プロローグ
最近スマホの目覚ましアラーム、止めたと思ったのにまた鳴るんですよ。
今日は朝から3回も起こされました……
一時停止と完全オフは別もんやで。
ボタンが2つあるなんて紛らわしいです!
そんなやり取りをしていると、事務所のドアが開いた。南向壱星が少し慌てた様子で入ってくる。
いらっしゃい!
こむぎちゃんに迎えられた瞬間、壱星の表情がふっと緩んだ。しかし、すぐに真剣な顔に戻る。
今日はちょっと急ぎで相談したいことがあって……。
まあ座り。
壱星はソファに腰を下ろすと、メモ帳を取り出して話し始めた。
借家を貸していた地積亮さんっていう入居者が、途中から賃料を滞納するようになって。
最終的には退去してもらえたんですけど、未払いの賃料がそのままなんです。
もう3年以上経ってしまって、公図さんが「このまま時効になるんじゃないか」って焦って、自分で内容証明郵便を送ったそうなんです。
でも「これで本当に時効を止められたのか?」って聞かれて、僕うまく答えられなくて……。
さっきの私のスヌーズの話と似てますね!
止めたつもりが止まってないかもしれない……ってことですよね!
時効にも「一時停止」と「完全リセット」があるんや。
ちょうどええ機会やから、そのあたり整理していこか。
推理①|時効の完成猶予と更新とは?~一時停止とリセットの違い~
昔は「時効の停止」「時効の中断」って呼んでたんやけど、今は完成猶予と更新って名前になった。
試験でも新しい用語で出るから、こっちで覚えてな。
メモします。
スヌーズボタンみたいなもんやな。
猶予の期間が過ぎたら、また時効は進行する。
リセットはされへん。
一方、時効の更新ってのは、時効のカウントがゼロに戻って最初からやり直しになることや。
こっちはリセットボタンや。
結論から言うと、内容証明郵便は完成猶予だけや。
リセットにはならへん。
ここが今日のポイントやで。
公図さんが地積さんに内容証明を送った行為は、法律上催告と呼ばれる。催告はあくまで一時停止であり、裁判を起こして確定判決を得る更新とは別物だ。
推理②|完成猶予の事由~内容証明だけで時効は止まるのか?~
まず公図さんがやった内容証明、つまり催告からや。
催告による完成猶予(民法150条)
催告をすると、そこから6か月間だけ時効の完成が猶予される。
それだけですか?
しかもこの6か月の間に、裁判上の請求とか法的な手続を取らなあかん。
6か月過ぎたら猶予は消えて、時効が完成してしまう。
スヌーズ何回も押すみたいに!
催告を繰り返しても、猶予は延長されへん。
これ、試験でもめちゃくちゃ狙われるポイントやで。
催告による完成猶予中にさらに催告をしても、新たな猶予は生じひん。
裁判上の請求等による完成猶予→更新(民法147条)
たとえば公図さんが地積さんを相手に訴訟を起こしたとする。
裁判上の請求をした時点でまず完成猶予が生じて、確定判決で権利が確定したら更新になる。
訴えを取り下げたり、却下された場合は更新にはならへん。
その場合は取下げ等から6か月の完成猶予だけや。
手続中は完成猶予、終了すれば更新。
取下げなら6か月の猶予だけ。
あとは協議の合意(民法151条)で書面合意すれば1年間の猶予、天災等(民法161条)なら障害消滅後3か月の猶予もある。
その間に裁判を起こすなり何かしないと、時効が完成しちゃうってことですか!?
推理③|時効の更新事由~時効をリセットできるケース~
裁判以外にも時効をリセットできる方法があるんや。
権利の承認(民法152条)ってやつや。
一部でも弁済の意思を示したら承認になって、残額全部について時効が更新される。
しかも承認は完成猶予を経ずに、いきなりリセットや。
相手が認める行動を取ってくれへん限り、この方法は使えんわけや。
じゃあ公図さんへのアドバイスとしては、まず催告の6か月以内に裁判上の請求をするか、もし地積さんから少しでも「払います」っていう返事がもらえれば承認で更新になる、と。
あと、もし公図さんが訴訟を起こして勝訴判決をもらったら、確定判決による更新で時効は10年に延びる(民法169条1項)。
長期的に見ても、ちゃんと法的手続を取る意味は大きいで。
ありがとうございます!
事件の結論
壱星はメモ帳を閉じて立ち上がった。
……よし、公図さんにすぐ連絡します!
時効の管理ができるようになったら、オーナーさんからの信頼もグッと上がるで。
……こむぎちゃん、今日もありがとう。
また来ますね。
いつでも来てくださいね〜!
壱星は少し名残惜しそうにこむぎちゃんに手を振ると、事務所を後にした。
登記田は苦笑しながら小さくつぶやいた。こむぎちゃんはきょとんとした顔で首をかしげている。
試験のひっかけメモ
ひっかけ① 「催告により時効は更新される」→ ✗ 催告は完成猶予のみ。更新にはならない。
ひっかけ② 「催告を繰り返せば、その都度6か月の猶予が得られる」→ ✗ 催告による完成猶予中に再度催告をしても、新たな猶予は生じない。
ひっかけ③ 「裁判上の請求をしたが取り下げた場合、更新の効力が生じる」→ ✗ 取下げの場合は更新にならず、取下げから6か月の完成猶予にとどまる。
ひっかけ④ 「債務者が債務の一部を弁済した場合、残部についても時効が更新される」→ 〇 一部弁済は権利の承認にあたり、債務全体について時効が更新される。
ひっかけ⑤ 「協議を行う旨の書面による合意がある場合、最長5年間の完成猶予が認められる」→ ✗ 1回の合意による猶予は合意時から1年間(または合意で定めた期間)。通算で5年が上限。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
スヌーズみたいに何回も押し直せるわけちゃうねん!
6か月以内に裁判上の請求するか、相手から承認もらうか、ちゃんと次の手を打たなアカンのや!
今回のまとめ
- 完成猶予=時効完成の「一時停止」/更新=「リセット」
- 催告(内容証明等)は完成猶予のみ。6か月以内に法的手続が必要
- 催告の繰り返しでは猶予は延長されない
- 裁判上の請求等・強制執行等は完成猶予→確定・終了で更新
- 権利の承認は完成猶予を経ずに直接更新
- 協議の合意は書面で1年間の完成猶予(通算5年上限)
完成猶予・更新の事由 比較表
| 区分 | 事由 | 効果 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 完成猶予→更新 | 裁判上の請求等 | 権利確定で更新 | 民法147条 |
| 完成猶予→更新 | 強制執行等 | 手続終了で更新 | 民法148条 |
| 完成猶予のみ | 催告 | 6か月の猶予のみ | 民法150条 |
| 完成猶予のみ | 協議の合意 | 合意から1年等 | 民法151条 |
| 完成猶予のみ | 天災等 | 障害消滅後3か月 | 民法161条 |
| 更新 | 権利の承認 | 即時リセット | 民法152条 |