宅建にチャレンジ 宅建業法

第1話:畑を売ったら違法ですか?(宅建業の定義を推理で解く)

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プロローグ:こむぎちゃん、定義に悩む

ここは登記田探偵事務所。不動産にまつわるトラブルや疑問を、関西弁の探偵・登記田(ときた)が鮮やかに解決する――はずなのだが、今日も助手のこむぎちゃんが朝から妙なことを言い出した。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
登記田さん、"料理"の定義ってなんだと思いますか?
…朝から何を言うとるんや
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
昨日、友達に手料理を振る舞ったんです
そしたら『これ料理じゃなくてただ切っただけじゃん』って言われて…
キュウリを切ってお皿に並べたんですけど、これは料理ですか?
料理じゃないですか?
…まあ、定義の問題やな
何をもって"料理"と呼ぶかは、人によって意見が分かれるやろ
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
ですよね! 定義って難しいですよね!
せやな。でもな、こむぎちゃん
法律の世界では定義があいまいだと大変なことになる
特に不動産の世界ではな――
登記田探偵
登記田探偵
やあやあ、登記田さん!
こむぎちゃんも元気かい?
画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)

事務所のドアが開いて、恰幅のいい男性が入ってきた。手には紙袋。

画地宗一郎(65歳)。地元では名の知れた資産家で、先祖代々の土地を複数保有し、賃貸アパートやマンションも経営している地主だ。登記田探偵とは長い付き合いで、不動産がらみの困りごとがあるたびに相談に来る顔なじみである。

宗一郎さん
お久しぶりですね
今日はどうされたんですか?
登記田探偵
登記田探偵
その前に、ほれ、こむぎちゃん
おせんべいのお土産だよ
画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
こむぎちゃん
こむぎちゃん
わあ、画地さんありがとうございます!
いつもすみません!
いやいや、こむぎちゃんはいつもおいしいお茶を淹れてくれるからねえ
画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)

画地はソファに座ると、少し困った顔をした。陽気なこの人にしては珍しい。

実はね、登記田さん
ちょっと困ったことになっちゃってねえ
画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
何があったんですか?
登記田探偵
登記田探偵
画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「うちが持ってる農地の一つを知人に売ったんだよ。知人が『家を建てたい』って言うからね。そしたら後日、役所から『宅建業の免許を持っていないのに営業しているのではないか』って問い合わせが来てねえ…」

画地が頭をかいた。

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「わたしは不動産屋じゃないよ? 畑を1つ売っただけなのに、免許が必要だなんてことがあるのかい?

こむぎちゃんが目を輝かせた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「登記田さん、これは簡単です! 畑は"宅地"じゃないから、宅建業じゃないですよね! つまり絶対セーフってことですね!

登記田探偵
登記田探偵
待ちや

登記田探偵
登記田探偵
「こむぎちゃん、キミはいつも一部だけ見て結論を出す。宅建業法で一番危険なのは、そういう"要件の抜け"なんや。宗一郎さん、これは一つずつ推理していく必要がありますわ」

推理①「宅建業とは何か」

登記田はホワイトボードに大きく書いた。

宅建業 = 「宅地」or「建物」の「取引」を「業」として行うこと

登記田探偵
登記田探偵
「つまり、3つの要件をすべて満たして初めて"宅建業"になるんですわ」

チェックポイント:

  1. 宅地または建物を対象にしている?
  2. 取引(売買・交換・代理・媒介)をしている?
  3. 業として(反復継続の意思を持って)やっている?
登記田探偵
登記田探偵
「この3つのチェック(宅地or建物+取引+業)をすべてクリアしたら宅建業1つでも欠けていれば宅建業ではない。だから順番に検証していきますわ」

該当する例:不動産会社が、マンションの売買を継続的に仲介する → 宅建業

該当しない例:個人が自宅を1回だけ売却する → 宅建業ではない(後述の理由)

推理②「宅地とは何か」

登記田探偵
登記田探偵
「まず"宅地"の定義からいきましょか。宗一郎さんが売ったのは農地でしたね」

こむぎちゃんが勢いよく手を挙げた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「だから宅地じゃないです! セーフ! 画地さん、おめでとうございます!

