第6話:60万円で夢が叶う!?(弁済業務保証金を相談で解く)

プロローグ:こむぎちゃん、会員ビジネスに目覚める(?)

朝の事務所。こむぎちゃんがスマホを眺めながらニコニコしている。

こむぎちゃん
登記田さん、私、すごいことに気づいたんです。
世の中、会員になるとお得なことだらけなんですよ!
なんや急に
登記田探偵
こむぎちゃん
コストコは年会費を払えば安く買えるし、Amazonプライムは会費を払えば送料無料だし、ジムも会員になれば通い放題で…
お前、コストコもAmazonもジムも全部入って全部使ってへんやろ
登記田探偵
こむぎちゃん
…なんでわかるんですか?
前回、貯金3万2千円いうてたやん
会費だけ払って使ってないパターンやろ
登記田探偵
こむぎちゃん
うっ…
まあな、でも会員になると個人ではできないサービスを受けられるいう仕組み自体は、ビジネスの世界にもあるんや
実はな、不動産業界にも――
登記田探偵

バンッ!

事務所のドアが勢いよく開いた。

登記田さん!!
来ました!!
前回の続き、教えてください!!
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

息を切らして飛び込んできたのは、敷地倫太郎。前回、営業保証金1,000万円と聞いて絶望して帰った男だ。目がギラギラ輝いている。

おう敷地くん、待っとったで。えらい気合い入っとるな
登記田探偵
だって登記田さん、1,000万円じゃなくて済む方法があるって言ったじゃないですか!
あの日から気になって気になって、夜も眠れなくて…
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
大げさやな。まあ座りや
今日は弁済業務保証金の話を全部教えたるわ
登記田探偵

こむぎちゃんが敷地にお茶を出しながら言った。

こむぎちゃん
敷地さん、前回より顔色いいですね!
こむぎさんに言われると元気が出ます…って、あ、いやそういう意味じゃなくて…
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
こむぎちゃん
…なんでもないです
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

相談①「保証協会って何?」

まずは保証協会の話からや
前回、営業保証金は本店1,000万円・支店500万円いう話をしたやろ
登記田探偵
ええ、忘れようにも忘れられません…
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
この大金を用意できない業者のためにあるのが保証協会
正式には宅地建物取引業保証協会という
登記田探偵

保証協会のポイント:

① 加入は任意

強制ではない。入りたい業者だけが入る。ただし、実際にはほとんどの中小不動産会社が加入している。

② 加入できる協会は2つ

全国宅地建物取引業保証協会(ハトマーク)と、不動産保証協会(ウサギマーク)の2つがある。1つの協会にしか加入できない(両方に入ることはできない)。

こむぎちゃんがここで口を開いた。

こむぎちゃん
つまり、ハトとウサギの両方に入ればダブルで守ってもらえるってことですね!
どうやったらそうなるねん…
どちらか1つだけ
二股は禁止やで
登記田探偵
そして、仕組みの全体像はこうなる
登記田探偵

三者の関係:

宅建業者 →(弁済業務保証金分担金を納付)→ 保証協会 →(弁済業務保証金を供託)→ 供託所

 

営業保証金の場合は、業者が直接供託所に供託する仕組みやった
でも弁済業務保証金の場合は、業者は保証協会にお金を納付して、保証協会が代わりに供託所に供託してくれるんや
登記田探偵

敷地が前のめりになった。

で、いくら納付すればいいんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

該当する例:宅建業者が保証協会に加入し、分担金を納付 → 保証協会が供託所に弁済業務保証金を供託

該当しない例:保証協会に加入したが、分担金を納付していない → 保証協会が供託できないため、事業開始の届出ができない

相談②「で、いくらなの?」

弁済業務保証金分担金の金額はこうや
登記田探偵

本店(主たる事務所):60万円

支店(従たる事務所)1ヶ所につき:30万円

敷地が目を見開いた。

60万円!? 1,000万円じゃなくて60万円!?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そうや。本店だけなら60万円を保証協会に納付するだけでええ
登記田探偵
前回の…17分の1以下じゃないですか!
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

敷地が椅子から立ち上がりそうになっている。登記田は続けた。

比較するとこういうことやな
登記田探偵
営業保証金(直接供託) 弁済業務保証金(保証協会経由)
本店 1,000万円 60万円
支店1ヶ所 500万円 30万円
本店+支店2ヶ所 2,000万円 120万円
これが、ほとんどの中小業者が保証協会に入る理由や
圧倒的にお金が少なくて済む
登記田探偵

