プロローグ:こむぎちゃん、口約束で痛い目に遭う
朝の事務所。こむぎちゃんが憤慨していた。
友達に本を貸したんですけど、『来週返すね』って言ったきり3ヶ月経っても返ってこないんです!
確かに貸したのに!
LINEでも何も送ってなくて…
大事な約束は書面に残す。これは日常でも不動産でも同じやで。
不動産の世界ではな、契約した後に"契約内容を書面にして渡す"義務があるんや
重要事項説明は契約の前でしたよね?
前が35条書面、後が37条書面。
セットで覚えるのが鉄則や
そのとき、事務所のドアが開いた。
登記田さん、こむぎさん!
南向壱星が、ノートを抱えて元気よく入ってきた。重説シリーズを経て、すっかり表情が明るくなっている。
今日は何を勉強しに来たん?
先輩から『重説と37条は試験でもセットで出るから、違いを完璧に押さえろ』と言われたんです
登記田が嬉しそうに頷いた。
ほな今日は37条書面を全部教えたるわ
相談① 37条書面の基本ルール|35条書面との違いを比較表で整理
登記田がホワイトボードに書いた。
37条書面(契約書面)とは:宅建業者が、契約が成立した後に、契約内容を記載した書面を当事者に交付するもの
さっきのこむぎちゃんの本の貸し借りと同じや。
口約束だけやと"言った言わない"になるからな
壱星がメモしながら言った。
37条書面は契約後の書面…。
タイミングが違うんですね
整理するで
登記田がホワイトボードに比較表を書いた。
| 35条書面(重要事項説明書) | 37条書面(契約書面) | |
|---|---|---|
| 目的 | 契約前の判断材料 | 契約後の内容確認 |
| 交付時期 | 契約成立前 | 契約成立後、遅滞なく |
| 交付相手 | 買主・借主のみ | 両当事者(売主と買主、貸主と借主) |
| 説明義務 | 宅建士が説明 | 説明不要 |
| 宅建士証提示 | 必要 | 不要 |
| 宅建士の記名 | 必要 | 必要 |
| 交付する者 | 宅建業者 | 宅建業者(宅建士でなくてもOK) |
試験で一番狙われるのは"35条と37条の違い"やからな
壱星が目を見開いた。
てっきり宅建士が説明するものだと思ってました
37条書面は宅建士の記名は必要やけど、宅建士が説明する義務はない。
交付も宅建士でなくてええ。
35条は"説明する書面"、37条は"渡す書面"いう違いやな
こむぎちゃんが言った。
説明義務がないいうのは"宅建士による法定の説明が不要"いうだけで、契約内容をお客さんに理解してもらう努力は当然必要やろ。
"黙って渡せばOK"いう話とちゃうで
もう1つ大事なポイントがある。
売主にも買主にも、貸主にも借主にも渡すんや。
契約は両方の合意やからな
該当する例:売買契約成立後、宅建業者が売主と買主の双方に37条書面を交付 → 適正
該当しない例:売買契約成立後、買主にだけ37条書面を交付し、売主には交付しない → 義務違反
相談② 必要的記載事項|必ず記載する6つの項目
大きく分けて2種類ある
登記田が指を2本立てた。
まずは必ず書くものからいくで
⑧ 当事者の氏名・住所
契約の当事者が誰かを明確にする。基本中の基本。
⑨ 物件を特定するために必要な表示
所在地、地番、面積など。どの物件の契約かを特定する情報。
⑩ 既存建物の場合、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項
中古建物の売買で、建物の状態について売主と買主の双方が確認した内容を記載する。重説で学んだインスペクションの結果などがここに反映される。
⑪ 代金・交換差金・借賃の額、支払時期・支払方法
いくら払うのか、いつ払うのか、どうやって払うのか。お金の基本情報。
⑫ 物件の引渡しの時期
いつ物件を引き渡すのか。入居できる日。
⑬ 移転登記の申請時期(売買・交換のみ)
いつ所有権移転の登記を申請するのか。賃貸では所有権が移転しないから、この項目は売買・交換のみ。
壱星が整理しながら言った。
契約の骨格にあたる情報やから、必ず記載するんや
該当する例:37条書面に代金3,000万円、支払時期、銀行振込の支払方法、引渡し日、登記申請日を記載 → 適正
該当しない例:37条書面に引渡しの時期を記載しない → 記載義務違反
相談③ 任意的記載事項|定めがあれば記載する8つの項目
これは当事者間で取り決めがあった場合にだけ記載する。
定めがなければ書かんでええ
こむぎちゃんが言った。
定めがない=記載不要なだけで、"面倒だから定めない"いうのは契約として危険やろ。
特に損害賠償や契約解除の取り決めは、定めておかんとトラブルになるで
⑭ 代金・交換差金・借賃以外の金銭の額、授受の時期・目的
手付金、敷金、礼金などの代金以外のお金。金額と、いつ、何のために授受するかを記載。
⑮ 契約の解除に関する定め
どういう場合に契約を解除できるか。手付解除やローン特約による解除の条件など。
⑯ 損害賠償額の予定・違約金に関する定め
契約違反があった場合の賠償額や違約金をあらかじめ決めている場合に記載。
⑰ 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)に関する定め
たとえば引渡し前に地震で建物が壊れた場合、損害を売主と買主のどちらが負担するか。
壱星が反応した。
これが35条と37条の記載事項の違いで、試験でも狙われるポイントや。
