プロローグ:こむぎちゃん、図書館のペナルティに驚く
朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを見ながら渋い顔をしていた。
一冊返してないだけなのに全部ダメなんて、厳しすぎません!?
しかも最初は軽い注意で、繰り返すとどんどん重くなっていく。
これはどの世界でも同じやな
宅建業者にも宅建士にも、ルール違反に対する処分が段階的に用意されとるんや。
しかも最悪のケースでは懲役刑まである
図書館の貸出停止どころじゃないですね…
そのとき、事務所のドアが開いた。
南向壱星がノートを手に入ってきた。すぐ後ろから、
前回の続きをぜひ
敷地倫太郎も続いた。前回の約束通り、二人揃っての来訪だ。
こむぎちゃんが壱星にお茶を、敷地にコーヒーを差し出した。今日は最初から二人分を用意していたらしい。
壱星が小さく嬉しそうに言った。
敷地が穏やかに受け取った。
前回予告した通り、今日は監督処分と罰則の話や。
宅建業法の最終回やで
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相談① 宅建業者に対する監督処分|指示・業務停止・免許取消の3段階
敷地が切り出した。
軽い順にいくで
登記田がホワイトボードに書いた。
① 指示処分(最も軽い)
宅建業法に違反したり、業務に関して不当な行為をした場合に、業者に対して必要な指示を行う処分。「こういうことをしなさい」「こういう改善をしなさい」という命令。
② 業務停止処分
1年以内の期間を定めて、業務の全部または一部の停止を命じる処分。指示処分に従わない場合や、業務に関し取引の公正を害する行為をした場合などに科される。
その間、仕事ができんからな。
経営的にも致命的や
③ 免許取消処分(最も重い)
不動産屋人生の終わりやと思ってもらってええ。
必ず取り消さなければならない場合(必要的取消):
- 不正の手段により免許を受けたとき
- 業務停止処分に該当する行為をし情状が特に重いとき、または業務停止処分に違反したとき
- 免許を受けてから1年以内に事業を開始しないとき、または引き続き1年以上事業を休止したとき
- 欠格事由に該当するに至ったとき
取り消すことができる場合(任意的取消):
- 宅建業者の事務所の所在地を確認できないとき、または宅建業者の所在(法人の場合は役員の所在)を確認できないとき
不正手段で免許を取ったとか、業務停止処分に違反して営業を続けたとか。
これはもう「必ず取り消す」一択や
免許権者は官報等で公告し、30日を経過しても申出がないときに取り消すことができる
処分権者(誰が処分するか)
| 処分の種類 | 免許権者 | 業務地の知事 |
| 指示処分 | ○ | ○ |
| 業務停止処分 | ○ | ○ |
| 免許取消処分 | ○ | × |
この業者が大阪の案件でルール違反をした場合、大阪府知事は
指示処分と業務停止処分を出せる。
でも免許取消は、免許権者である国土交通大臣しかできん。
情報がちゃんと免許権者に伝わる仕組みになっとる
該当する例:国土交通大臣免許の宅建業者が大阪府内の業務で宅建業法に違反 → 大阪府知事が指示処分または業務停止処分を出せる
該当しない例: 大阪府知事が国土交通大臣免許の宅建業者の免許を取り消す → 不可。免許取消は免許権者(大臣)のみ
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相談② 宅建士に対する監督処分|指示・事務禁止・登録消除の3段階
壱星が質問した。
業者と対比して覚えると整理しやすいで
① 指示処分(最も軽い)
宅建士としての事務に関して不適切な行為があった場合に、必要な指示を行う処分。
② 事務禁止処分
1年以内の期間を定めて、宅建士としての事務(重要事項説明・35条書面記名・37条書面記名)を禁止する処分。
事務禁止の期間が満了すれば返還してもらえる
③ 登録消除処分(最も重い)
宅建士の登録を消除する処分。宅建士ではなくなるいうことや。
必ず消除しなければならない場合(必要的消除):
- 欠格事由に該当するに至ったとき
- 不正の手段により登録を受けたとき
- 不正の手段により宅建士証の交付を受けたとき
- 事務禁止処分に違反したとき
消除できる場合(任意的消除):
- 事務禁止処分に該当し、情状が特に重いとき
処分権者
| 処分の種類 | 登録知事 | 業務地の知事 |
| 指示処分 | ○ | ○ |
| 事務禁止処分 | ○ | ○ |
| 登録消除処分 | ○ | × |
