プロローグ:こむぎちゃん、会員ビジネスに目覚める(?)
朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを眺めながらニコニコしている。
世の中、会員になるとお得なことだらけなんですよ!
会費だけ払って使ってないパターンやろ
実はな、不動産業界にも――
バンッ!
事務所のドアが勢いよく開いた。
来ました!!
前回の続き、教えてください!!
息を切らして飛び込んできたのは、敷地倫太郎。前回、営業保証金1,000万円と聞いて絶望して帰った男だ。目がギラギラ輝いている。
あの日から気になって気になって、夜も眠れなくて…
今日は弁済業務保証金の話を全部教えたるわ
こむぎちゃんが敷地にお茶を出しながら言った。
相談①「保証協会って何?」
前回、営業保証金は本店1,000万円・支店500万円いう話をしたやろ
正式には宅地建物取引業保証協会という
保証協会のポイント:
① 加入は任意
強制ではない。入りたい業者だけが入る。ただし、実際にはほとんどの中小不動産会社が加入している。
② 加入できる協会は2つ
全国宅地建物取引業保証協会(ハトマーク)と、不動産保証協会(ウサギマーク)の2つがある。1つの協会にしか加入できない(両方に入ることはできない)。
こむぎちゃんがここで口を開いた。
どちらか1つだけや
二股は禁止やで
三者の関係:
宅建業者 →(弁済業務保証金分担金を納付)→ 保証協会 →(弁済業務保証金を供託)→ 供託所
でも弁済業務保証金の場合は、業者は保証協会にお金を納付して、保証協会が代わりに供託所に供託してくれるんや
敷地が前のめりになった。
該当する例:宅建業者が保証協会に加入し、分担金を納付 → 保証協会が供託所に弁済業務保証金を供託
該当しない例:保証協会に加入したが、分担金を納付していない → 保証協会が供託できないため、事業開始の届出ができない
相談②「で、いくらなの?」
本店(主たる事務所):60万円
支店(従たる事務所)1ヶ所につき:30万円
敷地が目を見開いた。
敷地が椅子から立ち上がりそうになっている。登記田は続けた。
| 営業保証金(直接供託) | 弁済業務保証金(保証協会経由) | |
|---|---|---|
| 本店 | 1,000万円 | 60万円 |
| 支店1ヶ所 | 500万円 | 30万円 |
| 本店+支店2ヶ所 | 2,000万円 | 120万円 |
圧倒的にお金が少なくて済む
敷地がガッツポーズをした。
60万円なら…
いける!
と登記田は釘を刺した。
該当する例:本店のみの業者が保証協会に加入し、60万円を納付 → 1,000万円の供託は不要
該当しない例:保証協会に加入しつつ、営業保証金も供託する → 二重に預ける必要はない(どちらか一方)
相談③「支店を出したらどうなる?」
前回は追加で500万円って言ってましたけど…
この期限を過ぎると社員としての地位を失うことになる
つまり保証協会から追い出されるいうことや
敷地の顔が引き締まった。
それは覚えておかないと
該当する例:支店新設から10日後に保証協会へ30万円を納付 → 期限内で適正
該当しない例:支店新設から3週間後に納付 → 2週間を超えているため社員の地位を失う
相談④「お客さんへの還付はどうなる?」
営業保証金と同じように、弁済業務保証金からも還付を受けることができる
でも、60万円しか納付してないのに…
還付はいくらまで受けられるんですか?