危険負担は37条書面にはあるけど、35条書面にはない
⑱ 瑕疵担保責任(契約不適合責任)についての定め(売買・交換のみ)
物件に欠陥があった場合の責任の範囲や期間などの取り決め。
⑲ 瑕疵担保責任の履行に関して講ずべき保証保険契約等の措置(売買・交換のみ)
契約不適合があった場合に備える保険や供託などの措置の取り決め。
⑳ 税金の負担に関する定め
固定資産税の精算など、税金をどう分担するかの取り決め。
㉑ ローンのあっせんに関する定め(売買・交換のみ)
業者がローンをあっせんする場合の取り決め。
登記田がまとめた。
35条にはあるけど37条にはないもの、逆に37条にはあるけど35条にはないものがある
35条にあって37条にないもの(代表例):
- 法令に基づく制限の概要
- 飲用水・電気・ガスの供給施設の整備状況
- 災害区域に関する事項
37条にあって35条にないもの(代表例):
- 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)
- 税金の負担に関する定め
- 引渡しの時期
- 移転登記の申請時期
37条は"契約の具体的な条件を書面にする"のが目的やから、引渡し時期や税金の分担が入ってくる。
目的が違うから記載事項も違ういうことやな
該当する例:当事者間で危険負担の定めがあり、37条書面に記載 → 適正
該当しない例:当事者間で危険負担の定めがあるのに、37条書面に記載しない → 記載義務違反
エピローグ:壱星の自信
壱星がノートを閉じて、満足そうに息をついた。
比較表で覚えれば、試験でも間違えない自信があります
35条は"契約前に説明する書面"、37条は"契約後に渡す書面"。
この2つを完璧に使い分けられたら、実務でも試験でも強いで
壱星が立ち上がった。
登記田がコーヒーカップを置いて言った。
宅建業者が自ら売主になるときの特別ルール。
クーリング・オフや手付金の制限なんかがあるんやけど、ここは実務でもめちゃくちゃ大事なところやで
また来ます!
壱星は事務所を出かけて、ふと振り返った。
こむぎちゃんがニッコリ笑った。
南向さんが来ると事務所が明るくなりますね!
壱星が一瞬言葉に詰まり、少し赤くなって出て行った。
登記田がため息をついた。
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「37条書面は宅建士が説明しなければならない」 → 37条書面に説明義務はない。宅建士の記名は必要だが、説明は不要。35条と混同しない。
ひっかけ②「37条書面は買主(借主)に交付すればよい」 → 37条書面は両当事者(売主と買主、貸主と借主)に交付。買主・借主のみは35条書面。
ひっかけ③「危険負担は35条書面の記載事項である」 → 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)は37条書面の記載事項。35条にはない。
ひっかけ④「引渡しの時期は定めがあれば記載する事項である」 → 引渡しの時期は必ず記載する事項(必要的記載事項)。任意的記載事項ではない。
ひっかけ⑤「移転登記の申請時期は賃貸でも記載が必要」 → 移転登記の申請時期は売買・交換のみ。賃貸では所有権移転がないため不要。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが指を立てた。
大事な約束は書面に残すこと!
だから私も友達に『本返して』ってLINEで送ります!
37条LINE!
いいか、37条書面は契約成立後に遅滞なく両当事者に交付!
宅建士の記名は必要やけど説明義務はなし!
必ず記載するのは"誰が・何を・いくらで・いつ引渡し・いつ登記"!
定めがあれば危険負担・税金・契約解除・違約金も記載!
危険負担と税金は37条だけの項目!
本の貸し借りは自分で解決せえ!
今回のまとめ
【37条書面の基本】
- 契約成立後に、宅建業者が契約内容を書面にして交付する
- 両当事者(売主と買主、貸主と借主)に交付
- 宅建士の記名が必要、ただし説明義務はない
- 交付は宅建士でなくてもOK
- 売買・交換・賃貸のすべてが対象
【35条書面との違い】
- 35条=契約前の説明、37条=契約後の書面
- 35条=買主・借主のみに交付、37条=両当事者に交付
- 35条=宅建士が説明する、37条=説明不要
- 共通:どちらも宅建士の記名が必要
【必ず記載する事項(必要的記載事項)】
- 当事者の氏名・住所
- 物件を特定するために必要な表示
- 既存建物の場合、構造耐力上主要な部分等の確認事項
- 代金・交換差金・借賃の額、支払時期・支払方法
- 物件の引渡しの時期
- 移転登記の申請時期(売買・交換のみ)
【定めがあれば記載する事項(任意的記載事項)】
- 代金以外の金銭の額・授受の時期・目的
- 契約の解除に関する定め
- 損害賠償額の予定・違約金に関する定め
- 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担) ← 37条のみ
- 瑕疵担保責任(契約不適合責任)についての定め(売買・交換のみ)
- 瑕疵担保責任の履行に関する保証保険契約等の措置(売買・交換のみ)
- 税金の負担に関する定め ← 37条のみ
- ローンのあっせんに関する定め(売買・交換のみ)