プロローグ:こむぎちゃん、資格に目覚める(?)
朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを見ながらニヤニヤしている。
資格を取ります
何の資格や?
最近サラダにハマってて、これはもう運命かなって!
いいか、資格いうのはな、試験に受かって、登録して、証明書をもらう
この手順をちゃんと踏まなあかんのや
サラダを食べた回数は関係ないで
そんなやり取りをしていると、事務所のドアがおずおずと開いた。
入ってきたのは、22〜23歳くらいの青年。スーツ姿だが、ネクタイが少し曲がっている。緊張しているのか、手に持った名刺入れを落としそうになっている。
こむぎちゃんが駆け寄って名刺入れを支えた。
どうぞ、座ってください!
青年は差し出されたこむぎちゃんの笑顔を見て、一瞬だけ言葉に詰まった。
不動産会社で働いてるんですが、会社の先輩に『宅建のことで困ったら登記田探偵に聞け』って言われて…
壱星が姿勢を正した。
でも、何から始めればいいか全然わからなくて…
試験のこと、登録のこと、全体像を教えてもらえませんか?
私はこむぎちゃんの方をチラッと見た。
さっき資格の話をしてたところやねん
野菜ソムリエの話やったけどな
野菜ソムリエ…?
ほな壱星くん、宅建士になるまでの道のり、一から全部教えたるわ
相談①「宅建士になるまでの3ステップ」
宅建士になるには3つのステップがある
ステップ1:宅建試験に合格する
ステップ2:都道府県知事の登録を受ける
ステップ3:宅地建物取引士証の交付を受ける
試験に受かっただけでは宅建士ちゃうで
壱星が驚いた顔をした。
こむぎちゃんが割り込んだ。
合格通知と一緒に!
Amazonの注文ちゃうんやから、勝手に届いたりせえへんわ
自分で登録申請して、交付申請して、ようやく手に入るもんなんや
試験合格→登録→取引士証交付は、それぞれ別の手続き
省略はできへん
該当する例:試験合格後、登録を受け、取引士証の交付を受けた → 宅建士として業務ができる
該当しない例:試験に合格しただけで、登録も取引士証交付もしていない → 宅建士ではない(「合格者」ではあるが「宅建士」ではない)
相談②「宅建士にしかできない3つの仕事」
お客さんに説明する場面とか、書類にサインする場面とか…
宅建士でなければやったらあかん仕事が3つあるんや
① 重要事項の説明(35条書面の説明)
契約の前に、お客さんに対して物件の重要な情報を説明する。これは宅建士が取引士証を提示して行わなければならない。
② 35条書面(重要事項説明書)への記名
重要事項説明書に、宅建士が記名する。
③ 37条書面(契約書)への記名
契約が成立したあとに交付する書面に、宅建士が記名する。
資格を持ってない人がやったら法律違反になるんやで
壱星がメモを取りながら聞いている。真面目な子だ。
こむぎちゃんがここで言った。
社長だろうが会長だろうが、宅建士でなければこの3つはできん
逆に言えば、新入社員でも宅建士の資格があればできるんやで
該当する例:宅建士の資格を持つ入社1年目の社員が重要事項説明を行う → 適法
該当しない例:宅建士ではない営業部長が「ベテランだから」と重要事項説明を行う → 違法
壱星が目を輝かせた。
経験年数は関係ない
資格があるかないか、それだけの話や
相談③「まずは試験!どんな試験?」
受験するのに条件はありますか?
