのがひっかけになってる。
建物の登記実務の現場では、表題登記を申請したあとに続けて所有権保存登記を申請するっちゅう流れになる。
せやから時系列的にはセットでされることが多くて、初学者は混同しがちなんや。
せやけど法的性格は別物や。
これがわかってるかが問われとる。
これをやらんと10万円以下の過料の対象になる。
続けて所有権保存登記もした方がええけど、こっちは義務やない。
第三者対抗の問題が出てくるから、実務上はやるべきっちゅうだけや。
該当する例(表題登記の申請義務): 新築建物・新たに生じた土地・表題登記がない建物の所有権を取得した者は、所有権取得から1か月以内に表題登記を申請する義務を負う(不動産登記法36条・47条1項)。違反には10万円以下の過料(同164条)。
該当しない例: 「新築から1か月以内に所有権の保存の登記を申請する義務がある」は誤り。義務があるのは表題登記。所有権保存登記は権利に関する登記なので、原則として申請義務はない。
推理②:登記できる権利の範囲と滅失登記——賃借権も滅失も忘れたらあかん
買主が「賃借権も登記したい」と言うとる話と、お客さんが古い倉庫を取り壊した話や。
登場人物:賃借権を登記したい買主と、倉庫を解体した滅失一郎さん
「賃借権って債権だから登記できないんじゃないか」って僕は思ったんですけど、自信がなくて。
山の方に古い倉庫を持ってて、もう使ってないから先月解体したそうです。
解体業者さんから「建物を壊したら何か登記が要るんですよね?」って質問されたけど、滅失一郎さん自身もよくわからないって。
登記できる権利——9種類+1
不動産登記法3条を見るで。
不動産登記法3条 登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等についてする。 一 所有権 二 地上権 三 永小作権 四 地役権 五 先取特権 六 質権 七 抵当権 八 賃借権 九 配偶者居住権 十 採石権
所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、配偶者居住権、採石権。
ここにちゃんと賃借権が入っとる。
物権じゃないのに登記できるんですか?
本来、登記は物権を公示するもんやけど、賃借権だけは例外的に登記できるようにしてある。
なんでかと言うと、第49話で勉強したとおり、賃借権は対抗要件を備えれば新所有者にも主張できる強い権利やからや。
借地借家法10条や31条の対抗要件と並んで、民法605条の賃借権登記も対抗要件として認められとる。
実務ではあんまり使われへんけどな。
これは2020年の民法改正で創設された新しい権利で、亡くなった人の配偶者が、その家に終身住み続けられる権利や。
これも登記できる。
試験で問われるポイントや。
平成28年 問14 肢2 登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。
せやからこの肢は正しい。
ただし、賃借権登記は賃貸人と賃借人の共同申請になる。
賃貸人がふつう協力せえへんから、実務ではほとんど使われへん。
借地なら建物登記で、借家なら引渡しで対抗要件を備えるんが普通や。
「制度としては存在するけど現実には稀」――これが賃借権登記の実情や。
滅失登記——建物の「死亡届」
不動産登記法57条を見るで。
不動産登記法57条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
1か月以内に申請!