登記田探偵
登記田探偵
早い

登記田はため息をついた。

登記田探偵
登記田探偵
「こむぎちゃん、キミはいつもそうやって一部だけ聞いて結論を出す。宅建業法では、宅地は2パターンあるんや」

宅地の定義(2パターン):

パターン①:現に建物が建っている土地 住宅が建っている敷地、店舗の敷地など。

パターン②:建物を建てる目的で取引される土地 登記上の地目が農地であっても、建物を建てる目的で売買された土地は"宅地"扱いになる。

登記田探偵
登記田探偵
「宗一郎さん、知人の方はその畑をどうすると言ってはりましたか?」

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
家を建てるって言ってたねえ」

こむぎちゃんが凍りついた。

登記田探偵
登記田探偵
「つまり、登記上は農地でも、建物を建てる目的で売買した土地は"宅地"になるんですわ。宗一郎さんの農地は、パターン②に該当します

画地が驚いた。

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「ほほう…畑でも宅地になるのかい。知らなかったねえ」

登記田探偵
登記田探偵
「ここが試験でも一番引っかかるポイントですわ。"農地だから宅地じゃない"は大きな間違いなんや」

該当する例:農地を「家を建てる目的」で売却 → 宅地に該当

該当しない例:農地を農地のまま売却する(耕作目的)→ 宅地に該当しない

推理③「建物とは何か」

登記田探偵
登記田探偵
「次に"建物"の定義。今回は土地の話なので軽く触れるだけにしますけどな」

建物の定義:屋根と壁があり、土地に定着した工作物

住宅、店舗、マンション、一戸建て…すべて含まれる。建築中の建物も含むのがポイント。

こむぎちゃんがメモを取りながら聞く。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「じゃあ、完成前のマンションを売るのも宅建業なんですね」

登記田探偵
登記田探偵
「そうや。いわゆる青田売りいうやつやな。今回は宗一郎さんの件が土地の話やから、建物の要件は直接は関係ないけど、知識としては押さえておくべきポイントやで」

該当する例:マンション1室、建築中の注文住宅 → 建物に該当

該当しない例:立木、石垣、組み立て前のプレハブ → 建物に該当しない

推理④「取引とは何か」

登記田探偵
登記田探偵
「さて、ここが重要ですわ。宗一郎さんは知人に直接売ったとおっしゃいましたね」

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「そうだよ。仲介業者は挟んでないねえ」

こむぎちゃんがまた反応した。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「つまり仲介じゃないから宅建業じゃないってことですよね!」

登記田探偵
登記田探偵
また早合点や

私はホワイトボードに書いた。

取引の3パターン:

① 自ら当事者として売買・交換を行う ② 売買・交換・賃借の代理をする ③ 売買・交換・賃借の媒介(仲介)をする

登記田探偵
登記田探偵
「宗一郎さんは自ら売主として売買しました。これは①の"取引"に該当します」

こむぎちゃんが驚いた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「自分で売るのも"取引"に含まれるんですか!?」

登記田探偵
登記田探偵
「そういうことや。ただし、ここで1つ重要な例外を覚えておいてほしい。自ら賃貸する行為は"取引"に含まれないんや」

画地が反応した。

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「おや、わしは賃貸アパートも持ってるけど、あれは取引じゃないのかい?」

登記田探偵
登記田探偵
「宗一郎さんが自分のアパートを人に貸す行為は、宅建業法上の"取引"には該当しません。だから大家さんが自分の物件を貸すのに免許はいらんのです」

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「なるほどねえ。大家業は免許なしでいいのか。安心したよ」

該当する例:地主が自ら売主として複数の土地を販売 → 取引に該当

該当しない例:大家が自分のアパートを人に貸す → 取引に該当しない(自ら賃借は取引に含まれない)

推理⑤「業とは何か」

登記田探偵
登記田探偵
「さて、最後の砦ですわ。ここが宗一郎さんの運命を分けるポイントや」

「業」の定義:不特定多数に対し、反復継続して取引を行う意思があること

登記田探偵
登記田探偵
「ポイントは2つ。不特定多数反復継続の意思です」

こむぎちゃんが目を見開いた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「画地さんは1回しか売ってないですよね!? つまり絶対セーフってことですね!

登記田探偵
登記田探偵
「こむぎちゃん…また"絶対"って言うたな

登記田は慎重に言葉を選んだ。

登記田探偵
登記田探偵
1回でも、反復継続の意思があれば"業"になる。逆に、たまたま1回売っただけで今後その予定もないなら"業"ではない」

登記田探偵
登記田探偵
「宗一郎さん、今後も土地を継続的に売買される予定はありますか? 看板を出したり、広告を打ったりされましたか?」

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「いやいや、知人に頼まれて1つ売っただけだよ。商売として土地を売るつもりはないねえ」

登記田探偵
登記田探偵
であれば、"業"には該当しません

こむぎちゃんがホッとした表情を浮かべた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「よかった…でも私、また早合点しかけてました…」

登記田探偵
登記田探偵
「せやろ。"1回だから絶対セーフ"じゃなくて、"反復継続の意思がないからセーフ"いうのが正確な理由なんや。ここの違いが試験では大事やで」

該当する例:転売目的で土地を仕入れ、継続的に販売 → 「業」に該当

該当しない例:知人に頼まれて保有する土地を1回だけ売却、今後の予定なし → 「業」に該当しない

推理⑥「免許がなくてもできる者」

登記田探偵
登記田探偵
「念のため、免許の例外も確認しておきましょか」

こむぎちゃんが不思議そうに言った。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「免許なしでも宅建業ができる人がいるんですか?」