敷地がガッツポーズをした。

これならいける…!
60万円なら…
いける!
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
「こむぎちゃんも嬉しそうだ。

こむぎちゃん
敷地さん、よかったですね!
ただし
登記田探偵

と登記田は釘を刺した。

加入の手続きや入会金・年会費は別途かかるから、そこは事前に協会に確認しときや
登記田探偵

該当する例:本店のみの業者が保証協会に加入し、60万円を納付 → 1,000万円の供託は不要

該当しない例:保証協会に加入しつつ、営業保証金も供託する → 二重に預ける必要はない(どちらか一方)

相談③「支店を出したらどうなる?」

将来、支店を出す場合はどうなりますか?
前回は追加で500万円って言ってましたけど…
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
保証協会に加入している場合は、支店1ヶ所につき30万円を保証協会に納付するだけやで
登記田探偵
500万円が30万円…!
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ただし、新しい事務所を設置してから2週間以内に納付せなあかん
この期限を過ぎると社員としての地位を失うことになる
つまり保証協会から追い出されるいうことや
登記田探偵

敷地の顔が引き締まった。

2週間…。
それは覚えておかないと
敷地倫太郎(しきち りんたろう)

該当する例:支店新設から10日後に保証協会へ30万円を納付 → 期限内で適正

該当しない例:支店新設から3週間後に納付 → 2週間を超えているため社員の地位を失う

相談④「お客さんへの還付はどうなる?」

次に、お客さんが損害を受けた場合の話やな
営業保証金と同じように、弁済業務保証金からも還付を受けることができる
登記田探偵
前回と同じ仕組みですね
でも、60万円しか納付してないのに…
還付はいくらまで受けられるんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
その前に、誰が還付を受けられるかをはっきりさせとこか
登記田探偵

還付を受けられるのは:「保証協会の社員(宅建業者)と宅建業に関する取引により生じた債権を有する者」

つまり、その宅建業者との取引で損害を受けた一般のお客さん
業者同士の取引は対象外いうのは営業保証金と同じやで
登記田探偵

こむぎちゃんが驚いた。

こむぎちゃん
つまり、60万円払えば1,000万円もらえる、超お得な投資ってことですね!
どうやったらそうなるねん…
キミがもらえるわけちゃうわ
取引で損害を受けたお客さんが弁済を受ける制度
投資でもお得でもないで
登記田探偵

そして還付の上限がここのポイント。

還付の上限は「その業者が営業保証金で供託していた場合の金額」

【事例で理解】

本店のみの宅建業者Aが保証協会に加入。分担金60万円を納付済み。

お客さんBがA社との取引で800万円の損害を受けた。

→ Bが還付を受けられる上限は1,000万円(=Aが営業保証金で供託していたとすれば本店1,000万円だったから)

→ 800万円の損害なので、800万円全額が還付の対象になる。

保証協会に60万円しか納付していなくても、お客さんは最大1,000万円まで弁済を受けられるいうことや
お客さんの保護レベルは営業保証金と同じなんやで
登記田探偵

ここでの注意点は、還付請求の流れや。供託所に直接請求するのではなく、まず保証協会の認証を受けてから供託所に請求する。

該当する例:一般消費者が保証協会の社員との売買取引で損害を受け、保証協会の認証を経て弁済業務保証金から弁済を受けた → 還付の正しい流れ

該当しない例:宅建業者同士の取引で損害を受け、弁済業務保証金から弁済を求めた → 業者間取引は還付の対象外

相談⑤「還付されたら穴埋めは?」

還付があって弁済業務保証金が減った場合、穴埋めが必要になる
ここで3つの仕組みが出てくるで
登記田探偵

① 還付充当金

保証協会が「あなたの分から還付があったから、不足分を納付しろ」と社員(宅建業者)に通知する。社員は通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付しなければならない。

ここで具体的な金額の話をしとこか
さっきの事例の続きや
登記田探偵

【事例で理解】

本店のみの業者Aが保証協会に加入(分担金60万円納付済み)。お客さんBに800万円が還付された。

→ 供託所にある弁済業務保証金が800万円分減った → 保証協会がA社に通知:「還付充当金800万円を納付しなさい」 → A社は通知から2週間以内に800万円を保証協会に納付しなければならない

敷地が顔をしかめた。

60万円で始められると思ったのに、還付が起きたら結局800万円を払うことに…
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そうや。
保証協会はあくまで"立替え"の仕組みやから、最終的な負担は原因を作った業者本人に戻ってくるんや
だからトラブルを起こさんことが一番大事やで
登記田探偵

