プロローグ:こむぎちゃん、閉店セールに弱い
朝の事務所。こむぎちゃんが大きな紙袋を3つ抱えて出勤してきた。
で、その店いつ閉まるん?
それ、店は閉めたけど在庫処分の営業だけ続けてたいうことやな
看板も外されてて、レジだけポツンとありました
会社が廃業しても、途中の取引だけは続けなあかんケースがある
廃業したのに営業してる?
閉めたのに閉めてない?
ここがややこしいんや
しかも届出の仕方を間違えたら大問題になる
そのとき、事務所のドアが勢いよく開いた。
息を切らして飛び込んできたのは、30代の女性だった。
登記田はこむぎちゃんの方を見た。
こむぎちゃん、紙袋はそこに置いて
仕事の時間やで
事件の概要
飛び込んできたのは、中古マンションの購入手続き中だった雪宮さん。話を聞くと、状況はこうだった。
雪宮さんは「花丸プロパティ」という会社を通じてマンションの購入契約を進めていた。ところが先週、突然会社の電話がつながらなくなり、事務所に行ってみるともぬけの殻。看板も外されていた。
手付金も払ってるのに、連絡がつかなくて…
私のお金はどうなるんですか?
契約はまだ生きてるんですか?
こむぎちゃんが雪宮さんに寄り添うように言った。
探偵の本領発揮です!
うちは人探しの探偵ちゃうわ
まずは免許と届出のルールから整理して、雪宮さんがどう守られるかを明らかにするんや
推理①「宅地建物取引業者免許証」とは
でも先週行ったときは、それもなくなっていました
宅建業者は、免許を受けると免許証が交付される。そしてこの免許証には大事なルールがある。
① 事務所への掲示義務
お客さんが「この会社はちゃんと免許を持っている」と確認できるようにするためや
② 携帯義務はない
宅建業者の免許証は持ち歩く必要はない
事務所に掲示しておけばええ
こむぎちゃんがここで口を挟んだ。
免許証を外しただけで免許が消えるわけないやろ
免許証はあくまで"証明書"であって、免許そのものとは別の話や
ただし、掲示義務に違反してる状態ではあるな
該当する例:事務所の受付横の壁に免許証を額に入れて掲示 → 適正
該当しない例:免許証を社長のデスクの引き出しにしまっている → 掲示義務違反
次に確認すべきは、免許証の書換えがちゃんとされていたかや
推理②「免許証の書換え」
登記田は行政の公開情報を確認した結果をこむぎちゃんに伝えた。
元の社長・花丸さんから、副社長だった高橋さんに代わっとる
こむぎちゃんが首をかしげた。
社長が変わるたびに免許取り直してたら、不動産会社は何もでけへんわ
代表者の変更のように、免許証の記載事項に変更があった場合は、免許の取り直しではなく「免許証の書換え」を行う。
書換えが必要なケース:
- 商号(会社名)の変更
- 代表者(法人の場合)の変更
- 主たる事務所の所在地の変更
名簿の変更届を出して、さらに免許証の書換え交付申請も必要になるケースがあるんや
整理するとこうなる。
| 変更内容 | 名簿の変更届 | 免許証の書換え |
|---|---|---|
| 商号・名称の変更 | 必要 | 必要 |
| 代表者の変更 | 必要 | 必要 |
| 主たる事務所の移転 | 必要 | 必要 |
| 役員の追加・退任 | 必要 | 不要 |
| 専任の宅建士の変更 | 必要 | 不要 |
これも問題の一つやな
該当する例:会社名を変更した → 名簿の変更届+免許証の書換え交付申請
該当しない例:役員(代表者以外)が1人退任した → 名簿の変更届は必要だが、免許証の書換えは不要
推理③「廃業等の届出」
花丸プロパティはなぜ、どういう形で消えたのか
さらに調べた結果、事実が見えてきた。
ただし、行政にはまだ届出が出ていない
こむぎちゃんが眉をひそめた。
じゃあ雪宮さんの取引はセーフです!
