【宅建業法】報酬額の制限(売買・交換編)|速算法と空き家特例を計算例つきで解説|宅建探偵 第17話

プロローグ:こむぎちゃん、フリマアプリの手数料に怒る

朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを睨んでいた。

こむぎちゃん
登記田さん、フリマアプリの手数料って10%もかかるんですよ!
3,000円のワンピースが売れたのに、手取り2,700円って…
まあ、場所を提供してもらっとるんやから仕方ないやろ
登記田探偵
こむぎちゃん
でも友達の引っ越しを手伝ったときは1円ももらえなかったのに、アプリは何もしないで300円持っていくなんて…。
私も仲介手数料ビジネスを始めようかな
こむぎちゃんが仲介業…?
不動産の仲介手数料はな、宅建業法で上限が決まっとるから、好きな金額をもらえるわけやないんやで
登記田探偵

そのとき、事務所のドアが開いた。

登記田さん、お久しぶりです
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

フランクな笑顔で入ってきたのは敷地倫太郎だ。以前、営業保証金と弁済業務保証金の相談に来た、独立開業を目指す30代の男性。あのときと比べて、どこか自信に満ちた表情をしている。

おお、敷地さん!
久しぶりやな。
開業の準備はどうや?
登記田探偵
おかげさまで順調です。
保証協会への加入も決めましたし、事務所の内装も仕上がってきました。
それで、早速仲介の話が来てるんですが、報酬っていくらもらえるんですか?
もう一度ちゃんと確認しておこうと思って…
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

こむぎちゃんが椅子から立ち上がった。

こむぎちゃん
あ、敷地さん!
お久しぶりです!

開業準備、進んでるんですね!

敷地がこむぎちゃんに笑いかけた。

こむぎちゃん、相変わらず事務所を明るくしてくれてますね
登記田さんは幸せものですよ
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

こむぎちゃんが嬉しそうに笑った。

こむぎちゃん
えへへ、ありがとうございます!

登記田がコーヒーを差し出しながら切り出した。

ほな敷地さん、報酬の計算を一緒にやっていこか
開業前に知っておかなあかんことやからな
登記田探偵

相談① 報酬額の制限とは?|上限の根拠と必要経費のルール

まず基本。
報酬には上限がある
登記田探偵

敷地が聞いた。

好きなだけもらっていいわけじゃないんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
当然や。
国土交通大臣が定めた額を超えて報酬を受領してはならない
これが宅建業法のルール。
しかも事務所ごとに報酬額を掲示する義務もある。
開業したら事務所に掲示しとかなあかんで
登記田探偵

敷地がメモを取りながら質問した。

広告費は別にもらえるんですか?
チラシとかネット広告とか、結構かかりますよね
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
通常の広告費は報酬に含まれる
別途請求はできん。
ただし、依頼者から"特別に"頼まれた広告は別途請求できる
登記田探偵
"特別に"ってどういう意味ですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
たとえば"新聞の全面広告を出してくれ"とか"雑誌に特集を組んでくれ"みたいな、通常の業務ではやらない広告のことや。
普通のチラシやポータルサイトへの掲載は"通常の広告"やから報酬に含まれる
登記田探偵

こむぎちゃんが言った。

こむぎちゃん
つまり、普通の広告費を別途請求したら違反ってことですね!
その通り。
ここは試験でも出るで
登記田探偵

該当する例:通常の媒介業務としてポータルサイトに物件情報を掲載 → 費用は報酬に含まれる(別途請求不可)

該当しない例:依頼者の特別の依頼で新聞全面広告を掲載 → 広告費用を別途請求できる

相談② 売買の報酬を速算法で計算|媒介・代理・交換・複数業者のルール

ほな本題。
敷地さんの案件で実際に計算してみよか
登記田探偵

敷地が説明した。

知り合いの画地さんから『マンションを売りたい友人がいるから仲介してくれないか』と紹介されたんです。
物件は
2,000万円の中古マンション。
最初の売上がいくらになるか知りたくて
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ええケースやな。
売買の報酬は"速算法"で計算するのが一番早い
登記田探偵

登記田がホワイトボードに書いた。

売買の報酬計算(本来の方法):

代金の区分 料率
200万円以下の部分 5%
200万円超〜400万円以下の部分 4%
400万円超の部分 3%
ただし400万円超の物件なら速算法が使える
登記田探偵

速算法:売買代金 × 3% + 6万円

敷地さんの2,000万円で計算するで
登記田探偵

ステップ①:税抜代金 × 3% 2,000万円 × 3% = 60万円

ステップ②:+6万円 60万円 + 6万円 = 66万円(税抜の報酬上限)

ステップ③:消費税を上乗せ 66万円 × 1.1 = 72万6,000円(税込)

72万6,000円。
これが敷地さんが一方の依頼者から受け取れる報酬の上限
登記田探偵

敷地の目が光った。

おお、最初の仲介で72万ですか…。
開業資金の回収に希望が見えますね
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