② 弁済業務保証金準備金

保証協会が、将来の還付に備えてあらかじめ積み立てておくお金。社員から集めた分担金の一部を準備金として積み立てておく。いわば保証協会の貯金箱

③ 特別弁済業務保証金分担金

ほんで、この準備金でも足りひんくらい大きな還付が起きた場合
社員全員でお金を出し合う仕組みがある
これが特別弁済業務保証金分担金
登記田探偵

保証協会から通知を受けた日から1ヶ月以内に、社員全員が負担割合に応じて納付しなければならない。

こむぎちゃんが目を丸くした。

こむぎちゃん
つまり、自分がやらかしてなくても、他の社員のせいでお金を払わされるってことですか!?
そういうことや
保証協会はみんなで支え合う仕組みやからな
その代わり60万円で開業できるわけや
助け合いの裏返しやで
登記田探偵

この3つの違いを整理するとこうなる。

還付充当金 弁済業務保証金準備金 特別弁済業務保証金分担金
誰が負担? 還付の原因となった社員(業者) 保証協会が積み立て 社員全員で負担
いつ? 還付が起きたに通知→2週間以内 還付に備えて事前に積み立て 準備金が不足したとき→通知から1ヶ月以内
性質 個別の事後の穴埋め 事前の備え 全体の緊急穴埋め
還付充当金を2週間以内に納付しなかったら、社員の地位を失う
特別弁済業務保証金分担金を1ヶ月以内に納付しなかった場合も同様
期限は絶対に守らなあかんで
登記田探偵

該当する例:還付発生 → 保証協会から通知 → 原因業者が10日後に還付充当金を納付 → OK

該当しない例:還付発生 → 通知を受けたが3週間放置 → 社員の地位を失う

相談⑥「保証協会を辞めたらどうなる?」

敷地が恐る恐る聞いた。

もし保証協会を辞めたり、追い出されたりしたら…
どうなるんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ここが超重要ポイント
社員の地位を失ったら、1週間以内に営業保証金を供託しなければならない
登記田探偵
1週間!?
しかも営業保証金って…
1,000万円ですよね!?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そうや。1週間以内に1,000万円を供託せなあかん
できなければ営業できんくなる
登記田探偵

こむぎちゃんが震えている。

こむぎちゃん
つまり、保証協会を辞めたらもう不動産業はおしまいってことですね!
どうやったらそうなるねん
おしまいちゃうわ
1週間以内に営業保証金を供託すれば事業は続けられる
ただ、1,000万円を1週間で用意できるかいう現実的な問題はあるけどな
登記田探偵

だから、保証協会の社員としての義務(分担金の納付期限、還付充当金の期限)をきっちり守ることが大事

該当する例:保証協会を脱退 → 1週間以内に営業保証金1,000万円を供託 → 営業継続OK

該当しない例:保証協会を脱退 → 1週間を超えても供託しない → 営業できない

相談⑦「供託金は返ってくる?」

保証協会を辞めたときとか、廃業したときに、納付したお金は返ってくるんですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
返ってくる。弁済業務保証金の取戻しやな
登記田探偵

取戻しのルールは営業保証金と基本的に同じ考え方。

取戻しができる主なケース:

  • 社員が地位を失ったとき(脱退・除名など)
  • 事務所を減らして、分担金が超過しているとき
営業保証金の取戻しと同じように、取戻しの際は原則として6ヶ月以上の公告が必要
ただし、社員の地位を失って1週間以内に営業保証金を供託した場合は、公告なしで取り戻せる
登記田探偵
なるほど…
すでに営業保証金で供託し直してるから、お客さんの保護は確保されてるいうことですね
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
お、敷地くん、ええ理解力やな
登記田探偵

該当する例:保証協会を脱退し、営業保証金を供託済み → 公告なしで弁済業務保証金分担金の返還を受けられる

該当しない例:廃業に伴う取戻し → 6ヶ月以上の公告が必要

相談⑧「保証協会は他に何をしてくれる?」

最後に、保証協会の仕事を整理しとこか
お金を預かるだけちゃうで
登記田探偵

保証協会の主な業務:

① 苦情の解決 お客さんから社員(宅建業者)に対する苦情を受け付け、解決に向けて対応する。社員はこの苦情解決に協力する義務がある。

② 研修の実施 社員である宅建業者や、その従業員に対して研修を行う。

③ 弁済業務 ここまで説明してきた弁済業務保証金の制度を運営する。

④ 一般保証業務(任意業務) 手付金等の保全措置など。これはすべての協会がやっているわけではない任意の業務。

こむぎちゃんが感心した様子で言った。

こむぎちゃん
保証協会って、お金のことだけじゃなくて、苦情も聞いてくれて、勉強もさせてくれるんですね
そうや。業者にとっての駆け込み寺みたいなもんやな
登記田探偵