届出を出してへんのは義務違反であって、"まだ廃業してない"いう意味とはちゃうで
ここが試験でも最も出題されるポイント。廃業等の届出について整理しよう。
届出が必要になるケースは主にこの5つ:
| ケース | 届出義務者 | 届出期限 | 免許はいつ失効する? |
|---|---|---|---|
| ①死亡(個人業者) | 相続人 | 知った日から30日以内 | 死亡時点で失効 |
| ②合併による消滅 | 消滅した会社の代表役員 | 30日以内 | 合併時点で失効 |
| ③破産手続開始の決定 | 破産管財人 | 30日以内 | 届出時点で失効 |
| ④解散(合併・破産以外) | 清算人 | 30日以内 | 届出時点で失効 |
| ⑤廃業(自ら宅建業をやめる) | 法人:代表役員/個人:本人 | 30日以内 | 届出時点で失効 |
大きく分けると2パターンある。
パターンA:届出に関係なく、その時点で失効するもの → ①死亡(死亡時点)、②合併消滅(合併時点)
パターンB:届出をした時点で失効するもの → ③破産、④解散、⑤廃業
届出をした時点で免許が失効する
でも、届出を出していないから、形式上は免許がまだ生きているいう宙ぶらりんの状態になっとるんや
廃業等の届出をした場合でも、届出前に締結した契約に基づく取引を完了する目的の範囲内では、なお宅建業者とみなされるんや
雪宮さんの目に希望の光が戻った。
花丸プロパティが届出を出したとしても、雪宮さんとの取引が完了するまでは宅建業者として責任がある
手付金の問題も含めて、行政と相談すれば対応の道はある
「届出に関係なく失効する」例:個人の宅建業者が死亡 → 届出の有無に関係なく、死亡した時点で免許失効(相続人が30日以内に届出)
「届出して初めて失効する」例:法人が自主廃業 → 届出をした時点で免許失効。届出前は形式上、免許が存続している状態
事件の結論
登記田はホワイトボードに整理した。
問題①:免許証の掲示義務違反 事務所から免許証を撤去していた。廃業前の段階では掲示義務がある。
問題②:免許証の書換え未対応 代表者が交代したのに、免許証の書換え交付申請をしていなかった可能性が高い。
問題③:廃業届の未提出 実質的に廃業しているのに、30日以内の届出義務を果たしていない。
廃業届が出された後でも、届出前に締結した契約に基づく取引を完了するまでは宅建業者とみなされる
手付金の問題は行政の窓口に相談してください
雪宮さんはホッとした表情で頭を下げた。
まずは行政に連絡、それが第一歩です
試験のひっかけメモ
ひっかけ①「免許証は常に携帯しなければならない」 → 携帯義務はない。事務所への掲示義務のみ。「宅地建物取引士証」の携帯義務と混同させる問題が定番。
ひっかけ②「役員が変わったら免許証の書換えが必要」 → 書換えが必要なのは商号・代表者・主たる事務所の所在地の変更。代表者以外の役員変更は名簿の変更届だけでOK。
ひっかけ③「死亡した場合、届出をした時点で免許が失効する」 → 死亡と合併消滅は届出に関係なく、その事実が発生した時点で失効。③破産・④解散・⑤廃業が「届出時点で失効」。
ひっかけ④「廃業届を出したら、途中の取引も全部無効になる」 → 届出前に締結した契約に基づく取引の完了目的の範囲内では、なお宅建業者とみなされる。取引相手は保護される。
締め:こむぎちゃんの1行まとめ
ほなこむぎちゃん、今日の教訓を一言でまとめてみ
こむぎちゃんが腕組みして、自信たっぷりに言った。
ええか、今日のポイントはな、免許証は事務所に掲示義務あり!
書換えが必要なのは商号・代表者・主たる事務所の変更!
廃業届は30日以内で、死亡と合併は届出前に失効、破産・解散・廃業は届出時に失効!
閉店セールは1ミリも関係ないやろ!
今回のまとめ
- 宅建業者免許証は事務所の見やすい場所に掲示義務あり(携帯義務はなし)
- 免許証の書換えが必要なのは「商号」「代表者」「主たる事務所の所在地」の変更時
- 名簿の変更届(30日以内)と免許証の書換えは別の手続き
- 廃業等の届出は30日以内。届出義務者はケースによって異なる(相続人、破産管財人、清算人、代表役員、本人)
- 免許の失効タイミング:死亡・合併消滅は事実発生時、破産・解散・廃業は届出時
- 廃業届が出ても、届出前の契約に基づく取引の完了までは宅建業者とみなされる