ここからが大事やで。
誰からもらえるかいう話
登記田探偵

媒介の場合:

  • 売主から最大72万6,000円
  • 買主から最大72万6,000円
  • 双方から受け取れば 合計最大145万2,000円
双方からもらえるんですか!
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そうや。
媒介なら売主・買主それぞれから上限額まで受け取れる
ただし一方の上限は72万6,000円。
これを超えたらあかん
登記田探偵

代理の場合:

  • 代理は媒介の2倍が上限 → 最大145万2,000円
  • ただし1つの取引で受け取れる報酬の総額は、媒介で双方から受け取る合計額を超えてはならない
つまり、代理でも媒介でも、1つの取引から業者全体が受け取れる報酬の総額は同じいうことやな
登記田探偵

敷地が続けて聞いた。

交換の場合はどう計算するんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
交換は高いほうの物件の価額を基準にする
たとえば2,000万円の土地と1,500万円の土地を交換する場合、2,000万円で計算する
等価交換でも同じやで
登記田探偵

もう一つ。
別の業者が買主側についた場合はどうなりますか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
複数の業者が関与する場合、全業者の報酬の合計は、媒介の上限額の2倍(=145万2,000円)を超えてはならない
敷地さんが売主側で72万6,000円、買主側の業者が72万6,000円。
合計145万2,000円で上限内や
登記田探偵

最後に消費税の注意点
計算の基礎にする売買代金は税抜価格を使う。
土地は非課税やから消費税はかからんけど、建物は課税対象
もし税込価格で提示されとったら、まず税抜に戻してから報酬を計算して、最後に報酬に消費税を上乗せする
登記田探偵

該当する例:2,000万円(税抜)の物件の媒介で、売主から72万6,000円(税込)、買主から72万6,000円(税込)を受領 → 適法

該当しない例:2,000万円(税抜)の物件の媒介で、売主から80万円(税込)を受領 → 上限72万6,000円を超えるため違反

相談③ 空き家等の特例|800万円以下の物件は一方から最大33万円(税込)

敷地が少し渋い顔をした。

登記田さん、実はもう1件、相談があるんです
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
どんな案件や?
登記田探偵
知り合いが田舎に200万円の空き家を持っていて、『売りたいんだけど、こんな安い物件でも仲介してくれるか?』と。
正直、報酬が安すぎて割に合わないんじゃないかと思いまして…
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

登記田がまず通常の計算をした。

200万円は400万円以下やから速算法は使えん。
本来の計算でいくで
登記田探偵

通常の計算:200万円 × 5% = 10万円(税抜)→ 税込11万円

敷地が顔をしかめた。

11万円ですか?
交通費と調査費で消えますよ…
これじゃ引き受けられません
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そう思うやろ。
だから空き家等の特例がある
んや
登記田探偵

登記田が説明した。

空き家等の特例(低廉な空家等の売買の媒介の特例):

  • 対象:800万円以下の宅地・建物(空き家に限らず、居住中でも更地でもOK)
  • 上限:依頼者の一方から最大30万円×1.1=33万円(税込)
  • 売主からも買主からもそれぞれ最大33万円まで受領可能
  • ただし媒介契約の締結に際して、あらかじめ依頼者に説明し、合意を得る必要がある
えっ、11万円が33万円になるんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そうや。
ただし勝手に請求はできん
事前に依頼者に説明して合意をもらう必要がある。
合意がなければ通常の計算による上限(11万円)のままや
登記田探偵

こむぎちゃんが驚いた。

こむぎちゃん
じゃあ、売主と買主の双方から33万円ずつもらえたら、合計66万円ですか!?
その通り。
2024年の改正で、従来は売主からのみだった上乗せが、買主からも可能になった
だから最大で双方合計66万円(税込)まで受領できるんや
登記田探偵

敷地が表情を明るくした。

66万円ですか…。
それなら空き家の仲介も十分引き受けられますね。
田舎の物件は手間がかかりますけど、これだけ報酬があれば対応できます
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
この特例は近年の法改正の目玉やからな。
空き家問題を解消するために、業者が積極的に取り扱えるよう報酬を引き上げたんや
登記田探偵

該当する例:200万円の空き家の媒介で、事前に依頼者に説明・合意のうえ、売主から33万円(税込)を受領 → 適法

該当しない例:200万円の空き家の媒介で、依頼者への説明・合意なしに33万円を請求 → 合意がなければ通常の上限(11万円)を超えるため違反

エピローグ:敷地の最初の売上、そして鉢合わせ

敷地がノートを閉じて、満足そうに笑った。

開業前に報酬の計算ができるようになったのは大きいですね
2,000万円の物件で72万6,000円、空き家でも特例で最大33万円。
数字がわかると事業計画が立てやすいです
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