新築のときの「出生届」が表題登記なら、取り壊しのときの「死亡届」が滅失登記や。
期間も同じ1か月以内、義務違反には同じく10万円以下の過料が予定されとる。
せやから現況と登記を一致させるために、1か月以内に消す義務を課しとる。
今からでも間に合う。
すぐ手続きすればセーフや。
平成28年問14 肢3を見るで。
平成28年 問14 肢3 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
この肢は正しい。
1か月以内っちゅう期間も、申請義務者が表題部所有者または所有権の登記名義人っちゅう点も、すべて条文どおりや。
表示に関する登記と権利に関する登記の比較——もういちど押さえとこ
これは試験でも実務でも一番大事な区別や。
表題部に記録される。
代表例は表題登記、滅失登記、地目変更登記、分筆・合筆登記。申請義務があるもんがほとんどで、義務違反には過料がある。
登記官の職権登記もある。
登記原因証明情報は不要や。
権利部に記録される。
代表例は所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記、賃借権設定登記。
原則として申請義務がない(相続登記だけ令和6年から例外的に義務化)。
登記原因証明情報が必要や。職権登記は原則ない。
これが整理できてないと、新築健治さんの「表題登記が義務」と「所有権保存登記は任意」の区別もつかなくなる。
覚え方は、「表示」は身体検査、「権利」は契約書って感じや。
身体検査は強制、契約書は任意。
役所が「ここにこんな建物があるんか、ちゃんと記録させや」と言うのが表示。
「この建物は誰のもんで、どんな権利関係になっとるか」を当事者が決めて公示するんが権利や。
該当する例(登記できる権利・滅失登記): 登記できる権利には所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、配偶者居住権、採石権が含まれる(不動産登記法3条)。建物滅失時には1か月以内に滅失登記の申請義務(同57条)。
該当しない例: 「賃借権は債権だから登記できない」は誤り。賃借権は例外的に登記できる権利として明示されている。「建物を壊しても登記は何もしなくていい」も誤り。1か月以内の滅失登記が義務。
推理③:区分建物の保存登記——マンションだけの特別ルール
区分建物だけは登記の手続きが普通と違うっちゅうのは何のことか。
専有由香(せんゆう ゆか)さんという購入希望のお客さんがいて、契約が進んでるんですけど、登記の手続きが戸建てと違うって畝井さんが言ってました。
具体的にどう違うのか、知っておきたくて。
区分建物――つまりマンションの一部屋一部屋――には、戸建てとは違う特別ルールがある。
これが不動産登記法74条2項や。
戸建ての場合の流れ——原則どおり
戸建ての新築の場合、登記の流れはこうや。
①建築会社が建物を完成させる。
②新築健治さんが表題登記を申請する(1か月以内・申請義務あり)。
この時点で表題部に「表題部所有者:新築健治」と記録される。
③続けて新築健治さんが所有権保存登記を申請する(任意)。
これで権利部甲区に「所有者:新築健治」と記録されて、初めて第三者に所有権を対抗できる状態になる。
新築健治さんが表題部所有者なら、保存登記も新築健治さん本人が申請する。
他人が代わりにやることはできへん。
原則どおりやと、①新築健治さんが表題登記、
②新築健治さんが所有権保存登記、
③買主への所有権移転登記、っちゅう3段階の手続きになる。
新築健治さんが保存登記を挟まんと、買主名義の登記にできへん。
中間省略はできへんからな。
区分建物の特則——マンションは中間省略を許す
マンションっちゅうのは、デベロッパーが一棟まるごと建てて、一部屋ずつ売っていくのが普通や。
デベロッパーは何百戸も保有することになる。
①一棟全部の表題登記、
②各専有部分についていったん自分名義で所有権保存登記、
③各購入者への所有権移転登記、っちゅう手順を踏まんとあかん。
全部屋分の保存登記を一度経由することになる。
新築マンション100戸なら、デベロッパーは100回も保存登記して、すぐ100回の移転登記をすることになる。
せやから不動産登記法74条2項で特別ルールを作った。
不動産登記法74条2項 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
デベロッパー(表題部所有者)が一度自分名義で保存登記をする必要がない。
中間省略が認められとる。
これがマンションっちゅう商品の流通に合わせた特別ルールや。
ただし敷地権付き区分建物には承諾要件
条文の後段、「当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない」っちゅう部分や。
要するに「部屋だけ買って土地の権利は別」みたいなことができへん仕組みやな。
普通のマンションはたいていこの形になっとる。
平成28年 問14 肢4 区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。
この肢は正しい。
「申請することができる」と書いてあるのもポイントや。
義務やない、できる規定や。
表題部所有者本人が申請してもええし、所有権を取得した者が申請してもええ。
選択肢が広がっとるんや。
整理できました。