還付を受けられるのは:「保証協会の社員(宅建業者)と宅建業に関する取引により生じた債権を有する者」
業者同士の取引は対象外いうのは営業保証金と同じやで
こむぎちゃんが驚いた。
キミがもらえるわけちゃうわ
取引で損害を受けたお客さんが弁済を受ける制度や
投資でもお得でもないで
そして還付の上限がここのポイント。
還付の上限は「その業者が営業保証金で供託していた場合の金額」
【事例で理解】
本店のみの宅建業者Aが保証協会に加入。分担金60万円を納付済み。
お客さんBがA社との取引で800万円の損害を受けた。
→ Bが還付を受けられる上限は1,000万円(=Aが営業保証金で供託していたとすれば本店1,000万円だったから)
→ 800万円の損害なので、800万円全額が還付の対象になる。
お客さんの保護レベルは営業保証金と同じなんやで
ここでの注意点は、還付請求の流れや。供託所に直接請求するのではなく、まず保証協会の認証を受けてから供託所に請求する。
該当する例:一般消費者が保証協会の社員との売買取引で損害を受け、保証協会の認証を経て弁済業務保証金から弁済を受けた → 還付の正しい流れ
該当しない例:宅建業者同士の取引で損害を受け、弁済業務保証金から弁済を求めた → 業者間取引は還付の対象外
相談⑤「還付されたら穴埋めは?」
ここで3つの仕組みが出てくるで
① 還付充当金
保証協会が「あなたの分から還付があったから、不足分を納付しろ」と社員(宅建業者)に通知する。社員は通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付しなければならない。
さっきの事例の続きや
【事例で理解】
本店のみの業者Aが保証協会に加入(分担金60万円納付済み)。お客さんBに800万円が還付された。
→ 供託所にある弁済業務保証金が800万円分減った → 保証協会がA社に通知:「還付充当金800万円を納付しなさい」 → A社は通知から2週間以内に800万円を保証協会に納付しなければならない
敷地が顔をしかめた。
保証協会はあくまで"立替え"の仕組みやから、最終的な負担は原因を作った業者本人に戻ってくるんや
だからトラブルを起こさんことが一番大事やで
② 弁済業務保証金準備金
保証協会が、将来の還付に備えてあらかじめ積み立てておくお金。社員から集めた分担金の一部を準備金として積み立てておく。いわば保証協会の貯金箱。
③ 特別弁済業務保証金分担金
社員全員でお金を出し合う仕組みがある
これが特別弁済業務保証金分担金や
保証協会から通知を受けた日から1ヶ月以内に、社員全員が負担割合に応じて納付しなければならない。
こむぎちゃんが目を丸くした。
保証協会はみんなで支え合う仕組みやからな
その代わり60万円で開業できるわけや
助け合いの裏返しやで
この3つの違いを整理するとこうなる。
| 還付充当金 | 弁済業務保証金準備金 | 特別弁済業務保証金分担金 | |
|---|---|---|---|
| 誰が負担? | 還付の原因となった社員(業者) | 保証協会が積み立て | 社員全員で負担 |
| いつ? | 還付が起きた後に通知→2週間以内 | 還付に備えて事前に積み立て | 準備金が不足したとき→通知から1ヶ月以内 |
| 性質 | 個別の事後の穴埋め | 事前の備え | 全体の緊急穴埋め |
特別弁済業務保証金分担金を1ヶ月以内に納付しなかった場合も同様や
期限は絶対に守らなあかんで
該当する例:還付発生 → 保証協会から通知 → 原因業者が10日後に還付充当金を納付 → OK
該当しない例:還付発生 → 通知を受けたが3週間放置 → 社員の地位を失う
相談⑥「保証協会を辞めたらどうなる?」
敷地が恐る恐る聞いた。
どうなるんですか?
社員の地位を失ったら、1週間以内に営業保証金を供託しなければならない
しかも営業保証金って…
1,000万円ですよね!?
