プロローグ:こむぎちゃん、貯金に目覚める(?)
朝の事務所。こむぎちゃんが電卓を叩きながら唸っている。
私の貯金、3万2千円しかありませんでした
あ、でも先月の閉店セールで雑貨を買って、その前にタピオカの新作を全種類制覇して、あと推しのグッズが…
貯金って、いざというときのために取っておくものなんだなって!
まあ、お前も少しは大人になったいうことやな
そのとき、事務所のドアが開いた。
気さくな笑顔で入ってきたのは、敷地倫太郎(32歳)。不動産会社に勤務する男性で、以前から不動産がらみの案件で登記田探偵に相談や依頼をしてきた顔なじみだ。
でも他にどんな準備がいるのかがわからなくて
特にお金まわりのことを教えてほしいんです
登記田はこむぎちゃんの方を見た。
さっき"いざというときのお金"の話をしてたやろ
実はな、不動産会社にも同じような仕組みがあるんや
営業保証金いう制度、敷地くんは知っとるか?
相談①「営業保証金って何?」
これはな、宅建業者がお客さんに損害を与えてしまったときに、そのお金から弁償できるようにしておく制度や
敷地が頷く。
不動産取引は金額が大きいから、業者がやらかしたときにお客さんが泣き寝入りせんように、あらかじめお金を預けておく仕組みなんや
こむぎちゃんがここで口を開いた。
『何かあったらこれ使ってください』って!
お客さんに直接渡すんちゃうわ
お金は供託所いう国の機関に預けるんや
これを『供託する』と言うんやで
該当する例:宅建業者が供託所に営業保証金を供託し、お客さんとの取引でトラブルが起きた際にそこから弁償される → 制度の正しい使い方
該当しない例:営業保証金を会社の金庫に保管しておく → 供託所に預けないと意味がない
相談②「具体的にいくら?どこに供託する?」
登記田は少し間を置いた。
敷地の目が見開いた。こむぎちゃんも固まっている。
本店1つと支店2つなら、1,000万+500万+500万で合計2,000万円になる
ここに一括で預ける
支店がどこにあっても、供託するのは本店の最寄りや
そして供託の流れはこうなる。
① 免許を取得する
② 供託所に営業保証金を供託する
③ 免許権者(知事or大臣)に届出をする
④ 届出が完了してから事業を開始する
免許を取っても、供託と届出が終わるまでは営業を始められへん
こむぎちゃんが言った。
いま真逆のこと説明したやろ。供託して、届出して、それから営業開始や
フライングしたら法律違反やで
ちなみに、供託は現金だけでなく、一定の有価証券(国債など)でも可能。ただし有価証券の場合は額面通りではなく、評価額で計算される。
該当する例:免許取得後、供託所に1,000万円を供託し、知事に届出をしてから営業開始 → 正しい手順
該当しない例:免許取得後、供託前に「1件だけなら大丈夫だろう」と営業を開始 → 違法
相談③「支店を出したらどうなる?」
敷地が気を取り直して質問してきた。
支店1ヶ所につき500万円やな
供託したあとは、同じように免許権者に届出をする。届出が完了するまで、その新しい事務所では事業を開始できない。
だから不動産会社の出店戦略って、ほんまにお金がかかるんやで
該当する例:東京の本店に加え、大阪に支店を新設 → 追加で500万円を供託し、届出後に営業開始
該当しない例:支店を新設したが、追加の供託をしないまま営業を開始 → 違法
相談④「本店を移転したらどうなる?」
本店を移転して最寄りの供託所が変わる場合は、保管替えいう手続きが必要になる
保管替えとは、新しい最寄りの供託所に営業保証金を移し替えること。具体的には、新しい供託所に供託し直す手続きを行う。
有価証券が含まれている場合は、新しい供託所に新たに供託してから、前の供託所から取り戻すいう二段階の手続きになるんや
こむぎちゃんが言った。
お金を段ボールに詰めて運ぶ話ちゃうわ
法的な手続きで移し替えるんやで
該当する例:本店移転で最寄りの供託所が変わった → 保管替え(現金のみの場合)または新たな供託+旧供託所から取戻し
該当しない例:本店を移転したが、最寄りの供託所は変わらなかった → 保管替え不要
相談⑤「お客さんが損したら?」
宅建業者との取引で損害を受けたお客さんは、営業保証金から弁済を受けることができる。これを還付という。
