宅建にチャレンジ 権利関係

【権利関係】錯誤とは?表示行為の錯誤・動機の錯誤の違いと取消し要件を民法95条でわかりやすく解説|公序良俗も整理|宅建探偵 第24話

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プロローグ:こむぎちゃん、勘違いで全然違うランチを食べた件

朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを見ながら複雑な顔をしていた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
登記田さん、昨日ひどい目に遭いました
どうしたんや
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
ランチのお店を検索したら「駅前の人気カフェ」って出てきたので行ったんですけど、全然違う場所だったんです。
同じ名前のお店が駅の反対側にもあって。
私が行きたかった方は閉まっていて、着いたら知らないお店で、しかもランチがすごく辛くて、私、辛いもの苦手で…
つまり勘違いして、行くつもりのないお店に入って、食べたくないものを食べたと
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
そうなんです!
注文するときも「普通の定食ですよね」って思い込んで頼んだら激辛でした。
私の情報は全部間違ってたんです
まあ、思い込みで動くと痛い目に遭うやで。
確認は大事やな
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
でも別にお店が嘘をついたわけじゃないんです。
私の勘違いだから、文句も言えなくて…

登記田はコーヒーを飲みながら「そりゃそうやな」と短く返した。

そのとき、事務所のドアがノックされた。

入ってきたのは、テキストとノートを両手に抱えた南向壱星だ。いつもの真面目な顔だが、こむぎちゃんの姿を見た瞬間、ほんの少しだけ動作が止まった。

あ…こんにちは。
お邪魔してもいいですか?
勉強でどうしても煮詰まってしまったところがあって
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
こむぎちゃん
こむぎちゃん
壱星くん! もちろんどうぞ! 勉強どうですか?
えっと…それが、その「煮詰
まったところ」の話なんですけど。
前回登記田さんが「心の中で思っていたことと実際の意思表示がずれていたケース」って言ってましたよね。
テキストにまさにそのテーマが出てきて
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
ほう。
何や?
登記田探偵
登記田探偵
「錯誤」です。
表示行為の錯誤と動機の錯誤が出てきたんですが、違いがよくわからなくて
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)

こむぎちゃんがハッと顔を上げた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
あれ…?
私のさっきのランチの話、なんか似てませんか?
勘違いして全然違うものになってしまったっていう
ほんまやな。
こむぎちゃんのランチ事件、今日の話に使えそうやで
登記田探偵
登記田探偵

壱星はノートを開きながら椅子に座った。


推理① 錯誤とは何か?|表示行為の錯誤と動機の錯誤の違いを整理する

まず「錯誤」という言葉から整理しましょか
登記田探偵
登記田探偵

登記田はホワイトボードに「錯誤」と書いた。

錯誤とは、意思表示をした人(表意者)が内心の意思と実際の表示行為がずれていること、または意思表示の基礎となった事情についての認識が真実と異なることや。
ひらたく言えば「勘違いしたまま契約してしまった」状態のことや(民法95条)
登記田探偵
登記田探偵
それが2種類ある、ということですよね
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
そうや。
まず1つ目、表示行為の錯誤
これは「言い間違い・書き間違い」タイプや
登記田探偵
登記田探偵

登記田がホワイトボードに書く。

1. 表示行為の錯誤(民法95条1項1号)

  • 内心では「1,000万円で売るつもり」だったのに、口から出た言葉が「100万円で売る」だった
  • 契約書に「A物件」と書くつもりで「B物件」と書いてしまった
  • 伝えた内容そのものが、意図と違っていた場合
次に2つ目、動機の錯誤
これは「思い込み・勘違い」タイプや(民法95条1項2号・2項)
登記田探偵
登記田探偵

2. 動機の錯誤(基礎事情の錯誤)(民法95条1項2号・2項)