該当する例(区分建物の保存登記特則): 区分建物では表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できる(不動産登記法74条2項前段)。敷地権付き区分建物の場合は敷地権登記名義人の承諾が必要(同項後段)。
該当しない例: 「区分建物でも表題部所有者しか保存登記を申請できない」は誤り。「敷地権付きでも承諾なしで保存登記できる」も誤り。
事件の結論
今日の話を平成28年問14の4つの肢でまとめるで。
新築から1か月以内に申請義務があるんは「表題登記」や(不動産登記法47条1項)。
問題文は「所有権の保存の登記」と書いとる。所有権保存登記は権利登記で原則申請義務なし。
せやからこの肢は誤りや。
抵当権も賃借権も不動産登記法3条で登記できる権利として明示されとる。
正しい。
建物が滅失したら表題部所有者または所有権の登記名義人が滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請する義務がある(不動産登記法57条)。
正しい。
区分建物では表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できる(不動産登記法74条2項)。
正しい。
新築健治さんには明日朝一で連絡して、表題登記の手続きを進めてもらいます。
それから滅失一郎さんにも滅失登記の話を伝えて、専有由香さんの保存登記は敷地権の承諾がちゃんとあるか確認します。
賃借権登記の件は、お客さんに「制度上はできるけど、賃貸人の協力が前提だから現実的には借地借家法の対抗要件で済ますのが普通です」と説明します。
壱星くんはきっちりメモ取って整理する癖がついとるから、お客さんへの説明も間違いないやろ。
……あ、もうこんな時間ですね。
今日もお邪魔しました。
壱星はメモ帳を閉じて、こむぎちゃんに会釈をしてから事務所を出て行った。
私、ああいう真面目な後輩キャラ好きです!弟みたいで。
登記田は窓の外を見ながら、肩をすくめて小さく笑った。
試験のひっかけメモ
- 表題登記と所有権保存登記は別物: 新築から1か月以内に申請義務があるのは「表題登記」(不動産登記法47条1項)。「所有権の保存の登記」と書いてあったら誤り。所有権保存登記は権利に関する登記なので原則申請義務なし。最頻出のひっかけ
- 表示に関する登記には申請義務、権利に関する登記には原則として申請義務なし: 例外は令和6年4月施行の相続登記義務化(3年以内・10万円以下の過料)
- 登記できる権利は10種類: 所有権・地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・配偶者居住権・採石権(不動産登記法3条)。「賃借権は債権だから登記できない」は誤り
- 滅失登記も1か月以内・申請義務あり: 表題部所有者または所有権の登記名義人が申請(不動産登記法57条)。建物の「死亡届」
- 区分建物の保存登記の特則: 表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できる(不動産登記法74条2項前段)。敷地権付き区分建物では敷地権登記名義人の承諾が必要(同項後段)
- 過料の規定: 表題登記・滅失登記等の申請義務違反には10万円以下の過料(不動産登記法164条)
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
つまり、建物にも人と同じく一生があるってことですよね!
建物が生まれたら出生届として表題登記を1か月以内に出して、所有者が決まったら住民登録として所有権保存登記をして、誰かと結婚したら婚姻届として2つの建物が合体する合筆登記をして、引越ししたら転居届として地番変更登記をして、子どもができたら子の出生届として分筆登記をして、最後に死んだら死亡届として滅失登記を1か月以内に出すんですね!
しかも区分建物のマンションは特別なので、集合住宅特例で住民票が一括で発行できます!
賃借権は債権だから本当は登記できないんですけど、可哀想だから特別に登記させてあげるお情け制度です!
配偶者居住権は離婚しても住み続けられる権利なので、別れた旦那の家にずっと住める復讐権として人気です!
うちの伯母さんの出生届はギリギリセーフだったので、新築健治さんも今すぐ駆け込めばギリギリセーフですね!
半年経ってますけど、役所が優しければセーフです!
合筆は建物の結婚ちゃうし、配偶者居住権は離婚した相手の家に住める権利ちゃう!
正確に言うで!!
表示に関する登記は不動産の物理的現況を公示するもんで、表題部に記録される。
表題登記は新築建物の所有権取得から1か月以内の申請義務(不動産登記法47条1項)!
滅失登記は建物滅失から1か月以内の申請義務(同57条)!
どっちも違反したら10万円以下の過料(同164条)!
対して所有権保存登記は権利に関する登記やから原則として申請義務はない!
登記できる権利は所有権・地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・配偶者居住権・採石権の10種類で、賃借権もちゃんと含まれる(同3条)!
配偶者居住権は2020年民法改正で創設された、亡くなった配偶者の家に終身住み続けられる権利や!
区分建物は表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できて、敷地権付きなら敷地権登記名義人の承諾が必要や(同74条2項)!
半年経った新築健治さんはもう義務違反で、過料の対象になり得る!
「役所の優しさ」やない、申請してできるだけ早う現況に合わせるんが筋や!