業者同士の取引では還付は受けられへん
そして還付が実行されて営業保証金が減った場合、宅建業者は免許権者から通知を受けた日から2週間以内に不足額を補充せなあかん
結構タイトですね
補充しなかったら業務停止処分の対象にもなりうる
厳しい世界やで
該当する例:一般消費者が宅建業者との売買取引で損害を受け、営業保証金から弁済を受けた → 還付の正しい使い方
該当しない例:宅建業者Aが宅建業者Bとの取引で損害を受け、Bの営業保証金から弁済を求めた → 業者間取引は還付の対象外
相談⑥「廃業したら供託金は返ってくる?」
取戻しができる主なケース:
- 廃業等の届出をしたとき
- 免許取消処分を受けたとき
- 事務所を減らして、供託額が超過しているとき
- 保管替え等で新たに供託した後、前の供託所から移し替えるとき
公告が必要:廃業・免許取消・事務所減少による取戻し → 6ヶ月以上の期間を定めて、「債権がある人は申し出てください」と公告する
公告が不要:保管替えに伴う取戻し → すでに新しい供託所に供託済みなので、お客さんの保護に問題がない
その間は取り戻せへんから、すぐにはお金は手元に戻らん
該当する例:廃業に伴い営業保証金を取り戻す → 6ヶ月以上の公告期間を経てから取戻し
該当しない例:保管替えに伴い旧供託所から取り戻す → 公告不要で取戻しOK
エピローグ:敷地の絶望と希望の光
話を聞き終えた敷地が、テーブルに突っ伏した。
独立の夢、終わったかもしれません…
こむぎちゃんがオロオロしている。
私の貯金3万2千円、差し上げます…!
997万足りないよ…
敷地がうなだれている。しかし、登記田はニヤリとした。
1,000万円が用意できへんかったら、もう不動産屋は無理なんか?
…そうでもないんやで
弁済業務保証金いう制度や
これを使えば、1,000万円が大幅に減額になる
敷地がガバッと顔を上げた。
それ、いくらになるんですか!?
また来てくれたら、全部教えたるわ
絶対また来ます!
敷地は名残惜しそうに事務所を出て行った。
こむぎちゃんが不思議そうに言った。
今日教えてあげればいいのに
それにな、今日の営業保証金の仕組みを理解しとかんと、弁済業務保証金の"ありがたみ"がわからんのよ
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「営業保証金の供託先は、免許権者の最寄りの供託所」 → 供託先は主たる事務所の最寄りの供託所。免許権者ではない。
ひっかけ②「供託すれば届出なしで営業できる」 → 供託後、免許権者への届出が必要。届出完了まで営業開始できない。
ひっかけ③「宅建業者同士の取引でも還付を受けられる」 → 還付を受けられるのは宅建業者と宅建業に関する取引をした者(業者を除く)。業者間取引は対象外。
ひっかけ④「取戻しの公告期間は3ヶ月」 → 公告期間は6ヶ月以上。3ヶ月ではない。数字のすり替えに注意。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
こむぎちゃんが目をキラキラさせた。
独立したかったら、まず閉店セールで1,000万円分の掘り出し物を見つけて、供託所に持っていけばOK!
いいか、営業保証金は本店1,000万円・支店500万円を主たる事務所の最寄りの供託所に供託する!
届出が終わるまで営業できない!
還付は業者間取引は対象外!
取戻しの公告は6ヶ月以上!
ここテストに出るで!
今回のまとめ
- 営業保証金は、お客さんを守るために宅建業者が供託所に預けるお金
- 金額は本店1,000万円、支店1ヶ所につき500万円
- 供託先は主たる事務所の最寄りの供託所
- 免許取得→供託→届出が完了してから営業開始(届出前の営業は違法)
- 事務所を新設したら追加供託+届出が必要
- 本店移転で最寄りの供託所が変わったら保管替えが必要
- 還付の対象は宅建業者との取引で損害を受けた者(業者間取引は対象外)
- 還付で不足が出たら通知から2週間以内に補充
- 取戻しには原則として6ヶ月以上の公告が必要(保管替えに伴う取戻しは公告不要)
- 1,000万円が用意できなくても、弁済業務保証金という方法がある(次回へ続く!)