  • 「駅から徒歩5分と思って土地を買ったが、実は15分だった」
  • 「この土地は再開発エリアだと思って買ったが、そうではなかった」
  • 契約の動機・前提となる事情についての勘違い
こむぎちゃんの話で言うと…「普通の定食のお店だと思って入った」が動機の錯誤で、「普通の定食ですよね」と注文して激辛を頼んでしまったのが表示行為の錯誤に近い感じですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
ええ整理やな。
ただ、こむぎちゃんの場合は民法の問題ではなくて日常の話やから、法律上の取消しはできへんけどな
登記田探偵
登記田探偵
ここで動機の錯誤には重要な条件がある。
動機が相手方に表示されていた場合に限って取消しの対象になる(民法95条2項)
登記田探偵
登記田探偵
表示されていた…?
どういうことですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
たとえば「この土地、駅から徒歩5分だから買うんです」と相手方に伝えていた場合や。
この「動機」が相手方に共有されていれば、それを前提に契約したとみなせる。
逆に心の中だけで「5分だと思ってる」と思っていて、相手に何も言っていなければ、取消しはできひん
登記田探偵
登記田探偵
なるほど…!
言わないとダメなんですね
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
明示(はっきり言葉にする)でも、黙示(契約の前提として両者に共有されている)でもええ。
どちらかの形で「表示」されていれば足りる
登記田探偵
登記田探偵

壱星がノートにせっせとメモを取っている。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
つまり、心の中で思ってるだけじゃなくて、ちゃんと相手に伝わっていないと取消しできない、ってことですね!
だから私も「辛くないと思って頼みました」って最初に言っておけばよかったんです!
なんでやねん。
それは普通のレストランでの会話や
登記田探偵
登記田探偵

錯誤の2種類まとめ

表示行為の錯誤 動機の錯誤
内容 言い間違い・書き間違い 思い込み・前提の勘違い
根拠 民法95条1項1号 民法95条1項2号・2項
取消しの条件 重要性+重大な過失なし 動機が相手方に表示されていたこと+重要性+重大な過失なし

該当する例(動機の錯誤):「この土地は再開発エリアだと業者に伝えた上で購入した」のに実際は再開発がなかった → 動機が表示されているため取消しの対象になりうる。

該当しない例(動機の錯誤):「値上がりすると自分で思って購入した」が誰にも言っていない → 動機が表示されていないため取消しの対象にならない。


推理② 錯誤取消しの要件|重要性・重大な過失・2つの例外とは

じゃあ勘違いしたら何でも取り消せるんですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
そう単純やない。
取消しには2つの要件を両方満たす必要がある(民法95条1項)
登記田探偵
登記田探偵

登記田がホワイトボードに書いた。

錯誤取消しの2要件

  • 要件① 重要性:その錯誤が「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」であること
  • 要件② 重大な過失がない:表意者自身に重大な過失(著しい不注意)がないこと
要件①の「重要」かどうかは、どう判断するんですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
「もし勘違いがなければ、その人はこの契約をしなかっただろう」と言えるほど重要な錯誤かどうかや。
駅から徒歩5分か15分かという違いは、不動産の価値に直結するから重要性あり。
逆に「壁の色が思ったより少し薄かった」程度では重要性なしと判断される可能性が高い
登記田探偵
登記田探偵
要件②の「重大な過失」とは?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
普通に少し確認すればわかったはずなのに、まったく確認しなかったような著しい不注意のことや。
たとえば徒歩時間を一切調べず、地図も見ずに「近いだろう」と思い込んで契約した場合は重大な過失ありとされる可能性がある
登記田探偵
登記田探偵

壱星がペンを止めた。

実はこれ…テキストの例題だと思っていたんですが、少し関係する話があって。
先輩が知り合いから相談を受けていて、その内容が「隣の駅の土地だと思って契約してしまった」というケースで。
先輩がどう答えたらいいかわからなくて、僕に聞いてきたんです
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
なるほど。
実際のケースやな。詳しく聞かせてもらえますか
登記田探偵
登記田探偵
その方は業者から「○○駅近くの土地です」と言われて、てっきり○○駅の徒歩圏だと思って契約したそうなんですが、実際は一駅隣の△△駅近くの土地で。
業者は「△△駅の近く」とは言っていたんですが、その方が○○駅と勘違いしたまま確認しなかったようで…
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
なるほど。
それやと要件②が問題になってくるな。業者が「△△駅の近く」と正しく説明していたのに、確認しなかったとなると重大な過失ありと判断される可能性がある。
そうなると取消しはできひん
登記田探偵
登記田探偵
やっぱりそうですか…
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
ただ、重大な過失があっても取消しできる例外が2つある(民法95条3項)
登記田探偵
登記田探偵

重大な過失があっても取消しできる2つの例外(民法95条3項)

