プロローグ:こむぎちゃん、フリマでやらかす
朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを見ながら首をかしげている。
フリマアプリでちょっと困ったことがありまして…
マグカップ1個で部屋の雰囲気は変わらんやろ
そのとき、事務所のドアが開いた。
南向壱星が、手にノートとペンを持って入ってきた。前回「先輩に広告を作れと言われた」と話していた件だ。
作る前に来たんは偉いで
変なもの作って会社に迷惑かけたくないので…
こむぎちゃんが「私も気をつけなきゃ…」とつぶやいた。壱星はそんなこむぎちゃんの横顔をちらっと見て、少しだけ口元がゆるんだが、すぐにノートを開いた。
さっきこむぎちゃんがフリマでクレームがあった話をしてたところや
広告のNG、今日は徹底的に教えたるで
相談①「広告って何を書いちゃダメ?」
誇大広告の禁止や
宅建業法では、物件の広告をするときに事実と異なる表示や、実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁止している。
禁止される表現の例:
- 「駅徒歩3分」→ 実際は徒歩12分
- 「日当たり良好」→ 隣にビルが建つ予定を知りながら記載
- 「格安! 相場の半額!」→ 根拠のない価格表示
- おとり広告:実際には取引する意思がない物件を広告に載せて客を呼ぶ行為
実在しない物件や、すでに売れた物件を載せ続けるのもおとり広告になるで
こむぎちゃんが言った。
"ちょっと"でもアウトや『著しく』いう言葉はあるけど、誤認させる意図がある時点でダメなんやで
壱星がメモしながら聞いた。
ただし、『最高』『日本一』『絶対』みたいな表現は根拠がない限り避けるべきやな
該当する例:実際は築30年の物件を「築浅」と表示 → 誇大広告
該当しない例:築2年の物件を「築浅物件です」と表示 → 事実に基づいた表現でOK
相談②「いつから広告を出せる?」
広告開始時期の制限:
宅地の造成や建物の建築に関して、開発許可や建築確認などの法令に基づく許可・確認を受ける前は、広告をしてはならない。
でも、まだ確認が下りてへん段階で『○月完成予定! 予約受付中!』みたいな広告を出したらアウトやで
こむぎちゃんが言った。
設計図があっても許可・確認が下りるまではダメや
計画段階と許可済みは全然ちゃうからな
該当する例:建築確認を受けた後に「○月完成予定のマンション」のチラシを配布 → 適法
該当しない例:建築確認の申請中に「新築マンション予約受付中!」の広告を掲載 → 違法
相談③「契約はいつから結べる?」
契約締結時期の制限:
開発許可や建築確認などの法令に基づく許可等を受ける前は、売買契約等を締結してはならない。
ただし、注意してほしいのは貸借(賃貸)の場合は、この制限の対象外いうことや
制限がかかるのは売買と交換やで
該当する例:開発許可を受けた後に、造成中の宅地の売買契約を締結 → 適法
該当しない例:建築確認の申請中に、完成前のマンションの売買契約を締結 → 違法
相談④「広告に"売主"って書かなきゃダメ?」
取引態様の明示や
宅建業者は、広告をするとき、そして注文(取引の申込み)を受けたときに、自分がその取引においてどの立場なのかを明示しなければならない。
取引態様は3つ:
- 売主:自分が売る
- 代理:売主の代わりに契約する
- 媒介:売主と買主の間を取り持つ
これを書かんと法律違反やで
二度手間に見えるけど、ルールはルールやからな
該当する例:チラシに「取引態様:売主」と記載し、申込み時にも改めて明示 → 適正
該当しない例:チラシに取引態様を記載せず、「詳細はお問い合わせください」とだけ書いた → 違法
相談⑤「他にもやっちゃダメなこと、ありますか?」
他にも知っておくべきことってありますか?
ここからは不動産業界のNG集として、一気にいくで
全部『やったらアウト』のリストや
壱星がペンを構えた。こむぎちゃんも真剣な顔になっている。
NG① 業務処理の原則を守らない
宅建業者は、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならない。すべてのルールの根っこにある大原則。従業者にも、その教育を行う義務がある。
NG② 不当に履行を遅延する
登記の移転、物件の引渡し、代金の支払いなどを、不当に遅らせてはならない。「書類がまだ…」と引き延ばして相手を困らせる行為がこれにあたる。
NG③ 秘密を漏らす
宅建業者やその従業者は、業務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らしてはならない。これは退職した後も同じ。「元同僚だから」といって漏らすのもアウト。
NG④ 重要な事実を告げない・嘘を言う
これは試験で超重要。
- 事実の不告知:重要な事項について、故意に事実を告げない
- 不実告知:重要な事項について、嘘の事実を告げる
たとえば、物件の近くに大きな工場の建設計画があるのに、聞かれても「そんな計画はない」と答えるのが不実告知。知っていて黙っているのが事実の不告知。どちらも宅建業法違反で、監督処分だけでなく罰則の対象にもなる。
NG⑤ 不当に高額な報酬を要求する
国土交通大臣が定めた報酬限度額を超える報酬を要求してはならない。実際に受け取らなくても、要求しただけで違反になるのがポイント。
NG⑥ 手付を貸して契約させる
「手付金が足りないならうちが貸しますよ」と言って契約させる行為は禁止。手付金を貸すだけでなく、分割払いにする約束で契約を誘うことも含む。お客さんの判断を歪めるから。