平成28年問14は肢1が誤りで正解は1!
今回のまとめ
不動産登記の世界は「表示に関する登記」と「権利に関する登記」の2つに大きく分かれる。前者は不動産の物理的現況を公示するもので表題部に記録され、申請義務がある。後者は権利関係を公示するもので権利部に記録され、原則として申請義務はない(令和6年4月から相続登記のみ例外的に義務化)。建物の登記の一生は、新築時の表題登記から始まり、所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記等を経て、最後に滅失登記で終わる。
①表示に関する登記と権利に関する登記の区別: 表示登記は表題部に記録、申請義務あり、登記官の職権登記もあり、登記原因証明情報は不要。権利登記は権利部(甲区・乙区)に記録、原則として申請義務なし、登記原因証明情報が必要、職権登記は原則ない。
②新築建物の表題登記の申請義務: 新築建物または表題登記がない建物の所有権を取得した者は、所有権取得から1か月以内に表題登記を申請する義務(不動産登記法47条1項)。違反には10万円以下の過料(同164条)。
③表題登記と所有権保存登記の違い: 表題登記は表示に関する登記で申請義務あり。所有権保存登記は権利に関する登記で原則申請義務なし。混同させるのが試験の頻出ひっかけ。
④登記できる権利(不動産登記法3条): 所有権・地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・配偶者居住権・採石権の10種類。賃借権は例外的に登記が認められている。
⑤滅失登記の申請義務: 建物が滅失したら表題部所有者または所有権の登記名義人は滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請する義務(不動産登記法57条)。違反には10万円以下の過料。
⑥区分建物の所有権保存登記の特則: 区分建物では表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できる(不動産登記法74条2項前段)。敷地権付き区分建物の場合は敷地権登記名義人の承諾が必要(同項後段)。デベロッパーから購入者への中間省略を可能にする実務配慮。
⑦実務上の鉄則: 新築したらまず表題登記、続けて所有権保存登記、というのが建物登記の入口。建物を取り壊したらすぐ滅失登記。賃借権登記は制度上可能だが実務ではほぼ使われず、借地借家法の対抗要件で代替するのが普通。
| 表示に関する登記 vs 権利に関する登記 | 表示に関する登記 | 権利に関する登記 |
|---|---|---|
| 記録される場所 | 表題部 | 権利部(甲区・乙区) |
| 公示する内容 | 不動産の物理的現況 | 不動産の権利関係 |
| 申請義務 | あり(過料あり) | 原則なし(相続登記のみ例外) |
| 登記原因証明情報 | 不要 | 必要 |
| 登記官の職権登記 | あり得る | 原則なし |
| 代表例 | 表題登記、滅失登記、分筆・合筆登記、地目変更登記 | 所有権保存・移転登記、抵当権設定登記、賃借権設定登記 |
| 建物の一生と登記 | 段階 | 登記 | 申請義務 |
|---|---|---|---|
| 出生 | 新築 | 表題登記 | あり(1か月以内) |
| 命名 | 所有者確定 | 所有権保存登記 | なし |
| 結婚・離婚 | 売買・贈与等 | 所有権移転登記 | なし(相続のみ義務) |
| 借金 | 担保提供 | 抵当権設定登記 | なし |
| 死亡 | 取り壊し等 | 滅失登記 | あり(1か月以内) |
| 登記できる権利(不動産登記法3条) | 種類 |
|---|---|
| 所有権 | 物の支配権 |
| 用益物権 | 地上権、永小作権、地役権、採石権 |
| 担保物権 | 先取特権、質権、抵当権 |
| 債権(例外) | 賃借権 |
| 居住権 | 配偶者居住権(2020年新設) |
| 平成28年問14 各肢 | 正誤 | 根拠 |
|---|---|---|
| 肢1(新築1か月以内に「所有権の保存の登記」を申請する義務) | ❌ | 義務があるのは「表題登記」(不動産登記法47条1項) |
| 肢2(登記できる権利に抵当権・賃借権が含まれる) | ◯ | 不動産登記法3条 |
| 肢3(建物滅失時の1か月以内の滅失登記の申請義務) | ◯ | 不動産登記法57条 |
| 肢4(区分建物では取得者も保存登記を申請できる) | ◯ | 不動産登記法74条2項 |
| 正解:1(誤り) |