プロローグ:こむぎちゃん、マンションのゴミ出しで怒られる
朝の事務所。こむぎちゃんが浮かない顔をしていた。
改善されない場合は管理組合で対応します』って張り紙がされてたんです…
あと自転車置き場に傘を置いてたら注意されました
マンションはみんなで住む建物やからな。
共有部分のルールを守らんと、他の住民に迷惑がかかるんや
マンションには一戸建てにはないルールがたくさんある。
そして不動産取引でも、マンション特有の説明事項いうのが増えるんやで
そのとき、事務所のドアが勢いよく開いた。
南向壱星が、ノートを片手に元気よく入ってきた。前回・前々回と比べて、明らかに表情が明るい。
こむぎちゃんが感心した。
壱星が少し照れた表情を見せたが、すぐにノートを開いた。
登記田が頷いた。
マンションは"みんなで住む建物"や。
だから共有部分のルールや管理に関する説明事項が増えるんやで。
一つずつ見ていこか
相談①「マンションの重説、何が増える?」
マンション、正式には区分所有建物と呼ぶんやけど、通常の売買・賃貸の重説に追加で説明すべき事項がある
登記田がホワイトボードに表を書いた。
| マンション特有の説明事項 | 売買 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 敷地に関する権利の種類・内容 | 必要 | 必要 |
| 共用部分に関する規約の定め | 必要 | 必要 |
| 専有部分の利用制限に関する規約の定め | 必要 | 必要 |
| 費用の減免に関する規約の定め | 必要 | 必要 |
| 管理の委託先 | 必要 | 必要 |
| 1棟の建物の敷地に関する権利 | 必要 | 不要 |
| 専用使用権に関する規約の定め | 必要 | 不要 |
| 修繕積立金に関する規約の定め・滞納額 | 必要 | 不要 |
| 管理費・滞納額 | 必要 | 不要 |
| 維持修繕の実施状況の記録 | 必要 | 不要 |
下の5つは売買のみや
壱星がメモしながら言った。
覚え方ってありますか?
敷地の権利、共用部分の使い方、ペット禁止などの利用制限、費用の減免、そして管理の委託先。
借りる人にとっても管理会社がどこかは大事やからな。
売買だけなのは"所有者としてのお金と記録"。
修繕積立金、管理費、滞納額、専用使用権、修繕記録。
借りる人はこのあたりのお金を直接払わんからな
こむぎちゃんが言った。
足す項目が多いから大変なんやろ。
特に修繕積立金と管理費の滞納額は試験でも実務でもめちゃくちゃ重要やで。
次で詳しくやるわ
該当する例:マンション賃貸の重説で、専有部分の利用制限(ペット禁止)に関する規約を説明 → 適正
該当しない例:マンション賃貸の重説で、修繕積立金の額を説明 → 不要(売買のみの事項)
相談②「管理規約やお金の話って?」
売買のときに説明する項目を詳しく見ていくで
⑤ 1棟の建物の敷地に関する権利の種類・内容
マンション全体の敷地が所有権なのか借地権なのか。借地権の場合は、地代の額や借地契約の期間なども説明する。
⑥ 共用部分に関する規約の定め(案を含む)
エントランス、廊下、エレベーターなどの共用部分について、管理規約でどういうルールが定められているか。まだ規約が制定されていない新築マンションの場合は「案」の段階でも説明が必要。
⑦ 専有部分の利用制限に関する規約の定め(案を含む)
ペット禁止、事務所利用不可、楽器演奏の時間制限など。これも「案」の段階で説明が必要。
買う前にそれを知らせるのが重説の役割やな
⑧ 専用使用権に関する規約の定め
共用部分の一部を特定の住民だけが使えるルール。たとえば1階の住民だけが使える専用庭や、特定の区画に割り当てられた駐車場など。
⑨ 修繕積立金に関する規約の定め
毎月いくら積み立てるか、そして前の所有者が滞納している額がある場合はその額を説明する。
壱星が質問した。
マンションの修繕積立金や管理費の滞納は、区分所有法の規定で新しい所有者に引き継がれるんや。
つまり買った人が前の人の滞納分を負担する可能性がある
壱星が驚いた。
事前に知らないと大変なことになりますね
滞納額があるかないか、あるならいくらか。
これを伝えんと、買った後に"聞いてない"というトラブルになる
⑩ 管理費に関する事項
修繕積立金と同じく、毎月の管理費の額と滞納額がある場合はその額を説明する。
⑪ 管理の委託先
マンションの管理を委託している場合、管理会社の名称と住所を説明する。
⑫ 1棟の建物の維持修繕の実施状況の記録
過去に行われた大規模修繕や設備の修繕工事の記録がある場合、その内容を説明する。
記録がある場合に説明する。
調査や修繕を実施する義務はない
該当する例:マンション売買の重説で、修繕積立金の月額と前所有者の滞納額30万円を説明 → 適正
該当しない例:マンション売買の重説で、管理費の滞納額があるのに「滞納はありません」と説明 → 不実告知で違法
相談③「供託所の説明って何?」
これは重説シリーズの締めくくりや
壱星が首をかしげた。
あ、もしかして営業保証金や弁済業務保証金の話ですか?
