プロローグ:こむぎちゃん、仲介手数料に驚く
朝の事務所。こむぎちゃんが賃貸サイトの画面を見ながら声を上げた。
法律で決まっとる金額や
確かに半額ってところもありますよね?
1ヶ月分もらうには条件がある。
今日ちょうどその話をするところやで
そのとき、事務所のドアが開いた。
敷地倫太郎が穏やかな笑顔で入ってきた。
こむぎちゃんが椅子から立ち上がった。
敷地が丁寧に挨拶した。
登記田がコーヒーを準備しながら言った。
頭を切り替えていこか
相談① 賃貸の報酬の基本|借賃1ヶ月分が上限・居住用は0.5ヶ月分が原則
敷地が説明した。
まず1つ目は、画地さんのアパート2階、家賃8万円の1LDKです。
入居者を探してほしいと。
報酬はいくらになりますか?
賃貸の報酬の基本ルールはこうや
登記田がホワイトボードに書いた。
賃貸の媒介の報酬:
- 貸主と借主から合わせて、借賃の1ヶ月分+消費税が上限
- 居住用建物の場合、一方から受け取れるのは原則として借賃の0.5ヶ月分+消費税が上限
- ただし、媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ていれば、一方から1ヶ月分を受け取ることも可能
- 双方の合計は、いずれの場合も1ヶ月分+消費税が上限
原則の場合: 8万円 × 0.5 = 4万円(税抜)→ 4万円 × 1.1 = 4万4,000円(税込) → 貸主からも4万4,000円、借主からも4万4,000円 → 合計8万8,000円
敷地が少し渋い顔をした。
前回の売買は72万円だったのに、だいぶ少ないですね
ただし承諾があれば一方から1ヶ月分もらえる
承諾がある場合: 借主の承諾を得た場合 → 借主から8万円 × 1.1 = 8万8,000円(税込) → この場合、貸主からは0円(合計が1ヶ月分を超えてはならないため)
さっきこむぎちゃんの友達が言うてた"半額のところもある"いうのは、原則通り0.5ヶ月分で営業している業者いうことや
こむぎちゃんが目を輝かせた。
承諾があっても合計は1ヶ月分+消費税が上限や!
"承諾=上限突破"やないで!
登記田が補足した。
当事者間の合意で配分を自由に決められる。
ただし合計は1ヶ月分+消費税が上限いうのは同じや
さらに代理の場合。
代理業者と媒介業者が一緒に関わっている場合でも、全業者の報酬合計は1ヶ月分+消費税を超えてはならない
敷地が確認した。
賃貸は"合計1ヶ月分+消費税"いう天井が絶対。
媒介でも代理でも、業者が何社いても、この天井は変わらん
該当する例:居住用アパートの媒介で、依頼を受ける際に借主から承諾を得て、借主から借賃の1ヶ月分+消費税を受領 → 適法(ただし貸主からの受領は0円)
該当しない例:居住用アパートの媒介で、承諾なしに借主から借賃の1ヶ月分+消費税を受領 → 原則の0.5ヶ月分を超えるため違反
相談② 権利金がある場合の特例|居住用建物以外で売買の計算方法が使える
敷地が2つ目の案件を切り出した。
賃料15万円で、権利金が300万円あるんですが…。
店舗の仲介って居住用とは計算が違うんですか?
しかも権利金がある場合は特例がある。
ここは試験でもよく出るポイントやで
登記田が説明した。
権利金の特例:
- 居住用建物以外の賃貸で、権利金等の授受がある場合
- 権利金の額を売買代金とみなして、売買の計算方法で報酬額を計算できる
- 通常の賃貸計算と比較して、有利なほうを選択できる
- 居住用建物には適用されない
【通常の賃貸計算】 賃料15万円 × 1ヶ月分 = 15万円(税抜)→ × 1.1 = 16万5,000円(税込)
【権利金の特例による計算】 権利金300万円を売買代金とみなす → 300万円は400万円以下なので区分計算
200万円 × 5% = 10万円 100万円 × 4% = 4万円 合計 = 14万円(税抜)→ × 1.1 = 15万4,000円(税込)
敷地がメモを見比べた。
この場合は通常計算のほうが有利ですね
有利なほうを選べるから、この場合は通常計算を使えばええ。
ただし、権利金がもっと高額な場合は逆転するケースもある。
必ず両方計算して比較するのが鉄則やで
敷地がさらに質問した。
権利金の特例は居住用建物以外(店舗・事務所等)に限る。
居住用は通常の賃貸計算のみや
該当する例:事業用店舗(賃料10万円・権利金500万円)の媒介で、権利金500万円を売買代金とみなして報酬を計算 → 適法
該当しない例:居住用マンション(家賃10万円・権利金200万円)の媒介で、権利金200万円を売買代金とみなして報酬を計算 → 居住用建物には権利金の特例は適用されないため不可
相談③ 長期の空き家等の賃貸特例|貸主から最大2.2ヶ月分
敷地がもう1つ思い出したように言った。
借り手を探してほしいと。
何か特別なルールはありますか?