登記田探偵
登記田探偵
宅建業に該当する行為をしても、免許が不要な者がおるんや」

免許不要の代表例:

① 国・地方公共団体 例:市役所が公有地を売却する → 免許不要

② 信託会社・信託銀行(信託業務として行う場合) 例:信託財産の不動産を管理・処分する → 免許不要(ただし届出は必要)

登記田探偵
登記田探偵
「宗一郎さんは個人ですから、この例外には該当しません。でもそもそも"業"に該当しないので、免許は不要いう結論です」

該当する例:県が県有地を分譲する → 宅建業に該当するが免許不要

該当しない例:個人が「国の仕事に似ているから」と主張しても免許免除にはならない

事件の結論

私はホワイトボードに大きく○を書いた。

登記田探偵
登記田探偵
宗一郎さん、免許は不要です。ご安心ください

理由:

  • 「宅地」には該当する(建物を建てる目的の農地)→ ✓
  • 「取引」にも該当する(自ら売主として売買)→ ✓
  • しかし「業」には該当しない(1回きりの売却、反復継続の意思なし)→ ✗
  • 3要件がすべて揃っていないため、宅建業に該当しない → 免許不要
登記田探偵
登記田探偵
「役所の担当者には、今回の経緯をご説明されれば大丈夫です。ただし宗一郎さん、今後もし複数の土地を継続的に売却されるようなことがあれば、そのときは"業"に該当して免許が必要になります。そこだけはお気をつけくださいね」

画地が大きく頷いた。

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「いやあ、助かったよ、登記田さん。"宅地"かどうかも"業"かどうかも、ちゃんと要件を見ないとわからないんだねえ。勉強になったよ」

登記田探偵
登記田探偵
「こむぎちゃんも勉強になったやろ?」

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「はい…一部だけ見て判断しちゃダメなんですね。"つまり"って言う前に、要件を全部チェックしないと…」

登記田探偵
登記田探偵
「そういうことや。宅建業法の基本中の基本やで」

画地が立ち上がった。

画地宗一郎(かくち そういちろう)
画地宗一郎(かくち そういちろう)
「ありがとう、登記田さん。こむぎちゃんもありがとうね。また何かあったら相談に来るよ」

登記田探偵
登記田探偵
「いつでもどうぞです、宗一郎さん」

試験のひっかけメモ

ひっかけ①「農地は宅地ではない」建物を建てる目的で取引すれば、農地でも"宅地"扱いになる。地目ではなく取引の目的で判断。

ひっかけ②「自分で売るだけなら宅建業ではない」 → 自ら売主として売買する行為も"取引"に該当する。反復継続すれば「業」になり免許が必要。

ひっかけ③「1回だけなら絶対セーフ」 → 1回でも反復継続の意思があれば"業"に該当する。回数だけでは判断できない。

ひっかけ④「自分のアパートを貸すのも宅建業」自ら賃貸する行為は"取引"に含まれない。大家業に免許は不要。

締め:こむぎちゃんの1行まとめ

登記田探偵
登記田探偵
「さてと、記念すべき最初の事件が解決やな。ほなこむぎちゃん、今日の教訓を一言でまとめてみ」

こむぎちゃんが胸を張った。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「はい! 今日の教訓は――畑を売るときは、キュウリを添えておけば"料理"になるから宅建業じゃない!

登記田探偵
登記田探偵
なんでやねーん!!

登記田探偵
登記田探偵
朝のキュウリの話は1ミリも関係ないわ! いいか、宅建業は"宅地or建物"の"取引"を"業として"行うこと! 農地でも建物を建てる目的なら宅地! 自ら売買も取引に含まれる! でも自ら賃貸は取引に含まれない! "業"かどうかは反復継続の意思で判断! 1回でも意思があればアウト! キュウリを切ることは宅建業法と何の関係もないやろ!」

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「でも…定義って難しいじゃないですか…」

登記田探偵
登記田探偵
ちゃんとしなさい!

こむぎちゃん
こむぎちゃん
「…てへっ♪」

今回のまとめ

  • 宅建業 =「宅地または建物」の「取引」を「業として」行うこと。3要件すべて揃って初めて宅建業
  • 宅地の定義:①現に建物が建っている土地 ②建物を建てる目的で取引される土地。農地でも目的次第で宅地になる
  • 建物の定義:屋根と壁があり土地に定着した工作物。建築中の建物も含む
  • 取引の3パターン:①自ら売買・交換 ②代理 ③媒介。自ら賃貸は取引に含まれない
  • 「業」の定義:不特定多数に対し、反復継続して取引を行う意思があること。1回でも意思があれば該当
  • 免許不要の例外:国・地方公共団体、信託会社・信託銀行(信託業務として行う場合)
  • 3要件が1つでも欠ければ宅建業に該当しない → 免許不要

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