できなければ営業できんくなる
こむぎちゃんが震えている。
おしまいちゃうわ
1週間以内に営業保証金を供託すれば事業は続けられる
ただ、1,000万円を1週間で用意できるかいう現実的な問題はあるけどな
だから、保証協会の社員としての義務(分担金の納付期限、還付充当金の期限)をきっちり守ることが大事。
該当する例:保証協会を脱退 → 1週間以内に営業保証金1,000万円を供託 → 営業継続OK
該当しない例:保証協会を脱退 → 1週間を超えても供託しない → 営業できない
相談⑦「供託金は返ってくる?」
取戻しのルールは営業保証金と基本的に同じ考え方。
取戻しができる主なケース:
- 社員が地位を失ったとき(脱退・除名など)
- 事務所を減らして、分担金が超過しているとき
ただし、社員の地位を失って1週間以内に営業保証金を供託した場合は、公告なしで取り戻せる
すでに営業保証金で供託し直してるから、お客さんの保護は確保されてるいうことですね
該当する例:保証協会を脱退し、営業保証金を供託済み → 公告なしで弁済業務保証金分担金の返還を受けられる
該当しない例:廃業に伴う取戻し → 6ヶ月以上の公告が必要
相談⑧「保証協会は他に何をしてくれる?」
お金を預かるだけちゃうで
保証協会の主な業務:
① 苦情の解決 お客さんから社員(宅建業者)に対する苦情を受け付け、解決に向けて対応する。社員はこの苦情解決に協力する義務がある。
② 研修の実施 社員である宅建業者や、その従業員に対して研修を行う。
③ 弁済業務 ここまで説明してきた弁済業務保証金の制度を運営する。
④ 一般保証業務(任意業務) 手付金等の保全措置など。これはすべての協会がやっているわけではない任意の業務。
こむぎちゃんが感心した様子で言った。
該当する例:お客さんが保証協会に宅建業者の対応について苦情を申し立て → 協会が解決に動く
該当しない例:宅建業者が保証協会に「社員同士のトラブル」を持ち込む → 保証協会は業者間トラブルの解決機関ではない
エピローグ:敷地の復活
敷地が立ち上がった。前回とは別人のような顔をしている。
いや、用意します!
でも保証協会に入れば、1,000万円じゃなくて60万円で開業できる
お客さんの保護も同じレベルで確保される
これって本当にありがたい仕組みですね
ただし、2週間以内の納付期限を破ったら社員の地位を失うし、辞めたら1週間以内に1,000万円の供託が必要になる
入ってからがスタートやいうことは忘れんときや
…あの、次は何を準備すればいいですか?
事務所の設置要件、専任の宅建士の配置、標識の掲示…
でもまあ、今日のところは60万円の喜びに浸っとき
敷地は何度も頭を下げて、事務所を出て行った。その足取りは、前回とはまるで違う軽やかさだった。
こむぎちゃんがしみじみ言った。
きっとほんまに独立するやろな
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「弁済業務保証金分担金は保証協会ではなく供託所に納付する」 → 分担金の納付先は保証協会。供託所に供託するのは保証協会の仕事。業者が直接供託所に行くのは営業保証金の話。
ひっかけ②「還付の上限は、保証協会に納付した分担金の金額まで」 → 還付の上限は営業保証金として供託していた場合の金額(本店1,000万・支店500万)。60万円ではない。
ひっかけ③「社員の地位を失ったら2週間以内に営業保証金を供託」 → 1週間以内。2週間ではない。数字のすり替えに注意。「2週間」は事務所新設時の分担金納付期限や還付充当金の納付期限。
ひっかけ④「保証協会には必ず加入しなければならない」 → 加入は任意。強制ではない。ただし加入しなければ営業保証金を全額供託する必要がある。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
こむぎちゃんが拳を握った。
今日の教訓は――
会員になるとお得!
コストコも保証協会も年会費を払えば1,000万円分の買い物ができる!
保証協会は60万円の分担金で営業を開始できる仕組みであって、1,000万円分の買い物ができるわけちゃう!
還付の上限が1,000万円いう話や!
あと事務所新設は2週間以内に納付!
社員の地位を失ったら1週間以内に営業保証金を供託!
コストコのカードの話はもうええわ!
今回のまとめ
- 保証協会への加入は任意。加入すれば営業保証金の供託は不要になる
- 分担金は本店60万円、支店1ヶ所30万円(営業保証金の約17分の1)
- お金の流れ:宅建業者→保証協会(分担金を納付)→供託所(保証協会が供託)
- 事務所新設時は2週間以内に保証協会へ分担金を納付
- 還付の上限は「営業保証金として供託していた場合の金額」(本店1,000万・支店500万)
- 還付後の補充:保証協会から通知 → 原因業者が2週間以内に還付充当金を納付(還付された金額と同額)
- 弁済業務保証金準備金は保証協会が将来の還付に備えて事前に積み立てるお金
- 準備金でも足りない場合は特別弁済業務保証金分担金として社員全員が通知から1ヶ月以内に納付
- 社員の地位を失ったら1週間以内に営業保証金を供託しなければならない
- 取戻しには原則6ヶ月以上の公告が必要(営業保証金供託済みの場合は公告不要)
- 保証協会の業務:苦情解決・研修・弁済業務など