登記田が頷いた。

敷地さん、ええ感じやな。
次は賃貸の報酬も覚えとかなあかんで。
画地さんのアパートの入居者募集とか、賃貸の仲介もやるんやろ?
登記田探偵
ええ、画地さんから頼まれてます
賃貸の報酬はどう計算するんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
賃貸は売買とまったく計算方法が違う
次回教えたるわ
登記田探偵
よろしくお願いします。
――では、そろそろ失礼しますね
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

敷地が帰り支度をしていると、ちょうど事務所のドアが開いた。

こむぎさん、今日もありがとうございま――
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

南向壱星が入ってきて、敷地と目が合った。

敷地が余裕の笑顔で声をかけた。

おっ、キミが南向くんか
登記田さんからよく聞いてますよ。
勉強熱心な若手がいるって
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

壱星がぎこちなくお辞儀した。

は、はい。南向壱星です。あの…
南向壱星(みなみ いっせい)

敷地がこむぎちゃんに向き直った。

こむぎちゃん、今日もありがとうございました。
コーヒー、おいしかったです
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

こむぎちゃんがニコニコ答えた。

こむぎちゃん
ありがとうございます!
敷地さんの開業、応援してます!

敷地が軽く手を振って出て行った。

壱星がこむぎちゃんに聞いた。

…あの人、誰ですか?
南向壱星(みなみ いっせい)
こむぎちゃん
敷地さんですよ!
独立開業準備中の方で、すごくしっかりした方なんです!

壱星がなんとも言えない表情を浮かべた。

登記田がコーヒーをすすりながら、心の中でつぶやいた。

(…三角関係の予感やな

試験のひっかけメモ

ひっかけ①「速算法は200万円の物件にも使える」 → 速算法(代金×3%+6万円)は400万円超の物件のみ使える。400万円以下は本来の区分計算で。

ひっかけ②「売買の代理の報酬は、媒介の報酬の3倍が上限」2倍が上限。しかも1つの取引における報酬の総額は、媒介で双方から受け取る合計額を超えてはならない。

ひっかけ③「交換の報酬は、安いほうの物件の価額で計算する」高いほうの価額で計算する。

ひっかけ④「空き家特例は、売主からのみ上乗せできる」 → 2024年改正で売主からも買主からもそれぞれ最大33万円(税込)まで受領可能。ただし事前の説明と合意が必要。

ひっかけ⑤「通常の広告費用は報酬とは別に請求できる」通常の広告費用は報酬に含まれる(別途請求不可)。別途請求できるのは依頼者の特別の依頼による広告費用のみ。

締め:こむぎちゃんの1行まとめ

さてと、今日は売買の報酬やったな。
ほなこむぎちゃん、教訓を一言でまとめてみ
登記田探偵

こむぎちゃんが目を輝かせた。

こむぎちゃん
はい! 今日の教訓は――
フリマアプリの手数料10%より、不動産の仲介手数料3%のほうが安い!
だから私もフリマをやめて不動産仲介を始めます!
なんでやねーん!!
登記田探偵
3%は料率やけど金額のケタが全然違うやろ!
いいか、売買の報酬は速算法で"代金×3%+6万円"!
媒介なら売主・買主双方から受領可能!
代理は2倍だが総額の上限は同じ!
交換は高いほうの価額で計算!
800万円以下の空き家特例は一方から最大33万円(税込)で事前に合意が必要!
通常の広告費は報酬に含まれる!

手数料払うのがいやなら、フリマのワンピースは自分で売りなさい!
登記田探偵
こむぎちゃん
でも…3,000円に10%は高くないですか…?
ちゃんとしなさい!
登記田探偵
こむぎちゃん
…てへっ♪

今回のまとめ

【報酬の基本ルール】

  • 国土交通大臣が定めた上限を超えて報酬を受領してはならない
  • 事務所ごとに報酬額の掲示義務がある
  • 通常の広告費は報酬に含まれる(別途請求不可)。依頼者の特別の依頼による費用は別途請求可

【売買の報酬計算(速算法)】

  • 400万円超の場合:売買代金 × 3% + 6万円(税抜)
  • 400万円以下の場合は区分計算(200万円以下=5%、200万円超400万円以下=4%)
  • 報酬に消費税10%を上乗せ。計算の基礎は税抜価格

【媒介・代理・交換】

  • 媒介:一方から上記の上限額。双方から受ければ2倍
  • 代理:媒介の2倍が上限。ただし1取引の総額は媒介で双方から受ける合計を超えない
  • 交換高いほうの価額で計算
  • 複数業者:全業者の合計が媒介の上限の2倍以内

【空き家等の特例(2024年7月改正)】

  • 対象:800万円以下の宅地・建物
  • 一方から最大33万円(税込)
  • 売主からも買主からもそれぞれ受領可能(改正で買主からも可能に)
  • 媒介契約の締結時に依頼者への事前説明と合意が必要
  • 合意がなければ通常の上限のまま
  • B!