業務地の知事は登録消除ができない。
登録消除は登録知事だけの権限や。
そして業務地の知事が処分を行ったときは、遅滞なく登録知事に通知しなければならん
宅建業者と宅建士の監督処分 対比表
| 宅建業者 | 宅建士 | |
| 軽い処分 | 指示処分 | 指示処分 |
| 中間の処分 | 業務停止処分(最長1年) | 事務禁止処分(最長1年) |
| 最も重い処分 | 免許取消処分 | 登録消除処分 |
| 最重処分の権者 | 免許権者のみ | 登録知事のみ |
| 業務地の知事 | 指示+業務停止まで | 指示+事務禁止まで |
敷地が頷いた。
業者と宅建士で対応していると覚えやすいです
名前が違うだけで仕組みは同じ。
セットで覚えるのが鉄則やで
該当する例: 宅建士が事務禁止処分を受けた後も違反して重要事項説明を行った → 事務禁止処分に違反 → 登録消除処分(必要的消除)
該当しない例:*業務地の知事が、他県で登録している宅建士の登録を消除する → 不可。登録消除は登録知事のみ
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相談③ 聴聞と公告|重い処分の前には弁明の機会がある
聴聞や
こむぎちゃんが首をかしげた。
一方的に処分するんやなくて、言い分を聞く場を設けるんやな
聴聞のルール
- 免許取消処分を行おうとするとき → 聴聞を行わなければならない
- 登録消除処分を行おうとするとき → 聴聞を行わなければならない
- 指示処分・業務停止処分・事務禁止処分の前 → 宅建業法上、聴聞の規定はない
そして聴聞は公開で行われる。
当事者以外の者も傍聴できるんや
それだけ重い処分だという位置づけですか
ほんでな、ここに処分逃れを防ぐ規定がある。
聴聞の期日と場所が公示された後、聴聞が行われる前に、宅建業者が相当の理由なく廃業等の届出をした場合。
この届出があった日から5年を経過しない者は欠格事由に該当する
法人の場合は、聴聞の公示日前60日以内に役員であった者も同様に5年間の欠格事由に該当する。
役員を辞めて逃げることもできん仕組みになっとる
監督処分の公告
これは聴聞の公告とは別の話やで
国土交通大臣または都道府県知事は、以下の場合に公告しなければならない。
- 免許をしたとき
- 免許取消処分をしたとき
- 業務停止処分をしたとき
指示処分は公告の対象外。
公告されるのは免許・免許取消・業務停止の3つやで
聴聞の公告と監督処分の公告の違い
| 聴聞の公告 | 監督処分の公告 | |
| タイミング | 処分前(これから聴聞しますよ) | 処分後(処分しましたよ) |
| 目的 | 弁明の機会を告知 | 処分結果の公表 |
| 対象 | 免許取消の聴聞の期日・場所 | 免許・免許取消・業務停止 |
該当する例: 都道府県知事が宅建業者に業務停止処分を行った → 公告しなければならない
該当しない例: 都道府県知事が宅建業者に指示処分を行った → 公告は不要
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相談④ 罰則の全体像|無免許営業から宅建士証の提示忘れまで
金額と懲役をセットで覚えるのがコツや
罰則一覧(重い順)
| 罰則 | 代表的な違反行為 |
| 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(併科あり) | 不正手段による免許取得、無免許営業、名義貸し、業務停止処分に違反して業務を営んだ場合 |
| 2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(併科あり) | 重要な事実の不告知・不実告知 |
| 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(併科あり) | 営業保証金の供託の届出前に事業を開始した場合 |
| 100万円以下の罰金 | 誇大広告の禁止に違反、不当に高額の報酬を要求、37条書面の交付義務違反 |
| 50万円以下の罰金 | 届出義務違反、標識の掲示義務違反、帳簿の備付け義務違反、従業者名簿の備付け義務違反、守秘義務違反 |
| 10万円以下の過料 | 宅建士証の返納義務違反、宅建士証の提示義務違反 |
しかも懲役と罰金が併科されることもある。
両方同時に科される可能性があるんやで
お客さんに嘘をついたり重要な事実を隠したりする行為は、非常に悪質な違反として重い罰則が科される
罰則と監督処分の関係
敷地が重要な点を聞いた。
片方だけですか?