例外① 相手方が悪意または重過失の場合

相手方が「この人は勘違いしている」と知っていた(悪意)または知ることができた(重過失)なら、表意者に重大な過失があっても取り消せる。

たとえば業者が「この人、○○駅と勘違いしてるな」とわかっていながら、あえて訂正しないまま契約を進めたなら、業者側に悪意または重過失がある。
そのケースなら取消しが認められる余地がある
登記田探偵
登記田探偵

例外② 共通錯誤の場合

売主も買主も同じ勘違いをしていた場合(双方が同一の錯誤に陥っていた場合)は、どちらに重大な過失があっても取り消せる。

双方が同じ勘違いをしていたなら、お互い様ということですね
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
そういうことや。
どちらかだけが勘違いしていたなら問題になるけど、二人とも同じ誤りをしていたなら、その前提で取消しを認めるのが公平やからな
登記田探偵
登記田探偵

壱星が熱心にノートを書き込んでいる。こむぎちゃんがそっと壱星のノートをのぞき込んだ。壱星の手が一瞬だけ止まった。

取消しの要件まとめ

要件 内容
①重要性 社会通念上、重要な錯誤であること
②重大な過失なし 表意者に著しい不注意がないこと
例外① 相手方が悪意または重過失の場合は、②を問わず取消し可
例外② 相手方も同一の錯誤に陥っていた場合は、②を問わず取消し可

該当する例:業者が勘違いを知っていながら訂正しなかった(悪意)→ 表意者に重大な過失があっても取消し可。

該当しない例:表意者が一切確認せず(重大な過失あり)、業者も正しく説明していた → 例外に当たらないため取消し不可。


推理③ 取消権者と取消しの効果|誰が・いつまでに・どうなるのか

こむぎちゃん
こむぎちゃん
あの、一つ聞いてもいいですか。
取消しって、誰でもできるんですか?
ええ質問や。
取消権者は限られとる
登記田探偵
登記田探偵

取消権者(民法95条・120条)

錯誤による取消しができるのは、次の者に限られる。

  • 錯誤に陥った表意者(本人)
  • 代理人(本人の代わりに行動する人)
  • 承継人(相続などで権利を引き継いだ人)
錯誤に陥っていたのは表意者側やから、相手方が「あなた勘違いしてたでしょ、取消しますね」とは言えん。
取消しは被害を受けた側のための権利やからな
登記田探偵
登記田探偵
第三者はどうですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
原則として取り消せない。
取消権は表意者本人たちのために認められたものやで
登記田探偵
登記田探偵

続いて、取消しの効果を整理した。

取消しの効果(民法121条)

  • 錯誤による取消しをすると、遡及的に無効となる
  • 「最初から契約がなかった」扱いになる
  • これは前回学んだ詐欺・強迫の取消しと同じ
取消したあとに、第三者が絡んできたらどうなりますか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
取消し後に現れた第三者とは、登記の先後で対抗関係を決める
詐欺・強迫の取消し後の処理と同じ考え方や
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
つまり…
早く登記した人が勝つってことですね!
だから宅建試験では「登記!登記!」っていつも言われるんですね!
もう全部登記で解決ですよ!
全部登記で解決するわけやないわ。
登記で対抗できる場面があるということやで。
混乱するからそういう雑なまとめ方はやめなさい
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
…すみません

取消権者と効果まとめ

項目 内容
取消権者 表意者本人・代理人・承継人
相手方は? 取消しできない
取消しの効果 遡及的無効(最初から契約がなかった扱い)
取消し後の第三者 登記の先後で対抗関係を決める

該当する例:錯誤に陥った買主本人が取消しを主張する → 適法。

該当しない例:売主側(相手方)が「あなたは勘違いしていたから取消しますよ」と言う → 相手方には取消権なし。


推理④ 公序良俗に反する契約|錯誤の「取消し」より強力な「無効」とは

ひととおりノートにまとめた壱星が、テキストのある箇所を指さした。

もう一つ気になっていたことがあって。
テキストに「公序良俗に反する契約は無効(民法90条)」と書いてあるんですが、錯誤の取消しとどう違うんですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
ええところに気づいたな。
これは錯誤の「取消し」より、ずっと強力な「無効」の話や
登記田探偵
登記田探偵