以前やった営業保証金と弁済業務保証金の話がここに繋がるんや
登記田が説明を始めた。
供託所等に関する説明とは:
宅建業者は、契約が成立するまでの間に、取引の相手方に対して以下の事項を説明しなければならない。
- 営業保証金を供託している場合:供託所の名称と所在地
- 保証協会に加入している場合:保証協会の名称・住所・事務所の所在地
壱星が目を輝かせた。
あのとき学んだ内容がここで活きるんですね!
登記田がホワイトボードに書いた。
| 35条の重要事項説明 | 供託所等の説明 | |
|---|---|---|
| 説明する者 | 宅建士 | 宅建士でなくてもよい |
| 書面の交付 | 必要(35条書面) | 不要 |
| 説明の時期 | 契約成立前 | 契約成立前 |
| 宅建士証の提示 | 必要 | 不要 |
こむぎちゃんが言った。
説明する義務自体はあるんやで。
"楽"いう話やない。
ただ35条の重説と比べて、形式的な要件が軽いいうだけや。
契約成立前に説明するいう点は同じやから、忘れたらあかんで
該当する例:宅建士ではない従業者が、契約前に供託所の名称と所在地を口頭で説明 → 適正
該当しない例:供託所等の説明を一切行わずに契約を締結 → 義務違反
エピローグ:壱星の成長と重説シリーズの完結
壱星がノートを閉じた。3回にわたる重説シリーズのメモがびっしりと詰まっている。
売買の基本、賃貸との違い、マンション特有の事項、そして供託所の説明…。
最初は先輩の重説が呪文にしか聞こえなかったのに、今なら全部の項目が何のためにあるか説明できます
登記田が嬉しそうに頷いた。
大した成長やで
本当にありがとうございます
こむぎちゃんがぱちぱちと拍手した。
3回で重説マスターですね!
壱星が一瞬だけ、こむぎちゃんの笑顔に目を留めた。が、すぐに真剣な表情に戻った。
重説の次は何を勉強すればいいですか?
登記田がコーヒーカップを置いて言った。
重説が契約"前"の説明なら、37条書面は契約"後"の書面や。
セットで覚えるのが鉄則やで
また来ます!
壱星は力強く事務所を出て行った。
登記田がつぶやいた。
こむぎちゃんがニコニコしながら言った。
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「マンションの修繕積立金の説明は売買でも賃貸でも必要」 → 修繕積立金・管理費・滞納額の説明は売買のみ。賃貸では不要。
ひっかけ②「修繕積立金の滞納額は、前所有者の問題なので説明不要」 → 滞納額は新所有者に引き継がれるため、必ず説明が必要。試験超頻出。
ひっかけ③「供託所等の説明は宅建士が行わなければならない」 → 供託所等の説明は宅建士でなくてもよい。35条の重説と混同しない。
ひっかけ④「新築マンションは規約がまだないので、共用部分の説明は不要」 → 規約が制定されていなくても、「案」の段階で説明が必要。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが腕を組んだ。
マンションのルールが多すぎるなら、一戸建てに引っ越せば全部解決!
重説もシンプルになって一石二鳥!
いいか、マンション特有の説明事項は"共有のルール"が中心!
修繕積立金と管理費は滞納額も含めて売買で必要!
規約は"案"の段階でも説明義務あり!
供託所等の説明は宅建士でなくてもOK・書面不要・でも契約前に説明は必要!
ゴミの分別もできてないキミが引っ越しを語るな!
今回のまとめ
【マンション特有の説明事項(売買・賃貸共通)】
- 敷地に関する権利の種類・内容
- 共用部分に関する規約の定め
- 専有部分の利用制限に関する規約の定め
- 費用の減免に関する規約の定め
- 管理の委託先(管理会社の名称・住所)
【マンション特有の説明事項(売買のみ)】
- 1棟の建物の敷地に関する権利
- 共用部分に関する規約の定め(案を含む)
- 専有部分の利用制限に関する規約の定め(案を含む)
- 専用使用権に関する規約の定め(駐車場・専用庭等)
- 修繕積立金の額・滞納額がある場合はその額
- 管理費の額・滞納額がある場合はその額
- 維持修繕の実施状況の記録(記録がある場合)
【供託所等に関する説明】
- 営業保証金の供託所 or 保証協会の名称・住所等を説明
- 宅建士でなくてもよい(35条の重説とは異なる)
- 書面交付は不要
- 契約成立前に説明する点は35条重説と同じ
【覚え方の整理】
- 賃貸でも必要 → 住むうえで直接影響するルール(敷地の権利、共用部分、利用制限、費用の減免)
- 売買だけ → 所有者としてのお金と管理(修繕積立金、管理費、滞納額、専用使用権、管理委託先、修繕記録)
- 滞納額は新所有者に引き継がれる → だから重説で説明が必要(試験超頻出)
- 規約の「案」でも説明が必要 → 新築マンションでも省略できない