両方が同時に科されることがある。
罰金を払った上に業務停止処分も受ける、いうこともありうるんや
両罰規定
宅建業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その業務に関して違反行為をした場合、行為者本人だけでなく、業者(法人または個人)に対しても罰金刑が科される
開業する立場としては、従業員の法令遵守を徹底しなければなりませんね
ただし懲役刑は法人には科されない。
罰金刑のみや。
そして法人の場合、一部の重大な違反行為については1億円以下の罰金が科されることもある。
個人より格段に重い金額になるで
過料と罰金の違い
ここで注意。罰金やなくて過料やで
こむぎちゃんが手を挙げた。
ここが試験で超重要なポイントや
| 過料 | 罰金 | |
| 性質 | 行政上の秩序罰 | 刑事罰 |
| 前科 | つかない | つく |
| 欠格事由 | 該当しない | 一定の罰金刑は該当しうる |
| 宅建業法での適用 | 10万円以下の過料のみ | 50万円〜300万円 |
それ以外はすべて罰金(刑事罰)や。
宅建士証の返納義務違反と提示義務違反に適用される。
ここを「罰金」と出題してひっかけるのが試験の定番やで
該当する例: 宅建業者の従業員が無免許営業を行った → 行為者本人に罰則+法人にも罰金刑(両罰規定)
該当しない例:「罰則と監督処分はどちらか一方しか科されない」→ 誤り。両方が同時に科されることがある
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エピローグ:宅建業法、全20話完結
壱星がノートをゆっくり閉じた。
第1話の「宅建業とは何か」から始まって、免許、宅建士、営業保証金、保証協会、事務所と案内所、広告、媒介契約、重要事項説明、37条書面、8種制限、報酬、住宅瑕疵担保履行法、そして今日の監督処分と罰則まで…
宅建業法は「業者がやるべきこと」と「やってはいけないこと」のルールブックや。
最後に監督処分と罰則を押さえることで、そのルールが本当の意味で完結する
敷地が静かに口を開いた。
何をやったらどういう処分になるかを理解した上でスタートできる。
あとは実行あるのみです。
登記田さん、本当にありがとうございました
こむぎちゃんがぱちぱちと拍手した。
二人が帰り支度を始めた。
開業したら、最初のお客さんとして来てくださいね
壱星が少し慌てたように声を出した。
こむぎちゃんが満面の笑みで二人に手を振った。
壱星と敷地がそれぞれ複雑な表情を浮かべながら事務所を出て行った。
登記田がコーヒーカップを片づけながら、窓の外を見てつぶやいた。
何がですか?
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試験のひっかけメモ
ひっかけ①「業務地の知事は免許取消処分を出せる」
→ 不可。業務地の知事が出せるのは指示処分と業務停止処分のみ。免許取消は免許権者のみ。宅建士の登録消除も同様に登録知事のみ。
ひっかけ②「指示処分の前にも聴聞が必要」
→ 誤り。宅建業法上、聴聞が必要なのは免許取消処分・登録消除処分を行う前のみ。指示処分・業務停止処分・事務禁止処分の前には聴聞の規定はない。
ひっかけ③「罰則と監督処分はどちらか一方しか科されない」
→ 誤り。罰則(刑事罰)と監督処分(行政処分)は別々の制度であり、両方が同時に科されることがある。
ひっかけ④「宅建士証の返納を怠ったら罰金」
→ 誤り。返納義務違反は10万円以下の過料であり、罰金(刑事罰)ではない。過料は行政上の秩序罰であり前科にならない。
ひっかけ⑤「免許取消処分の聴聞前に廃業届を出せば処分を免れる」
→ 免れない。聴聞の公示後、聴聞前に相当の理由なく廃業等の届出をした場合、届出の日から5年間は免許の欠格事由に該当する。法人の場合は公示日前60日以内の役員も同様。
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締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、今日の教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが立ち上がって、びしっと指を立てた。
今日の教訓は――
不動産のルールを破ったら処分される!