登記田はホワイトボードの端に「公序良俗違反=無効(民法90条)」と書いた。

公序良俗に反する契約とは、公の秩序や善良な風俗に反する内容の契約のことや。
たとえば反社会的組織への便宜供与を目的とした不動産売買、暴利行為、違法な目的のための契約などが該当する
登記田探偵
登記田探偵
そういう契約は「取消し」じゃなくて「無効」なんですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
そうや。
「取消し」と「無効」は全然違う。
整理するとこうなる
登記田探偵
登記田探偵

「取消し」と「無効」の違い

錯誤・詐欺・強迫(取消し) 公序良俗違反(無効)
効力 取消しまでは一応有効 最初から無効
誰が主張できるか 取消権者のみ 誰でも主張できる
第三者への対抗 取消しの種類による 第三者にも対抗できる
追認(後から有効にすること) できる できない
公序良俗違反は「取消す」という手続きすら要らない。
最初から無効やから、誰でも主張できるし、第三者にも対抗できる。
善意の第三者でも守られない。それくらい強力な無効や
登記田探偵
登記田探偵
錯誤だと善意無過失の第三者は保護される場合もありますが、公序良俗違反だと保護されないんですね
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
そういうことや。
社会の秩序に反するような契約は、そもそも法律が守る対象外やからな
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
つまり…公序良俗違反の契約は「ゲームのルール違反」みたいなもので、最初からゲーム自体が無効!
誰も勝てないし誰も負けない!
試合自体がなかったことになる!ってことですね!
ゲームのたとえはちょっとどうかと思うけど、「最初からなかったこと」という部分はその通りや
登記田探偵
登記田探偵

該当する例:反社会的勢力に利益を供与することを目的とした不動産売買 → 公序良俗違反により無効。第三者が善意でも無効を主張できる。

該当しない例:相場より少し高い価格での売買 → 価格が高いだけでは公序良俗違反にならない(著しい暴利行為であれば別)。


事件の結論|壱星の知り合いの件はどうなる?

登記田がホワイトボードを整理した。

壱星くんの先輩の知り合いのケースに戻りましょか。
「○○駅の土地だと思って買ったら△△駅だった」という件や
登記田探偵
登記田探偵
はい。業者は「△△駅の近く」と正しく言っていたようなんですが、その方が確認しなかったと
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
その場合、まず動機の錯誤に当たるかの確認や。
「○○駅の近くだから買う」という動機が業者に表示されていたかどうかが鍵になる
登記田探偵
登記田探偵
「○○駅に近いと思って買いたいんです」というような話をしていたかどうかということですね
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
そうや。
表示されていれば動機の錯誤として取消しの可能性がある。
次に重要性の要件、これは不動産の価値に関わるから満たす可能性が高い。
問題は重大な過失や。
業者が正しく説明していたのに確認しなかったとなると重大な過失ありと判断されうる
登記田探偵
登記田探偵
その場合は例外①、つまり業者が勘違いを知っていたかどうかが重要になってきますね
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
正解や。
業者が「この人○○駅と思い込んでるな」と知っていながら訂正しなかった(悪意・重過失)なら取消しの余地がある。
そうでなければ難しい。
具体的な事情を確認したうえで、専門家に相談することをお勧めしますと先輩に伝えてあげてください
登記田探偵
登記田探偵
ありがとうございます。
全部繋がってきました。
錯誤の2種類・要件・取消権者・効果、それと公序良俗との違いまで整理できました
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)

壱星はノートをパタンと閉じ、立ち上がった。

いつも助かります。
本当にありがとうございます
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)
ええ勉強になったか。
試験、頑張りや
登記田探偵
登記田探偵

こむぎちゃんが壱星の方を向いた。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
壱星くん、また困ったことが会ったら来てくださいね!
あ…は、はい。
ありがとうございます…
南向壱星(みなみ いっせい)
南向壱星(みなみ いっせい)

壱星は少しだけ顔を赤くしながら、ペコリと頭を下げて事務所を出て行った。

こむぎちゃんはそれをまったく気にせず、残ったお茶を飲んでいる。

登記田は小さく苦笑した。

……鈍感すぎるやろ、こむぎちゃん
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
え? 何か言いましたか?
なんでもない。
意思表示の話はまだ続くで。
次は誰かが誰かの代わりに意思表示をする、代理の話や
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
代理…?
誰かの代わりに契約するってことですか?
今日はここまでや
登記田探偵
登記田探偵