登記田の目が光った。
長期の空き家等の賃貸の特例(2024年7月改正で新設):
- 対象:1年を超える期間にわたり居住者が不在の物件、または相続等により所有者による利用が見込まれない物件
- 特例の内容:貸主から受け取れる報酬の上限が、借賃の1ヶ月分 × 2.2倍に引き上げ
- 借主からの報酬は通常通り(居住用は0.5ヶ月分+消費税が上限)
- 媒介契約の締結に際して、あらかじめ貸主に説明し合意を得る必要がある
敷地が驚いた。
通常の2倍以上ですね
広告を多く出したり、清掃やリフォームの手配をしたり。
だから業者の負担に見合った報酬を認めようという趣旨や
敷地が頷いた。
空き家対策は国の重要課題だから、業者が積極的に取り扱えるようにしているわけですか
ただし事前に貸主への説明と合意が必要。
勝手に2.2倍を請求することはできんで
該当する例:1年半空室の居住用アパート(家賃6万円)の媒介で、事前に貸主の合意を得て、貸主から6万円×2.2=13万2,000円を受領 → 適法
該当しない例:半年空室のアパートの媒介で、長期の空き家等の特例を適用 → 1年を超えていないため特例の対象外
エピローグ:敷地、報酬計算を完全マスター
敷地がノートを閉じて、深く頷いた。
経営計画を立てるうえで、本当に助かります
登記田が嬉しそうに言った。
あとは実践あるのみや
敷地が姿勢を正した。
これで開業の準備は万全です
登記田がふと思いついたように言った。
住宅瑕疵担保履行法や。
新築住宅を扱うなら押さえとかなあかん。
壱星くんにも教える予定やから、次は一緒に聞きに来たらどうや
敷地が一瞬、考えるように目を細めた。
…ええ、ぜひ
穏やかな笑顔だったが、どこかに含みがあるような表情だった。
こむぎちゃんが嬉しそうに言った。
にぎやかになりますね!
敷地が軽く頭を下げて事務所を出て行った。
登記田がコーヒーをすすりながらつぶやいた。
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「賃貸の媒介報酬は、一方から借賃の1ヶ月分まで受け取れる」 → 居住用建物の場合、一方から受け取れるのは原則0.5ヶ月分+消費税。依頼を受ける際に承諾を得ていれば1ヶ月分まで可能。ただし双方合計は1ヶ月分+消費税が上限。
ひっかけ②「賃貸の代理の報酬は、借賃の2ヶ月分が上限」 → 賃貸の代理は1ヶ月分+消費税が上限。売買の代理(2倍)と混同しない。媒介業者と合わせても合計1ヶ月分+消費税。
ひっかけ③「権利金の特例は居住用建物にも適用される」 → 居住用建物には適用されない。権利金の特例は居住用建物以外(店舗・事務所等)に限る。
ひっかけ④「長期の空き家等の特例は、借主からも2.2ヶ月分まで受け取れる」 → 2.2ヶ月分に引き上げられるのは貸主からのみ。借主からは通常通り(居住用は0.5ヶ月分+消費税が上限)。
ひっかけ⑤「居住用建物の賃料には消費税がかかる」 → 居住用建物の賃料は非課税。事業用建物の賃料は課税対象。ただし報酬自体にはどちらの場合も消費税がかかる。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが腕を組んだ。
今日の教訓は――
承諾さえもらえば仲介手数料は無限大!
私も友達の部屋探しを手伝って、承諾をもらって家賃の10ヶ月分をいただきます!
いいか、賃貸の報酬は合計で借賃1ヶ月分+消費税が絶対の天井!
居住用は原則0.5ヶ月分!
承諾があれば一方から1ヶ月分だが合計は超えない!
事業用で権利金があれば売買の計算も選べるが居住用はダメ!
長期の空き家は貸主から2.2ヶ月分だが借主は通常通り!
そもそもキミは宅建業者やないから仲介手数料をもらう資格がないんや!
今回のまとめ
【賃貸の報酬の基本】
- 貸主+借主の合計で借賃の1ヶ月分+消費税が上限
- 居住用建物:一方からは原則0.5ヶ月分+消費税。依頼を受ける際に承諾を得れば1ヶ月分まで可能
- 居住用以外(店舗等):0.5ヶ月分の原則なし。合意で配分自由
- 代理:1ヶ月分+消費税が上限(売買と異なり2倍にならない)
- 全業者の合計でも1ヶ月分+消費税が上限
【権利金の特例】
- 居住用建物以外で権利金の授受がある場合に適用
- 権利金を売買代金とみなして売買の計算方法で報酬を計算できる
- 通常の賃貸計算と比較して有利なほうを選択
- 居住用建物には適用されない
【長期の空き家等の賃貸特例(2024年7月改正)】
- 対象:1年超の空室、または相続等で利用が見込まれない物件
- 貸主から最大で借賃の2.2ヶ月分まで受領可能
- 借主からは通常通り(居住用は0.5ヶ月分+消費税が上限)
- 事前に貸主への説明と合意が必要
【消費税の扱い】
- 居住用建物の賃料は非課税
- 事業用建物の賃料は課税対象
- 報酬自体にはどちらの場合も消費税がかかる