だから図書館の本も不動産も、期限を守って返せばすべて解決!
延滞料は過料!
いいか、宅建業者への処分は指示・業務停止(最長1年)・免許取消の3段階!
宅建士は指示・事務禁止(最長1年)・登録消除の3段階!
免許取消と登録消除の前には聴聞が必要で公開で行われる!
業務地の知事は取消も消除もできない!
罰則の最高は3年懲役もしくは300万円罰金で無免許営業・名義貸し・不正免許取得!
法人には1億円以下の罰金もありうる!
罰則と監督処分は別々に科される!
過料は行政上の秩序罰で前科にならない!
図書館の本はさっさと返してきなさい!
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今回のまとめ
【宅建業者への監督処分】
- 指示処分:必要な指示を命じる。処分権者は免許権者・業務地の知事
- 業務停止処分:最長1年以内の業務の全部または一部の停止。処分権者は免許権者・業務地の知事
- 免許取消処分:免許の取消し。処分権者は免許権者のみ
- 業務地の知事が処分したときは、遅滞なく免許権者に通知
【免許取消処分の分類】
- 必要的取消:不正手段による免許取得、業務停止処分違反、情状が特に重い場合、1年以内に事業未開始・1年以上休止、欠格事由該当
- 任意的取消:事務所の所在地・業者の所在が確認できないとき(公告後30日経過で取消可能)
【宅建士への監督処分】
- 指示処分:処分権者は登録知事・業務地の知事
- 事務禁止処分:最長1年以内の事務禁止。処分権者は登録知事・業務地の知事。処分を受けたら宅建士証を提出
- 登録消除処分:登録の消除。処分権者は登録知事のみ
- 業務地の知事が処分したときは、遅滞なく登録知事に通知
【登録消除処分の分類】
- 必要的消除:欠格事由該当、不正手段による登録・宅建士証交付、事務禁止処分違反
- 任意的消除:事務禁止処分に該当し情状が特に重いとき
【聴聞】
- 免許取消処分・登録消除処分を行う前に聴聞が必要(指示・業務停止・事務禁止の前は不要)
- 聴聞は公開で行われる
- 聴聞の公示後・聴聞前に相当の理由なく廃業届を出した場合 → 届出日から5年間は欠格事由に該当
- 法人の場合、公示日前60日以内に役員であった者も5年間の欠格事由に該当
【公告】
- 免許をしたとき、免許取消処分をしたとき、業務停止処分をしたときに公告が必要
- 指示処分は公告不要
- 聴聞の公告(処分前の手続き告知)と監督処分の公告(処分後の結果公表)は別物
【罰則(主なもの・重い順)】
- 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(併科あり):無免許営業、名義貸し、不正手段による免許取得、業務停止処分違反
- 2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(併科あり):重要な事実の不告知・不実告知
- 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(併科あり):供託の届出前に事業開始
- 100万円以下の罰金:誇大広告違反、不当に高額な報酬の要求、37条書面交付義務違反
- 50万円以下の罰金:届出義務違反、標識掲示義務違反、帳簿備付け義務違反、従業者名簿備付け義務違反、守秘義務違反
- 10万円以下の過料:宅建士証の返納義務違反、宅建士証の提示義務違反
【両罰規定】
- 従業者の違反行為 → 行為者本人+業者(法人・個人)の両方が罰せられる
- 懲役刑は法人には科されない(罰金刑のみ)
- 法人の場合、一部の重大な違反行為については1億円以下の罰金が科されることがある
【過料と罰金の違い】
- 過料:行政上の秩序罰。前科にならない。欠格事由に該当しない
- 罰金:刑事罰。前科になる。一定の罰金刑は欠格事由に該当しうる
- 宅建業法で過料が適用されるのは10万円以下の過料(宅建士証の返納・提示義務違反)のみ