こむぎちゃんがここで言った。
親切でも悪意でも関係ない
手付を貸して契約に誘引する行為自体がアウトや
NG⑦ 勧誘でやってはいけないこと
- お客さんが「いりません」と断っているのに、しつこく勧誘する
- 電話や訪問で、相手が迷惑と感じる時間帯・方法で勧誘する
- 勧誘に先立って、宅建業者の名称や勧誘目的であることを告げない
NG⑧ 威迫する
お客さんを脅して契約させたり、解除を妨害したりする行為。「契約しないと損しますよ」程度でも、状況によっては威迫にあたりうる。
NG⑨ 預り金の返還を拒否する
お客さんから預かったお金を、正当な理由なく返還を拒否してはならない。「手続き中なので返せません」と不当に引き延ばすのもこれにあたる。
NG⑩ 手付放棄による解除を不当に妨害する
買主が手付を放棄して契約を解除する権利は法律で認められている。これを「もう準備を始めたので」「違約金が発生します」などと言って不当に妨害してはならない。
NG⑪ マネーロンダリング対策(犯罪収益移転防止法)
宅建業者は特定事業者に指定されており、以下の義務がある。
- 取引時の本人確認(運転免許証等による確認)
- 本人確認記録・取引記録の作成と保存
- 疑わしい取引の届出(マネーロンダリングの疑いがある取引を行政庁に届出)
不動産取引は金額が大きいため、犯罪収益の洗浄に利用されるリスクがある。だからこそ宅建業者にも厳しい義務が課さている。
NG⑫ 死の告知に関するガイドライン
国土交通省が策定したガイドラインで、物件で人が亡くなった場合の告知ルールを示している。
- 自然死(老衰・病死等)、日常生活での不慮の事故死→ 原則として告知不要
- 自殺・他殺・特殊清掃が行われた死→ 告知が必要
- 賃貸の場合:自殺等であっても、おおむね3年を経過した後は告知不要とされる(目安)
- 売買の場合:賃貸のような明確な期間の目安はなく、個別に判断が必要
ガイドラインを押さえておくのが大事やで
エピローグ:壱星、広告を作り直す決意
壱星がノートを閉じた。ページがメモでびっしり埋まっている。
正直、知らないことだらけで怖くなりました…
広告のルールも、業務のNG集も、全部知らずにやってたら大変なことになるところでした
怖さを知っとる人間は慎重になるからな
壱星が立ち上がった。
誇大表現はゼロで、取引態様もちゃんと明示して、建築確認済みであることも確認して…
それでこそプロの仕事や
こむぎちゃんが明るく声をかけた。
私、デザインの感想くらいなら言えますよ!
壱星が一瞬固まった。
壱星が出て行った後、登記田探偵はコーヒーをすすりながらつぶやいた。
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「おとり広告は、実際に取引する意思がある物件なら問題ない」 → 取引する意思がない物件を広告に載せるのがおとり広告。すでに売れた物件を載せ続けるのもおとり広告になる。
ひっかけ②売買・交換の場合「建築確認の申請中であれば、広告を出してよい」 → 申請中はNG。売買・交換の場合、建築確認を受けた後でなければ広告を出せない。
ひっかけ③「不当に高額な報酬を受け取らなければ、要求しても問題ない」 → 要求しただけで違反。実際に受け取ったかどうかは関係ない。
ひっかけ④「守秘義務は在職中のみ適用される」 → 退職後も守秘義務は続く。「元従業者だから」は免除の理由にならない。
ひっかけ⑤「自然死があった物件は、必ず告知しなければならない」 → 自然死や日常生活での不慮の事故死は原則告知不要。告知が必要なのは自殺・他殺・特殊清掃が行われた死。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、今日の教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが深呼吸してから言った。
広告はかわいく書けば書くほどお客さんが喜ぶ!
フリマも不動産も、気持ちを込めればOK!
誇大広告は禁止!
広告も契約も許可・確認が下りてから!
取引態様は広告時と注文時に明示!
手付貸与も威迫も秘密漏洩も全部アウト!
不当に高額な報酬は要求しただけで違反!
自然死は原則告知不要で自殺・他殺は告知必要!
キミのフリマの"ガラッと変わります"も誇大表現の入口やからな!
今回のまとめ
- 誇大広告の禁止:事実と異なる表示、著しく優良・有利と誤認させる表示はNG。おとり広告も禁止
- 広告開始時期の制限:開発許可・建築確認等を受ける前は広告を出せない
- 契約締結時期の制限:同様に許可等の前は売買・交換の契約を締結できない(賃貸は対象外)
- 取引態様の明示:広告時と注文時に、売主・代理・媒介のいずれかを明示
- 業務処理の原則:信義誠実に業務を行い、従業者教育も義務
- 守秘義務:業務上知り得た秘密を漏らしてはならない(退職後も継続)
- 事実の不告知・不実告知:重要事項について故意に告げない・嘘を告げる → 罰則あり
- 不当に高額な報酬:限度額超えの報酬は要求しただけで違反
- 手付貸与の禁止:手付を貸して契約に誘引する行為は、理由を問わずNG
- 威迫行為・しつこい勧誘・預り金の返還拒否・手付解除の妨害:すべて禁止
- 犯罪収益移転防止法:本人確認・記録保存・疑わしい取引の届出が義務
- 死の告知ガイドライン:自然死は原則告知不要、自殺・他殺は告知必要、賃貸は概ね3年経過で告知不要の目安あり