該当する例:お客さんが保証協会に宅建業者の対応について苦情を申し立て → 協会が解決に動く

該当しない例:宅建業者が保証協会に「社員同士のトラブル」を持ち込む → 保証協会は業者間トラブルの解決機関ではない

エピローグ:敷地の復活

敷地が立ち上がった。前回とは別人のような顔をしている。

登記田さん、60万円なら用意できます
いや、用意します!
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
ええ顔しとるな、敷地くん
登記田探偵
前回は正直、もう無理かもと思いました
でも保証協会に入れば、1,000万円じゃなくて60万円で開業できる
お客さんの保護も同じレベルで確保される
これって本当にありがたい仕組みですね
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
せやろ
ただし、2週間以内の納付期限を破ったら社員の地位を失うし、辞めたら1週間以内に1,000万円の供託が必要になる
入ってからがスタートやいうことは忘れんときや
登記田探偵
はい!
…あの、次は何を準備すればいいですか?
敷地倫太郎(しきち りんたろう)
そうやな、まだまだ覚えることはあるで
事務所の設置要件、専任の宅建士の配置、標識の掲示
でもまあ、今日のところは60万円の喜びに浸っとき
登記田探偵

敷地は何度も頭を下げて、事務所を出て行った。その足取りは、前回とはまるで違う軽やかさだった。

こむぎちゃんがしみじみ言った。

こむぎちゃん
敷地さん、ほんとに嬉しそうでしたね
あの男は行動力がある
きっとほんまに独立するやろな
登記田探偵

試験のひっかけメモ

ひっかけ①「弁済業務保証金分担金は保証協会ではなく供託所に納付する」 → 分担金の納付先は保証協会。供託所に供託するのは保証協会の仕事。業者が直接供託所に行くのは営業保証金の話。

ひっかけ②「還付の上限は、保証協会に納付した分担金の金額まで」 → 還付の上限は営業保証金として供託していた場合の金額(本店1,000万・支店500万)。60万円ではない。

ひっかけ③「社員の地位を失ったら2週間以内に営業保証金を供託」1週間以内。2週間ではない。数字のすり替えに注意。「2週間」は事務所新設時の分担金納付期限や還付充当金の納付期限。

ひっかけ④「保証協会には必ず加入しなければならない」 → 加入は任意。強制ではない。ただし加入しなければ営業保証金を全額供託する必要がある。

締め:こむぎちゃんの1行まとめ

さてと、今日の教訓を一言でまとめてみ
登記田探偵

こむぎちゃんが拳を握った。

こむぎちゃん
はい!
今日の教訓は――
会員になるとお得!
コストコも保証協会も年会費を払えば1,000万円分の買い物ができる!
なんでやねーん!!
登記田探偵
コストコと保証協会は全然ちゃうわ!
保証協会は60万円の分担金で営業を開始できる仕組みであって、1,000万円分の買い物ができるわけちゃう!
還付の上限が1,000万円いう話や!
あと事務所新設は2週間以内に納付!
社員の地位を失ったら1週間以内に営業保証金を供託!

コストコのカードの話はもうええわ!
登記田探偵
こむぎちゃん
でも…どっちも会員制でお得…
ちゃんとしなさい!
登記田探偵

こむぎちゃん
…てへっ♪
「」


今回のまとめ

  • 保証協会への加入は任意。加入すれば営業保証金の供託は不要になる
  • 分担金は本店60万円、支店1ヶ所30万円(営業保証金の約17分の1)
  • お金の流れ:宅建業者→保証協会(分担金を納付)→供託所(保証協会が供託)
  • 事務所新設時は2週間以内に保証協会へ分担金を納付
  • 還付の上限は「営業保証金として供託していた場合の金額」(本店1,000万・支店500万)
  • 還付後の補充:保証協会から通知 → 原因業者が2週間以内に還付充当金を納付(還付された金額と同額)
  • 弁済業務保証金準備金は保証協会が将来の還付に備えて事前に積み立てるお金
  • 準備金でも足りない場合は特別弁済業務保証金分担金として社員全員が通知から1ヶ月以内に納付
  • 社員の地位を失ったら1週間以内に営業保証金を供託しなければならない
  • 取戻しには原則6ヶ月以上の公告が必要(営業保証金供託済みの場合は公告不要)
  • 保証協会の業務:苦情解決・研修・弁済業務など
  • B!