年齢、学歴、国籍、実務経験…全部不問や
誰でも受けられる
壱星がホッとした顔をした。
マークシート方式の4肢択一で50問、試験時間は2時間
合格ラインは年によって変わるけど、だいたい50問中35問前後が目安や
頑張ればいけますかね…
ちゃんと勉強すればな
該当する例:高校生(18歳)が受験して合格 → 有効(受験資格に年齢制限なし)
該当しない例:「大卒でないと受験できない」 → ウソ。学歴は不問
相談④「合格したらすぐ宅建士?」
ここにいくつかハードルがある
登録の主なポイント:
① 登録先は「試験に合格した都道府県の知事」
東京で試験に受かったら、東京都知事に登録申請する。勤務先が大阪でも、合格地の知事に登録するのがルール。
② 2年以上の実務経験が必要
宅建業の実務経験が2年以上ないと登録できない。ただし、実務経験がない場合は「登録実務講習」を受ければOK。国土交通大臣が指定する講習を受講すれば、2年の実務経験と同等とみなされる。
でも登録実務講習を受けるいう手がある
焦らんでもええで
こむぎちゃんが口を挟んだ。
講習を受けても登録申請と取引士証の交付申請はそれぞれ別に必要や
"一瞬"はない
一つずつ手続きを踏んでいくしかないんよ
該当する例:実務経験1年+登録実務講習修了 → 登録OK
該当しない例:実務経験なし、講習も未受講 → 登録できない
相談⑤「登録できないケースもある?」
これを欠格事由と言う
壱星が不安そうな顔をした。
登録の欠格事由の代表例:
- 宅建業法違反や一定の犯罪で罰金刑以上を受け、刑の執行が終わってから5年を経過していない者
- 成年被後見人、被保佐人に該当する場合(※ただし個別審査あり)
- 不正手段で試験に合格した者
- 事務禁止処分を受けて、処分期間中に本人の申請で登録消除された場合、消除から5年を経過していない者
- 宅建業の免許取消処分を受けた法人の役員で、取消しの日から5年を経過していない者
何かやらかしたら、基本的に5年間は登録できへん
こむぎちゃんが指を折って数えている。
該当する例:宅建業法違反で罰金刑を受けた者が、刑の執行後3年目に登録申請 → 登録不可(5年未経過)
該当しない例:交通違反の反則金を払った → 欠格事由に該当しない(反則金は罰金刑ではない)
相談⑥「宅建士がやらかしたらどうなる?」
資格を取ったらゴールやと思ったら大間違いや
① 指示処分
「こうしなさい」と具体的な指示を受ける処分。一番軽いが、これでも記録に残る。
② 事務禁止処分
1年以内の期間を定めて、宅建士の事務(独占業務)を行うことが禁止される。この処分を受けたら、取引士証を提出しなければならない。
③ 登録消除処分
最も重い処分。登録そのものが消される。宅建士ではなくなるということ。
けど、指示処分は業務を行った場所の知事も出せるんや
壱星が背筋を伸ばした。
宅建士は資格を持った専門家やから、その分責任も重い
でもそれだけお客さんから信頼される存在にもなれるいうことやで
該当する例:重要事項説明で虚偽の説明をした → 事務禁止処分や登録消除処分の対象
該当しない例:プライベートで交通違反をした → 宅建士としての処分対象にはならない
壱星の決意
壱星が深々と頭を下げた。メモ帳には、びっしりとメモが書かれている。
まずは試験に集中して、合格したら登録と講習を進めます!
わからんことがあったらいつでも来てええで
壱星が帰り支度をしていると、こむぎちゃんが声をかけた。
私が前に買った蛍光ペンのセット、まだ新品なので!
勉強頑張ってくださいね!
壱星は蛍光ペンを受け取りながら、ほんの少しだけ顔を赤くした。
こむぎちゃんは満面の笑みで手を振った。ただの親切心である。
壱星が出て行った後、登記田探偵は小さくつぶやいた。
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「試験に合格すれば宅建士として業務ができる」 → 合格だけではダメ。登録+取引士証の交付を受けて初めて宅建士。
ひっかけ②「登録は勤務先の都道府県知事に行う」 → 登録先は試験に合格した都道府県の知事。勤務先ではない。
ひっかけ③「事務禁止処分を受けても取引士証はそのまま持っていてよい」 → 事務禁止処分を受けたら取引士証を提出しなければならない。
ひっかけ④「欠格事由に該当したら一生登録できない」 → 多くの欠格事由は5年経過すれば登録可能になる。一生ではない。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、今日の教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが胸を張った。
今日の教訓は――
宅建士になるには試験に受かって、野菜ソムリエの講習を受けて、蛍光ペンをもらえばOK!
この3ステップや!
独占業務は重説・35条書面記名・37条書面記名の3つ!
登録には2年の実務経験か登録実務講習が必要!
欠格事由のキーワードは5年!
覚えることはシンプルなんやから!
今回のまとめ
- 宅建士になるまでの3ステップ:①試験合格 → ②知事の登録 → ③取引士証の交付
- 独占業務は3つ:重要事項説明、35条書面への記名、37条書面への記名
- 試験は年1回、10月第3日曜日。受験資格の制限なし。4肢択一50問
- 登録先は試験合格地の知事。2年以上の実務経験がなければ登録実務講習で代替可能
- 欠格事由のキーワードは「5年」。罰金刑以上、不正合格、処分歴など
- 業務処分は3段階:指示処分 → 事務禁止処分(取引士証の提出が必要)→ 登録消除処分
- 試験に受かっただけでは「宅建士」ではない。登録+取引士証交付まで完了して初めて宅建士