試験のひっかけメモ

ひっかけ①「錯誤による意思表示は無効である」誤り。改正民法(2020年施行)では「取り消すことができる」に変更された(民法95条1項)。改正前は「無効」だったが、現在は取消し。この変更は試験で狙われやすい。

ひっかけ②「動機の錯誤は相手方への表示がなくても取消しできる」誤り。動機の錯誤が取消しの対象となるのは、動機が相手方に表示されていた場合のみ(民法95条2項)。心の中だけの思い込みは対象外。

ひっかけ③「錯誤に重大な過失があれば、常に取消しできない」誤り。重大な過失があっても取消しできる例外が2つある。①相手方が悪意または重過失の場合、②相手方が同一の錯誤に陥っていた場合(民法95条3項)。

ひっかけ④「錯誤による取消しは相手方も主張できる」誤り。取消権者は表意者本人・代理人・承継人のみ。錯誤に陥っていない相手方は取消しを主張できない。

ひっかけ⑤「公序良俗に反する契約は取消しできる」誤り。公序良俗に反する契約は最初から「無効」(民法90条)。取消しではない。誰でも無効を主張でき、善意の第三者にも対抗できる。追認もできない。


締め:こむぎちゃんの1行まとめ

さてと、今日の教訓を一言でまとめてみ
登記田探偵
登記田探偵

こむぎちゃんが胸を張った。

こむぎちゃん
こむぎちゃん
はい!
今日の教訓は――勘違いで入ったお店のランチが辛かったとき、「これは動機の錯誤です、取消しします!」と言えばタダになります!
なんでやねーん!!
登記田探偵
登記田探偵
レストランで民法95条は使えへんわ!
いいか、錯誤には表示行為の錯誤と動機の錯誤の2種類がある!
動機の錯誤は相手方に表示されていた場合のみ取消し可!
取消しには重要性と重大な過失がないことの2要件が必要!
重大な過失があっても相手方が悪意・重過失、または共通錯誤なら取消し可!
取消権者は表意者・代理人・承継人のみ!
取消しの効果は遡及的無効!
公序良俗違反は取消しじゃなくて最初から無効で誰にでも対抗できる!
辛いランチは自分の責任や!
登記田探偵
登記田探偵
ちゃんとしなさい!
登記田探偵
登記田探偵
こむぎちゃん
こむぎちゃん
…てへっ♪

今回のまとめ

【錯誤とは(民法95条)】

  • 錯誤=内心の意思と表示行為のズレ、または意思表示の基礎となる事情の認識の誤り
  • 改正民法(2020年施行)により「無効」→「取り消すことができる」に変更

【錯誤の2種類】

表示行為の錯誤 動機の錯誤
内容 言い間違い・書き間違い 前提・動機の勘違い
根拠 民法95条1項1号 民法95条1項2号・2項
特別条件 なし 動機が相手方に表示されていること

【取消しの要件(民法95条1項・3項)】

  • 要件①:重要性(社会通念上、重要な錯誤であること)
  • 要件②:重大な過失がないこと
  • 例外①:相手方が悪意または重過失の場合 → 要件②不要
  • 例外②:相手方も同一の錯誤に陥っていた場合(共通錯誤)→ 要件②不要

【取消権者と効果】

  • 取消権者:表意者・代理人・承継人のみ(相手方・第三者は不可)
  • 効果:遡及的無効(最初から契約がなかった扱い)
  • 取消し後の第三者:登記の先後で対抗関係を決める

【公序良俗に反する契約(民法90条)】

  • 公序良俗違反の契約は最初から無効(取消しではない)
  • 誰でも無効を主張できる
  • 善意の第三者にも対抗できる
  • 追認(後から有効にすること)はできない

【錯誤・詐欺・強迫・公序良俗 対比表】

錯誤(95条) 詐欺(96条) 強迫(96条) 公序良俗違反(90条)
効力 取り消せる 取り消せる 取り消せる 最初から無効
第三者保護 取消し後は登記で決定 善意かつ無過失は保護 保護なし 保護なし(誰にでも対抗可)
追認 できる できる できる できない

参考書籍:2026年版 史上最強の宅建士テキスト

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